新型コロナの影響で新製品開発が中断され、美容関連の売上は厳しい一年だったにも関わらず、ビューティー&パーソナルケア(BPC)ブランドは2020年に革新を続けた。

 

実際に、ミンテル世界新商品情報データベース(GNPD)に2020年に掲載されたBPC新製品やその関連製品は18万を超えた。また、2020年には新たな流行語が登場し、そのいくつかは2021年にも引き続き使われるだろう。例えば、「maskne」「quarantine sunburn」「beauty insperiences」「COVID-washing」「lockdown face」などが挙げられる。

 

ミンテルのアナリストは何千ものBPCの新製品をレビューしており、今回は、私たちが注目しているいくつか製品を紹介いたします。

 

BPCブランドにとって2021年はさらに期待が持てる年となるだろう。ワクチン接種が進めば、未曾有のパンデミックからの復活を祝って、喜びや高揚感に溢れたテーマが数々登場すると予想される。

ハンドサニタイザーのプレミアム化

2020年はハンドサニタイザーの年だった。人々が新型コロナウイルスから身を守ろうとする中で、ハンドサニタイザーの売上が急速に伸び、新製品も多数登場した。

 

これまでは製品による効果や高アルコール処方に対する需要がこの分野の新製品開発を支えてきたが、2021年になって高まりを見せる消費者の関心によってハンドサニタイザーが大きく進化し、製品展開も拡大した。今後、より高価でプレミアムな商品を求められ、製品へのエンゲージメントとブランド間の競争は今後も続くと予想される。

 

この流れに対応するように、サニタイザーは様々な分野へと広がりを見せている。例えば、フェイシャルケアやヘアケア(Beauty Kitchenの Sensitive Solutions SOS Skin Shield‐顔用の除菌ミストや、UnileverのClear Hair Protection Spray‐髪用除菌スプレー)、高級フレグランスのMolton Brownやヒーリングクリスタルを使った質の高いオイルLlio のサニタイザー関連の新製品インテリアとしても楽しめるデザイン性のある新製品など。

実際に、2020年に登場した私たちが注目するサニタイザーは、アクアリーナのおしゃれでスマートな充電式ハンドサニタイザーユニットだ。3色展開のこのサニタイザーにはナイトライトが付いており、消毒剤が上向きに噴射されるため非接触で衛生的。さらに、手と家庭用品のどちらも消毒できる。

出典:Aqualina

多様性を重視した新製品がついに最前線に登場

ジョージ・フロイド氏の悲劇的な死に端を発した「Black Lives Matter」運動に加えて、新型コロナがマイノリティーの人々に与えた不均衡な影響が重なり、これらの出来事は美容ブランドが多様性、平等、インクルージョンをしっかりと重視し、製品へ反映していくきっかけとなった。また、人種的不公平に対して強く反対している米国の成人の48%の消費者層にもリーチすることを可能にした。

 

2020年のすばらしい新製品のひとつとして、ヴィーナス・ウィリアムズの『EleVen by Venus X Credo)』が挙げられる。この日焼け止めはすべての肌色・肌質に対応しており、塗ったあと白く残らない。

 

また、『4.5.6 Skin』(元々はLVMHのインキュベーターCosmet’upのうちの一つ)は、「スキンケアと人種のギャップを縮める」ことを目指している。4.5.6スキンは(フィッツパトリック尺度による)スキンタイプが456の人々、つまり、メラニンを多く含む褐色肌を持つ人々のさまざまなスキンケアニーズに応える、カスタマイズ可能な初のスキンケアブランドである。こうした幅広い種類のダークな肌は、かさつき、脂っぽさ、にきびができやすいなどの傾向にあり、ライトな肌よりもしっかりと水分補給する必要がある。

 

また、黒人男性(年代を問わず)やZ世代に向けてより特化した新製品市場や、カスタムメイド要素の強い製品市場には新規参入の余地があり、多様性に焦点を当てた新製品は2021年も前進し続けると予想される。

   

出典: Credo Beauty, Eleven by Venus Williams, 456 Skin

 

