消費者がインフルエンサー広告に敏感になるにつれ、ブランドによるインフルエンサーの起用法も多様化していくことでしょう。インフルエンサーによるミスリーディングなコンテンツが誤解を招き、マイナスな影響を及ぼすことも懸念されるため、信頼性がより重要視されると同時に、VRや メタバースへの関心の高まりを受けて、バーチャルインフルエンサーを活用する機会も増えています。

インフルエンサーによるミスリーディングな編集を取り締まる広告業界

2022年4月、広告代理店のオグルヴィは、広告において自分の体や顔を編集・レタッチするインフルエンサーとは契約を結ばないと発表しました。このような動きは、インフルエンサーが人々の精神的な健康、特に若年層にどのような悪影響を与えるかについて懸念が高まる中、インフルエンサーコンテンツに対する監視と規制が強化されていることを物語っています。 今後、より多くのブランドが、インフルエンサー広告において信頼性や「リアルさ」を前面に出し、親近感を通して消費者と繋がっていくでしょう。

出典: ゲッティイメージ

広告大手のオグルヴィ、広告出演時自分の容姿を加工するインフルエンサーとの提携を解消(英国)

Mintelの消費者調査では、インフルエンサー広告における信憑性の重要性が浮き彫りになっています。

信憑性に欠けるインフルエンサーによるスポンサー付き投稿は視聴者を困らせる最も大きな要因でもあります。インフルエンサー広告は今やすっかり定着していることから、写真の加工から不誠実な製品推奨といった、常套手段に消費者も気付いています。 広告の信憑性を高めるためには、無加工の画像や動画を使用することに加え、フォロワー数の多いインフルエンサーではなく、純粋にその商品を使ってくれそうな信頼できるインフルエンサーを探す努力をしなければならないのです。多くの場合、これはマイクロインフルエンサー戦略を活用することを意味します。つまり、熱心なフォロワーを持ち、商品PRも実際の愛用談としてリアルに語ってくれるような小規模のインフルエンサーと協力することです。

消費者はバーチャルインフルエンサーを歓迎

多くのブランドがインフルエンサーのコンテンツに信憑性と現実性を重視するようになる一方で、「偽」のバーチャルインフルエンサーという全く逆の方向に進むことでも、多くのビジネスチャンスが存在しています。 バーチャルインフルエンサーには実在の人物ではないパーソナリティを作り出すためのCGI(Computer Generated Imagery)も含まれます。Mintelの調査によると、SNS上のパーソナリティをフォローしている人の約半数は、バーチャルインフルエンサーをフォローすることに関心があるといいます。

出典: Instagram

バーチャルインフルエンサー – ル・ドゥ・マガル は600万人近いフォロワーを持つ

メタ社のCEO、マーク・ザッカーバーグが、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を使ったデジタル世界「メタバース」の構想を発表して以来、生活のあらゆる場面でバーチャルリアリティの可能性が新たに話題になっています。バーチャルインフルエンサーは、インフルエンサーマーケティングにおける新たな概念といえるでしょう。ディオールなどのブランドはすでにバーチャルインフルエンサーマーケティング戦略を模索し始めており、Mintelの調査によると、多くの消費者が賛同していることがわかります。

ブランドはバーチャルインフルエンサーに注目し、新たなマーケティング戦略にアップデート

マーク・ザッカーバーグ氏が語ったメタバース構想の実現はまだ先になりそうですが、バーチャルインフルエンサーマーケティングに対する消費者の関心は高く、 ブランドの現在そして将来にとって、広告の新たな可能性も広がります。バーチャルの世界が人々の生活の中に浸透していけば、バーチャルインフルエンサーの果たす役割も大きくなっていくでしょう。今後、ブランドは自信を持ってバーチャル/デジタルインフルエンサーを導入し、実際に試してみることができるでしょう。

出典: YouTube

ラグジュアリーブランド、プラダのCandyフレグランスのリローンチにバーチャルヒューマンを起用

バーチャルインフルエンサーは、親しみやすさが訴求の中心ではない、ラグジュアリーブランドなどにも効果的です。インフルエンサーが本物であるという前提がなければ、ブランドはさらに自由にクリエイティブで大胆な行動をとることができます。また、インフルエンサーがバーチャルであることが明確であれば、消費者はその広告には騙されないと安心することもできます。

さらに、バーチャルインフルエンサーを利用するメリットは、ブランドのレピュテーションリスクを軽減することができることです。SNS上での露出の多いインフルエンサーと提携をすると、もしも彼らがブランドに対して相応しくない行動を取ったら、という懸念を持ち続けることもあるでしょう。しかし、バーチャルインフルエンサーをキャスティングすることによってそのような心配をする必要もありません。