米国の警官および自警団が黒人の一般市民を非合法に殺害した事件をはじめ、複数の注目されている事件が大きな引き金となり、米国全体、そして世界中で、人種間の平等推進を求める人々の抗議行動が勃発している。正義を求める全国的な暴動はこれが初めてではなく、多くの人がブラック・ライヴズ・マター(トレイボン・マーティンの殺害をきっかけに2013年設立)は現代の米国公民権運動だと考えている。アクティビズムは確かに1968年から進化してきており、特にソーシャルメディアを通じたデジタルによる情報の民主化などのような変化に貢献してきたのと同じツールが、カテゴリーを越えて市場における変化にも特徴を与えている。こうした声高に主張する消費者の行動をミンテルは長年にわたって記録しており、さらには、消費者からの要求に対応する際、ブランドが自らの態勢を整えられるよう有益な視点を与えるミンテルのトレンドドライバー「権利」(ミンテルの2030年グローバル消費者トレンドのひとつでもある)の中で分析を行っている。

消費者のアクティビズムによる要求が現時点では比較的統一されているのに対し、(規模の大小にかかわらず)ブランドの対応はそれを受け取る消費者の評価と同じく様々である。ミンテルの米国における価値観調査によれば、ブランド/企業には人種間の平等を実現する対策を取るため努力する責任がある、という意見に対し米国の消費者のほぼ半数が賛成していることが分かる。また、ブランドの倫理に対する姿勢についてのミンテルの調査では、米国の消費者のほぼ半数が、ブランドは社会問題について率直に意見を述べるべきと感じていることが報告された。

ブランドのメッセージ、行動、ポリシーを揃える

 

多くのブランドは、容赦ない新型コロナウィルス感染症の大流行(このためブランド自体のメッセージ発信を余儀なくされた)に起因する経済的不安定性、さらには特定の地域や人口統計に限定しにくい抗議行動に直面し、現在はプレッシャーがかかる状況に追いやられているだろう。ここ数年、企業は人間味ある(「つながりを持てる」と言われることもある)メッセージを伝える努力をしてきており、それによってブランドはデジタルおよびソーシャルメディアでのメッセージ発信に重点を置いた、より親しみやすく目に見える「人格」を獲得している。ブランドが消費者とブランドのより個人的な関係を求めるならば、消費者は企業に関するすべてをアクセス可能な公開情報にすることを求めていることから、透明性に対するニーズを強調し、いくつかのブランドを予期せぬ反発に巻き込んだ、追加の義務や説明責任が付随することを今認識しなければならない。

個人的かつアクセス可能なメッセージ発信は、クリエイターやインフルエンサーについて考えた場合に最も顕著だろう。抗議行動をシャッターチャンスとして扱う行動から、はたまた時事問題の認識不足に至るまで、このような人たちの多くが厳しい状況に直面することになった。フォロワーは、彼らのコメントやダイレクトメッセージ、否定的に振る舞うインフルエンサーの直筆リストさえ「今すぐフォローを外すべき人」の情報源にするのである。「財布を開け(言い換えるなら、「寄付をしろ」)」、プラットフォームは賢く使えという呼びかけは、消費者が互いに求めている要求を代弁し、これが未だに個人的な義務や説明責任の行使とみなされていることを反映している。こうしたコミュニケーションのアクセスしやすさ(ダイレクトメッセージ、コメントスレッドなど)を、ブランドにとっての脅威とみなすのではなく、消費者からのフィードバックをリアルタイムで収集し、取り込むための待ちに待ったチャンスと見るべきである。インフルエンサーにとっては、彼ら個人に対する経済的影響が生じる可能性が高いため、率直に発言するリスクは組織よりもむしろ大きいかもしれない。しかし、消費者は態度を示すリスクを必要かつ標準化されたブランドの慣行とみなしている。そうしたリスクを低減する最良の方法は、消費者の要求にしっかりと耳を傾け、自らの価値観を貫き、間違いを犯した場合はそれを認め、やるべき仕事をしたと内外から認知されることである。