マスクと相性の良い〝コンセプト″の進化

2020年、スキンケアブランドはマスク着用が売上に影響を与えることをいち早く察し、その影響に対応すべく、新たな対策を実施した。マスクをすることで肌に炎症が起き、「maskneマスクネ」ができやすい状態となった肌をケアするための多くの外用剤が登場した。

 

「Anti-maskneアンチマスクネ」という概念が急速に広がり、そして差別化され、様々な製品が登場した。今では外用剤の他にもハイブリッドタイプのマスク・フェイシャルマスクなどがある。
2020年に登場した製品で私たちが注目するのは、「ベイビーソフト」な不織布素材でできた、Skin Inc社のマスクライナーだ。マスクの下に着用するもので、Skin Inc社の外用剤を塗った肌の上に着用することをブランドはおすすめしている。マスクと一緒に着用する初のマスクライナーで、肌と粗い素材でできたマスクとの間でシールドの役割を果たし、肌の炎症を抑え、マスクネを予防するのに役立つ。

出典:Skin Inc

マスクの着用は一部のアジア市場では長年の習慣となっているが、ポストコロナの欧米において、マスクと相性の良いBPCの製品需要が今後どうなるかについては、マスクの着用習慣が今後も続くかどうかにかかっており、今後この状況がどうなるかは現時点で未だ先が予測できない状況である。

 

美容ブランドは「マスクより上」の露出した部分の肌のケアに注目した。2020年、コスメブランドが着目したのは目だった。スキンケアブランドもそれに倣い、特にブルーライトの照射量の増加に関連した目のしわや炎症に特化した製品開発を行った。

ポストコロナ時代におけるマスクと相性の良いBPC製品は、他の呼吸器系ウイルスへの感染や、ウイルスの拡散を最小限に抑えるために、混雑した公共交通機関で引き続きマスクを着用する人々に対して、訴求力を発揮していくだろう。

苦難を強いられた化粧品・フレグランス市場を覗く

化粧品・フレグランス業界は2020年に大変な困難に直面した。人々が家で過ごす時間が増え、社交の時間が減ったことで、顧客との繋がりが低下した。イギリスでは16歳から34歳の40%以上の人が、フレグランスが必要なのは他人が周りにいるときだけだと考えている。それでもなお、カテゴリーに属するブランドは、取り扱う製品分野の拡大や共同事業を行い、ブランドの魅力の維持に努めている。

 

化粧品市場の混乱のさなかに、使いやすいスティックタイプのノーメイク化粧品ブランド『NudeStix』がスキンケア業界に進出した。また、『Nudeskin』は『NudeStix』と同様にシンプルさやナチュラルさを重視しており、ヴィーガンやジェンダーフリー、ジェンダーレスといったトレンドにも対応している。このコレクションは、4ステップのシンプルなスキンケアルーティン(洗顔し、角質を除去し、肌を整えて、潤いを与える)で、5つのマルチタスク機能の製品で構成されている。

 

フレグランス市場に旋風を巻き起こし、さらに家庭にも影響を与えたのは、Samsungの遊び心あふれる香水『Freshly Laundered – Eco Edition』だった。ミンテルの「清潔感のある香り」トレンドの流れに乗ったこの香水は、Samsungの洗濯機「ecobubble」を記念したもので、オリンピック金メダリストのマックス・ウィットロック氏をフィーチャーした冗談半分のキャンペーンで作られたものだった。

 

エスティ・ローダーもまた、化粧品・フレグランス市場に遊び心と魔法の感覚を持ち込んだ企業の一つだ。ディズニーとのコラボレーションによるエスティ・ローダーのパウダーと練り香水のコンパクトは、高級ジュエリーデザイナーでストーリーテラーのモニカ・リッチ・コーサンがデザインした、おとぎ話をイメージしたおしゃれなケースに入っている。思わず集めたくなってしまうシリーズだ。

新型コロナが現在も依然として欧米に蔓延している中、化粧品やフレグランスブランドは、パンデミックの影響をあまり受けていない他の市場(スキンケア、パーソナルケア、家庭用品など)へとカテゴリーを超えて進出することが予想される。

   

出典:Instagram/NudeStix, Samsung

出典:Estée Lauder