サスティナブルクリーニングが主流へと移行

ヨーロッパで知名度の高いエコブランド「エコベール」は、1979年にリン酸塩を含まない洗浄剤を作ることをポリシーに設立されました。近年、より多くの消費者の行動や意識が変わり、環境問題はかつてないほど関心を集めています。地球環境への危機意識が高まるにつれ、人々は、自らの消費行動が従来よりはるかに大きな責任を持つと考えるようになりました。

そうした変化にともなって、かつては環境意識との結びつきの低かった家庭用品の分野でも、より良い意思決定に努める人が増えてきました。例えばイタリアでは、環境に配慮した家庭用洗剤製品の購入者のうち、 3分の1強が12ヶ月前と比較して購入量を増やしています。

出典: エコベール

 

カテゴリーにおけるエンゲージメントを構築する

世間におけるサスティナビリティの重要性の向上と、家庭用洗剤分野の活況の復活は重なるものがあります。

昨今、コートニー・コックスやクリス・ジェンナーが「Safely」というブランドを設立し、家庭用洗剤用品の分野に進出したことで、新たに「クール」なイメージが強調されました。こうした動向があることは、パンデミック開始以降、消費者がこの抱いている関心の高さが裏付けられています。

出典: Safely Instagram

このような動きは、表面的に見れば軽薄に思えるかもしれませんが、実際は、こうした業界に対する関心の高さと、それを正しく理解できるブランドにとっての商機の大きさを表しています。家庭用ケア用品は、大きな商機であると同時に、長期的スパンでみると、地球と社会全体に変化をもたらす機会にもなり得ると考えられます。Mintelサスティナビリティバロメーター のデータは、消費者が家庭用ケア製品メーカーに環境保全の責任があると考える人がどの程度いるのかを示しています。

すでに混戦状態になりつつある環境配慮型製品

Mintel GNPDによると、ヨーロッパでは、掃除用品カテゴリーにおいて、エシカル/エコな訴求をする製品のシェアは2021年に71%に到達しています。つまり、環境に優しいという差別化で消費者に切り込むことがすでに一般的になっているのです。濃縮タイプの洗剤の発売は、包装に必要なプラスチック量を削減し、既存のプラスチック製噴霧ボトルの再利用を促進するという点から環境負荷が少ないとして、市場に定着しつつあります。 TESCOやAldiなどのスーパーマーケットでは、低価格の自社ブランド製品が販売されており、こうした商品の普及の速さを物語っています。

出典:TESCO

また、濃縮洗浄剤など、よりコンパクトな製品にすることで、輸送時の負担が軽減されることも、脱炭素の観点でアピールするポイントとなるでしょう。Eco2Purのクリーニングタブレットは、プラスチック廃棄量の削減だけでなく、二酸化炭素排出量の減少もコンセプトに掲げています。

出典:Eco2Pur

パッケージ以外では、他産業の廃棄物を機能性成分や香料としてホームケア製品に利用して、循環型の製品作りを目指すブランドが登場しています。

Via Verde Eco Primia 皿洗いジェルは、食物連鎖の過程でから発生したテンサイや小麦などの残骸から得た植物由来の生分解性界面活性剤を使用。食器用洗剤の分野では、製品が環境に与える影響を和らげようとする「ミティゲーション(緩和)」が進んでいます。 これは最終的な解決策ではないかもしれませんが、ひとつの進歩であると言えるでしょう。しかし、消費者は、さらに積極的に行動すること企業に求めていることを忘れてはなりません。

家庭用洗剤業界は、どのように未来へ立ち向かっていくか

洗剤業界の多くの企業は、二酸化炭素やプラスチックの排出量を削減することを公約に掲げています。企業は消費者に対して、こうした公約に対する進捗状況、目標達成のための計画を、できる限り速やかに、そして継続的に報告することが重要です。

とはいえ、発表する内容が重要です。脈絡や明確さに欠ける情報や数値は、課題を曇らせ、消費者の関心を引くことが難しくなってしまいます。特に、脱炭素といった比較的新しい課題は、消費者になじみが薄いため、より分かりやすく明確にすることを意識をしておくといいでしょう。また、具体性は非常に大切です。ドイツとフランスでは、 家庭用品の購入者の約4分の3が、環境にやさしいという主張をするブランドはその実態を証明するべきだという意見に同意しています。

どんな企業でも、自分たちの取り組みだけで大きな変化を起こすことはできません。競合他社とともに自分たち自身を集団の一部と認識することが大切です。企業、政府、研究者すべてが、サスティナビリティを目指す上で重要な役割を果たすでしょう。力を合わせれば、真の変化を生み出し、より持続可能な未来に向けたリーディング産業として、家庭用品を位置づけることができるのです。