ホットスポットは、ミンテル・トレンド部門が調査した、世界中で発売される製品や新しいサービスの最新情報をお届けする。Uberが開始した、人種差別を容認するユーザーにUberアプリの削除を求めるキャンペーンから、消費者により速くより衛生的な店内ショッピングをしてもらうための携帯式スキャナーまで、今月世界中で起こった最も画期的な、数々の取り組みについて見ていきましょう!

 

米国 − Uber削除キャンペーン、再び

ワシントン大行進57周年記念と時を同じくして、Uberは人種差別を容認するユーザーに当該アプリを削除するよう伝えるキャンペーンを開始した。Uberはメールとアプリ内通知を使って、この反人種差別のメッセージをユーザーに送信し、また同相乗りサービス企業は米国中の13の主要都市に広告を設置した。今年のワシントン大行進の協賛企業として、Uberはアメリカ自由人権協会(ACLU)によるデモ参加者の権利に関する冊子の配布、ナショナル・アクション・ネットワーク(ワシントン大行進の非営利主催団体)で働くイベントスタッフ向けの食事の値下げ、一部の席数限定で参加者に対する乗車賃の割引を行なった。

ボイコットや民族間の懸念を実際に経験してきたUberは、同社のイメージ回復そしてユーザーとの関係改善に熱心に取り組んでいる。2020年のワシントン大行進の協賛企業であることが一体どのように作用するかはまだわからないが、ブランドが発信先に資金を投入すること、そして連帯を言葉で表現するだけではなく、実際に人種差別撤廃への明白な投資を提示することを消費者が求めているのは確かだ。さらに、Uberのキャンペーンで想起するのは、他社が始めた2017年の#DeleteUber(Uber削除のハッシュタグ)キャンペーンである。このときはUberが反トランプのデモから利益を得ていると世間で受け止められたのがきっかけだった。今回の新たなキャンペーンでは、Uberが、団結や連帯感に重点を置かず、その価値観を臆面もなく表現する人種差別にはっきりと反対の態度を示していることから、かつてのボイコットに同意する行為と受け止められている。

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出典:AdAge

米国トレンドアナリスト‐アレックス・ミリナッツォ

 

アイルランド/オランダスキャンをもっと手軽に

オランダの小売業者、Jumboが導入した携帯式スキャナーには、店へと案内し製品をもっと簡単に見つけられるマップ機能や、消費者が従業員を探す手間なくサポートしてもらうことができるマイク機能といった、いくつかの新しい機能が盛り込まれている。新型スキャナーはさらにセンサーやバッテリー寿命、Wi-Fi接続などの面も改良されている。小売・卸売業者のBWG Foodsが開始したスキャン・ペイ&ゴーという技術は、消費者が各自のスマートフォンでスキャンと支払いを一度にできるもので、どこにも接触することなくスムーズに買い物をすることができる。これによって、行列に並ぶ必要もなくなり、他の人と共有の携帯機器やレジに触る機会も減らすことができる。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延で、消費者は店での買い物に消極的になり、買い物に行ったとしても滞在時間を短くして、商品の表面や必要ない製品には触れないように気を付けるようになった。小売業者はソーシャルディスタンスを保つための様々な仕組みを導入しているが、スキャン&ゴーのサービスはそれらに取り組む多くの業者にとって役立っている。安全性への観点から、長時間列に並んだり、従業員とのやりとりをしたりする機会を減らす必要性が高まる今日において、ブランドにはこれらの解決策を導入し、改善していくことが求められている。スキャン&ゴーのシステムは、消費者が店内の安全性を実感するためにはうってつけのもので、例えば順番待ちの仮想環境といったその他の技術と組み合わせることで、コロナ以降の買い物が消費者を悩ませることは少なくなるだろう。

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北欧 トレンドアナリスト‐ リーサ・コンタス

 

アルゼンチン − FMラジオでリフレッシュ

コカコーラは、新型コロナウイルス感染症の蔓延で自宅に隔離されている消費者を楽しませるため、アルゼンチンでのFMラジオを再開した。新しいラジオ番組は「Coca-Cola For Me(コカコーラを私に)」というアプリを通じて平日に配信され、ロックダウン(都市封鎖)が実施されている地域に住む一般大衆の中でも特に若者を支援するために、地元のインフルエンサーを主体とした6時間構成が特徴となっている。

ブランドが「当社が個々に離れた場所で協力して作ったアプリ」と説明するこの試みは、この特殊な時期を過ごす若い世代に語り掛け、共感し、支援することを目的としている。公の場で交わされる様々な議論に関連したハッシュタグを使い、各種ソーシャルメディアを通じてブランドと関わり、交流することで、隔離中の人々と仮想的にリアルタイムで交流することを促進している。ラジオでは娯楽的な内容に加え、リスナーが家でできるさまざまな課題を打ち出していく。リスナーは課題に挑戦し、後からインターネットで商品と引き換えることのできるバブル・クレジットを勝ち取ることができる仕組みだ。また、起業家が製品やサービスを宣伝できるフリースペースを用意し、ロックダウン期間に生じた経済危機にさらされている中小企業を支援する試みを実施する予定だ。

