2020年初頭、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから、大きな変化を遂げつつあります。しかしながら、その全てが負の変化だったわけではありません。実際、いくつかのトレンドがパンデミックやヨーロッパにおける規制の結果、より大きなものになりました。グローバル食品・飲料アナリストのJulia Büchが 洞察した心躍る飲料トレンドの一部をご紹介すると共に、2022年、どんな飲料がトレンドに乾杯するのか解説します。

健康増進のための飲料

新型コロナウイルスの蔓延により、消費者は健康に対しより重きを置くようになりました。中でも免疫系をサポートする製品の需要に拍車がかかっています。パンデミックを機に、ヨーロッパにおいては消費者の半数以上が免疫向上のためにビタミンCや亜鉛をはじめとするビタミン、ミネラルを摂るようになったと言います。

この事実は、ひいては飲料業界にも大きな影響を与えています。このカテゴリーでは、かつてないほど多くの革新的な製品が、免疫向上に役立つことを謳っています。特にビタミンCを多く含むジュースやお茶がリーディングプロダクトに挙がっています。

また、ハーブやスパイスなど、天然由来の効能を持つ植物原料も増えてきています。 ドイツの消費者は植物の力を確信しており、10人に6人がショウガやウコンなどの植物の効能を信じると回答しています。

Mintelの飲料部門が観察しているもう1つの大きなトレンドは、コンブチャやウォーターケフィアなどの発酵飲料です。 元々低糖質で、善玉菌が豊富なため、腸内環境及び全身の健康に良いと言われています。これらの天然炭酸飲料は、ヘルシーで「体に良い」ソーダをお探しの方にとって、興味深い味わいの飲料として特に注目されています。

出典: Mintel GNPD

Purearth Organic Sparkling Hibiscus + Lime Water Kefir (英国) は、270億個の生きた培養菌と酵素、アミノ酸、腸内環境に良いとされる栄養素を豊富に含んだ生菌発酵飲料です。 メーカーによると、ビタミンB2とビタミンB12を豊富に含み、どちらも免疫の正常な働きをサポートし、疲れやだるさの軽減に役立つと言います。

 

新しい味覚体験を生み出すハイブリッド飲料

同様に、特別な味覚体験も大きな需要が見られています。ドイツでは、消費者の半数以上が新たな味覚体験を積極的に探しているといい、新たなハイブリッド飲料のトレンドを加速させています。特に、バーシーンに登場したエスプレッソティーニは印象的なハイライトでしょう。エスプレッソにウォッカをブレンドし、マティーニグラスに注いだカクテルです。

出典: absolutdrinks.com

エスプレッソティーニ は、エスプレッソ、カルーア、ウォッカの入ったカクテルです。

他にも、プロフィーと名付けられた、プロテインシェイクにコーヒーの入ったドリンクが、ジムに通う若き「ジムフルエンサー」の間で脚光を浴びています。

コーヒーと共に、お茶も新たな味覚体験を提供する様々な可能性を秘めています。抹茶、烏龍茶、アールグレイなどはカクテルにすると興味深い味わいになりますが、他のマーケットに存在する未知の植物は味や見た目に驚くべき効果を与えることができます。SNSでも見かける通り、バタフライピーティーが着実に欧米にも進出し始めています。東南アジア原産のバタフライピーティーを熱湯で抽出したのち、レモン果汁を加えると深く美しいロイヤルブルーから、鮮やかな紫色へと色が変わります。

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ブルーバタフライピーティー は東南アジア原産で抗酸化作用に優れています。

多くの成人がアルコール摂取を控えたり、完全に控えたりする中、ノンアルコール飲料への期待が高まっています。 こんにちの消費者は、甘さ控えめの味わいと質の良い材料、可能であれば機能性のある素材を含む飲料を求めています。

バリスタとヘルシートレンドがホット飲料のカテゴリーを制覇

ハンデミックを経て、在宅ワークやリラックスなど、おうち時間が生活の中心になってきました。その結果、くつろぎと快適さを合わせた儀式的な体験を求めています。ロックダウン の間、レストランやカフェの閉店に際して「慣れ親しんだカフェ体験」ができなくなってしまいました。それから、家庭で淹れるコーヒーは特別なものに変わり、多くの人が自宅でバリスタスタイルのコーヒーに挑戦するようになりました。SNSでは、ここ1年半の間ダルゴナコーヒーがトレンドになっています。韓国発祥のダルゴナコーヒーは、またたく間に世界中のSNSで社会現象を巻き起こしました。インスタントコーヒーと同量の砂糖とお湯を混ぜ合わせたダルゴナコーヒー はグラスに注いだミルクにトッピングするコーヒークリームという表現がぴったりです。作るのが簡単な上に魅力的な見た目で、ダルゴナコーヒーはTikTokやInstagramを活用する世代にはうってつけの飲み物になりました。さらにもうひとつの魅力は、冷たくても温かくても美味しく飲めるので、季節を問わないということです。

SNS上では、視覚的な美しさがますます重要になってきています。特に嗜好品として楽しむドリンクの多くが温かいものですが、こうしたカテゴリーの飲料に対して美しさの重要性が顕著です。その結果、レッドベルベットビーツラテや、アシュワガンダやクルクミンを用いて作るムーンミルク、ゴールデンミルクといったドリンクがSNSでの人気を高めています。また、見た目だけでなく、健康への効果も期待できる植物の成分を配合したものも多くあります。

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ムーンミルク は、アーユルヴェーダの飲み物で、睡眠を促進する効果があると言われています。 植物や乳製品のミルクを使い、ブルーピーティーやターメリックなど、さまざまなハーブやスパイスを配合することで、驚くような色の効果が期待できます。 主成分は、リラックス効果があると言われるアダプトゲン成分のアシュワガンダです。

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Mintelは、「嗜好性」「健康」「サスティナビリティ 」のトレンドが、今後も互いに融合していくと見ています。また、身体の健康面だけでなく、心の健康もますます注目されるでしょう。パンデミック発生以降、ストレスレベルが上昇し、多くの消費者がリラックスして快適な時間を過ごすための方法を模索しています。

そのため、ストレス軽減やリラックスをサポートする飲料の新たな可能性が生まれています。米国では、ペプシコ社がリラックス効果があるとされるL-テアニンを配合した新しいドリンク「Soulboost」を発売しています。Mintel Mintelは、ストレス軽減につながる可能性を持った成分を配合した製品が、今後さらに伸びていくことを予測しています。