ブランドが自らのパブリックイメージと考えているものに比べ、「内輪」で背後にあるポリシーと慣行は双方がひとつになるにつれて逆さまになり、そこから明確にブランドの行動とポリシーの不一致を理由とする反発を招くことになる。これを実際に示したのがアパレル企業のエバーレインで、ブランド自体は倫理と「急進的な透明性」を謳っていたが、顧客が目にしたのは、様々なタイプの不当な扱いを受けた従業員が労働組合を結成するというものだった。ごく最近ではアマゾンが、彼らが表現した黒人社会との連帯について(消費者だけでなく米国自由人権協会を含む組織からも)非難を浴びた。これは、eコマース企業の従業員が不当な扱いを受けているというスキャンダルや、特に新型コロナウィルス感染症に関して従業員の保護に不手際があったことから、彼らの対応が多くの人には偽善的に見えたためである。

FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグは「人種間の平等に向けて活動するグループに1000万ドルを支給する」と約束したが、それでも、人種間の平等をたびたび阻害するデマの拡散にプラットフォーム側が何も対策を取らないことに対する従業員のストライキと消費者からの反発を食い止めるまでには至らなかった。これらの声明は、SnapchatのCEO、エヴァン・スピーゲルが従業員に送った手紙の中に、米国の「基盤をなす偏見、不公平、人種差別」に関する非常に具体的な言葉と「真実、和解、補償に関する超党派委員会」設立の呼びかけが含まれていたこととは、やや対照的である。

具体的な要求が具体的な行動を求める

Snapchatの声明などにみられる具体的な言葉は、その大部分が消費者自身の使う具体的な言葉と認められる。ミンテルのトレンドドライバー(トレンドを牽引していると考えられる要素や原因)「権利」の中で強調されているとおり、企業は今後も国境を越えた政治的手段を構築し続け、抗議団体が発する、より明確で対象を絞った反論と共存していくだろう。これはミンテルのトレンドドライバー「環境」で掘り下げているトピックとも密接に関連しているが、その中では、消費者による人権、より地域に根ざした社会的企業、改革の方向性に後押しされる政治的・社会的・科学的・経済的倫理などに対する関心の広がりが予測される。消費者の要求を十分に理解し対応することは、じっくりと積極的に話を聞く行為である。これには複数のチャネルを通じた情報収集と、消費者の意見に重みや影響力を加味することが含まれる。

消費者が具体的な行動を求めているのに、ブランドがそれにそった対応を行わない場合、(関連はあるが、より「無難」な選択肢である場合も含む)、消費者が相変わらず主張的かつ不満気であっても何ら驚くことではない。これは、過去の行動やブランドの持つ既存の評判に関係なく、ブランドがそれぞれの状況を異なる方法で具体的に処理すべき継続的な慣行だと知ることも重要である。消費者が努力を強いられるならば、ブランドにも同じように努力をするよう求めるだろう。黒人の中小企業経営者、オーロラ・ジェームズ(ブラザーベリーズのクリエイティブディレクター)が最近始めた「15%の誓約」は、消費者ではなくブランドが責任を引き受けた、継続的な事業に対する具体的かつ明確な取り組みであり、ターゲット、セフォラ、ホールフーズなどが誓約への署名を直接求めてきたが、まだ確認はされていない。

社会問題に対して大胆なスタンスを取ること(具体例としては2018年のコリン・キャパニックの広告起用および支持)で知られるナイキは、既存のスローガンに捻りを加え、人種差別に反対する広告「Don’t Do It」を放送した。広告は率直で言葉も具体的だったが、受け止められ方は様々であった。なぜこのような結果となったのだろうか?広告には行動喚起が明らかに欠けており、昨今の抗議活動の情勢におけるスポーツウェア・ブランド、ナイキとしての具体的行動についても一切言及せず、顧客に実行可能な方策を示すこともなかった。このブランドは大胆なスタンスを取ることで良い評判を得ているかもしれないが、常に注意を向けている消費者や著名な広告の専門家からは、今も口先だけでなく行動で示すように求められている。もちろん、強いメッセージを発しながらも、直ちに目に見える行動でそれを裏付けていないのはナイキに限らない。しかし、消費者と親密な関係を築いている多くの中小企業やローカル企業に目を向けると、彼らの価値観や行動はこれ以上ないほど明確なものだった。