2年間に及ぶパンデミックと自粛生活を経て、2022年の消費者の未来にはどのような景色が見えるでしょうか。 EMEA トレンドディレクター、Simon Moriartyが、今年そしてその後の未来に注目される社会・文化トレンドを4つピックアップし解説します。

 

不安定な現実世界からの逃避の場を提供する

新型コロナウイルスの脅威が薄らぎながらも、消費者はおうち時間と実際の会場に出向く選択肢の両方を融合させ続けると見ています。映画館とデジタル・プラットフォームの両方で映画を公開する方法を引き続きとる中、ストリーミング・サービスは映画館以外での視聴をさらに収益化できるよう、新たなプレミアム・モデルを検討しています。しかしながら、すでにストリーミングサービスにお金を払っている視聴者や、映画館の興行収入に応じて金銭的補償を期待している映画業界の関係者から反発が出る可能性があります。しかし、人々がどこにいても楽しめることを切望する中、カスタマイズ、オンデマンド、拡張現実などを通じてあらゆるプラットフォームで視聴体験を向上させる大きな可能性があります。

 

データ収集に透明性を求める声

生演奏やコンサートは、体験を共有する喜びへの渇望から需要が上がるでしょう。今後もストリーミングが主流となる一方で、懐かしさと慣れ親しんだ鑑賞方法への回帰を求める人々の間で、昔ながらの音楽の楽しみ方への需要はより重要視されると思われます。ここで重要なのは、あらゆるエンターテインメントチャンネルにおけるストリーミングプラットフォームは、ユーザーのデータをどのように使用し、共有し、保存するかについて、より透明性を高める必要があることです。消費者は自分の生活をコントロールしているという感覚をこれまで以上に求めています。

 

仮想現実と拡張現実がメインストリームへ

バーチャルリアリティと呼ばれる仮想現実 (VR) やメタバースの成長により、家を出ずとも旅行ができる未来がやってくるかもしれませんが、実際のところ、人々は経験、特に誰かと共有のできる実体験を渇望しています。休暇はそれを提供してくれるものでしょう。異なる地域、国へ訪れることでの警戒心や、隔離などの不都合はあるかもしれませんが、次第に順応して旅行に対しても前向きになっていくでしょう。新しいテクノロジーを利用して旅行がわりにするよりも、ブランドは、旅行の前にVR媒体を通してお試しを提供するなど、テクノロジーで消費者をサポートするようになりそうです。交通手段も体験のひとつとなるでしょう。自律走行車やスマートコネクトされた飛行機での移動といった以前は手が届かなかった豪華なオプションを、旅行者の数を増やすために「標準」体験の一部にしていくでしょう。

 

包装材の未来を考えたパッケージングへの需要

サスティナビリティ や循環型社会といった倫理観はファッションや美容業界において重要な役割を果たすでしょう。ファッションにおいては古着の活用や洋服のレンタル、美容ではリユーサブルな商品や店舗で詰め替え可能な商品への期待と需要が高まっています。 消費者は、先述した業界のブランドに対して、より大規模な施策を求めるようになるでしょう。特に製造工程で与える環境問題、気候変動への影響に着目し、行動の遅いブランドからは遠のくようになるでしょう。

消費者は、このパンデミックを経て社会の不確実性や、物事の状況が一夜にして大きく変わることもあり得るということをより強く認識するようになりました。未来のパンデミックや危機から身を守るためにも、ライフスタイルが変わり、自己防衛が心身の健康を求めるにあたって最も重要な側面となっています。あらゆる場面で「見栄え」から「心の平穏」への移行が進み、メンタルヘルスのサポートが欠かせなくなるでしょう。