ブランドは、昨今の孤立しがちな時期においても消費者が人とのつながりをもっと感じられるように、双方向で楽しめる選択肢を新たに用意している。その多くは消費者を元気づけるため、たとえ配信プラットフォーム越しであったとしても、誕生日祝いや夜遊びなどの一般的な活動を継続するできるよう促している。

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南米 トレンドアナリスト‐ヴァネッサ・ロンディーン

 

シンガポール − susGainで持続可能なショッピングを

susGainというアプリでは、ユーザーが環境に配慮した買い物やライフスタイルの決定をする度にキャッシュバックをしてくれる。1つ以上の持続可能(サステナブル)な誓約をしている地元の提携企業で買い物をすると、アプリのユーザーはポイントを集めて、支払った分の一定割合にあたる返金を受けることができる。さらに、キャッシュバックと同額をアプリが援助し、ユーザーが選んだところへ寄付を行う仕組みにもなっている。ユーザーが街中で環境に配慮した活動に参加した場合にもアプリでポイントを集めることができる。アプリ内のマップを使い、ユーザーは登録済みの給水スポットや電子廃棄物のリサイクル回収ボックス、地元の古着交換会、ボランティア活動を検索でき、それらの場所でQRコードをスキャンしてポイントを受け取ることができる。

消費者は、自分自身に何か得るものがあったり、目に見える影響があったりしない限りは大抵、わざわざ自分の習慣を変えようとは思わないものである。susGainの報奨モデルは、環境に配慮した活動に参加した人に報酬を与えるだけではない。消費者の活動が、社会的意識の高いビジネスに直接的に利益をもたらしているため、消費者自身がそうした活動に気分良く参加できるという側面があるようだ。企業はこの活動を通して消費を促進するのではなく、代わりに、消費者が買い物をする際に環境や社会に配慮したビジネスを好んで選択できるような対象にしようとしている。消費者に価値を提供するアプリやプラットフォームは、環境に配慮した行動に関わるよう消費者に動機づけする役割を果たすことができる。

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東南アジア トレンドアナリスト‐メラニー・ナムビア

 

日本スターバックスで仕事に集中

スターバックスはThink Labと提携し、消費者がそれぞれの仕事に集中できるコワーキング(共有仕事スペース)をテーマにしたカフェの開発に着手している。出店先は1階で通常のカフェを営業し、スマートラウンジと呼ばれる2階には個人あるいはグループ会議用のブースを設置する。店内にはプロジェクターやテレビ電話に使える個別のテーブルも用意されている。テーブルはスターバックスのアプリを通じて予約が可能である。

テレワークは、私たちの新しい生活様式の中で当たり前のものとなった。消費者がオフィスへ戻りつつある一方、その多くは在宅勤務、オフィス、コワーキングスペースの間で費やす時間のバランスをとろうとしている。共有のコワーキングスペースは、在宅勤務に疲れているものの、健康へのリスクを考えるとオフィスへの通勤も気が引けるような状況下にある現在の消費者を特に惹きつけている。それゆえにスターバックスのスマートラウンジは、消費者にとって比較的安全でリラックスしながらテレワークができる環境として成り立っている。さらに、商品の注文と受取りに使えるモバイルオーダーのシステムは、消費者が周りと接触することなく安全にコーヒーを得られるソリューションを提供する。

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アジア・パシフィック トレンドマネージャー‐エリーシャ・ヤング

 

オーストラリアこれといって普通

Tooheys Extra Dryと72andSunny Sydneyは、象徴的なオーストラリアビールを「堂々たる普通」として祝うキャンペーンを開始した。Tooheys Extra DryはBig Lez Show、Betoota Advocateと協力し、「これといって普通」「良くも悪くも平均的」「結局このビールは詳しく話すほどのものでは全然ない」といった消費者からの口コミを含め、ごく普通と評価されるビールの特徴を強調した多数の動画とソーシャルメディアのコンテンツを発表した。

実際にそうではない別の何かの振りをするより、「良いものが在庫切れのときに妥協して選ぶビール」という立ち位置をTooheysは敢えて受け入れた。こうしたスタンスは、製品を売り出す上でその製品が他社より劣る理由ではなく、優れている理由を謳うものだと当然のように思っていた年配の視聴者をおそらく混乱させるだろう。しかし、製品のイメージに有利に働くというよりも、「昔ながらのオーストラリア」的ユーモアのセンスに見合う、気が利いていて誠実、実用本位というブランド全体のイメージにこの手法はうまく作用している。若い消費者は、あまりに良すぎて信じがたい大言壮語よりも正直さを高く評価するため、透明性と信頼性はそんな彼らの心をつかむことができるだろう。Z世代(デジタルネイティブ)は、向上心の高い完璧さや近寄りがたい孤高の存在であることよりも、多様性を受け入れ現実的であることに価値を置いて平凡さを讃える傾向があり、そして何よりも「頑張りすぎ」に見えないことを好む。このキャンペーンは、「意図的な格好悪さ」とローファイな美的感覚の要素を含むことで、他の高級なクラフトビールの代わりとして安価なビールを探している若い消費者に対して高い訴求力が期待できる。

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アジア・パシフィック トレンドマネージャー‐エリーシャ・ヤング