ホットスポットでは、ミンテル・トレンド部門が調査した、世界中で発売される製品やサービスの最新情報をお届けする。今月登場するのは、ドライブインお化け屋敷や登録犯罪者からスーパーマーケットの店員を守る顔認証システムなど。世界で最も画期的な取り組みの数々を国ごとにご紹介いたします。

日本 – ドライブインお化け屋敷

東京では、世界初のドライブインお化け屋敷が今話題になっている。来場者は自分の車に乗ったまま快適に恐怖体験を味わうことができる。東麻布にあるホラーイベント制作会社、株式会社怖がらせ隊がこの夏制作した、ガレージで楽しめるホラーアトラクションだ。

徒歩で来場しても車をレンタルでき、亡者や幽霊が次々に車を襲ってくる恐怖の体験に参加できる。カーラジオからは、過去にそのガレージで起きた悲惨な事件の説明が流れる。一台に4名まで乗車でき、一つのショーが終わるたびに徹底して座席の消毒を行う。

花火大会や祭り、ホラー映画や怪談など、日本には夏に楽しめるさまざまな催しがあるが、日本の夏と言ったら、昔から「ホラーの季節」と言われている。怪談を聞くと「ぞっとする」ため、日本のうだるような暑さを大いに和らげてくれる。日本で人気の夏の行楽地である遊園地は、シーズン中たくさんの人でにぎわう。特に若者は、スリルを求めてホラーアトラクションやジェットコースターに列を作る。しかし、新型コロナウイルスの影響で、多くの人が混雑した場所に出かけることに慎重になっており、テーマパークは営業時間を制限して運営している。怖がらせ隊のドライブインお化け屋敷では、来場者は安全かつ管理の行き届いた環境下で恐怖を楽しめる。

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— トレンドマネージャー エリシャ・ヤング(アジア太平洋)

スペイン – 小売店での監視

スペインのスーパーマーケット、メルカドーナは、登録犯罪者や禁止命令を受けた人物から店員を守るために顔認識システムを導入している。自社店舗のうち40店舗に導入しているこのシステムは、刑罰や禁止命令を受けた人物の顔だけを検知するというものだ。映像は0.3秒後に削除されるため、顧客のデータがメルカドーナ側に保存されることはない。犯罪者が施設に入った場合、店員は地元当局に連絡して本当に当人であるかを確認することができる。

政府や企業は消費者の安全確保のため、生体認証技術を導入して革新を図っている。その効率性、有効性および利便性から、監視を目的とした顔認証システムの活用がますます広がっている。現在、小売業者は生体認証による支払いにとどまらず、顔認識を利用して消費者の法規順守や従業員の保護、盗難防止やそれにかかるコストの回避の対策に役立てている。プライバシーに対する懸念からこうした技術に不信感を抱く人もいるため、企業にはデータの使い道に高い透明性が求められ、プライバシーを確実に保護する取り組みが必要である。

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— トレンドアナリスト ボルハ・バリャドリッド(ヨーロッパ)

米国 – 孤立状態だが、孤独感はない

ジョンズ・ホプキンス大学やフロリダ州立大学医学部、ワシントン大学などの研究はいずれも同様に、新型コロナウイルスの世界的大流行とそれに伴う隔離は、孤独感の急増の原因ではないと強調している。これらの研究は、厳密にいえば孤独感に焦点を当てたもので、不安やうつ病といった他の精神衛生上の問題を掘り下げていない点に注目することが重要だ。

3月初めに米国各地で自宅待機命令が出された中、ミンテルが「社会的分離」トレンドの中で指摘しているように、とりわけすでに増加傾向にあったことから、孤独感が急増するだろうと予想された。しかしながら、この新しい研究は、主に技術を活用して人とのつながりを持つことで、孤独感の急増には至っていないと指摘している。さまざまな意味で物理的に隔離されているという共通の感覚を人々が抱き、それによって生じた孤独感に対処するための孤立状態の救済措置としてテクノロジーを活用するようになったのである。また、家族や大切な人と一緒に隔離状態にある人にとっては、孤独とは全くの無縁であるかもしれないという点も重要だ。実際に、ポットベリー・サンドイッチ・ショップは、親たちが一人で静かに食事を取れるように、一人で時間を過ごす人向けの駐車スペースの提供を開始したほどである。

3

— シニア・トレンドアナリスト ダイアナ・ケルター(米国)

ブラジル – 仮想の香水

ナチュラは、社会的隔離によって感覚的な刺激が制限される中、消費者に自分に合う香りをバーチャルで見つけてもらおうと、オンラインツールである「パーフェクト・クイズ」を開始した。このクイズの質問は成分に焦点を当てたものではなく、香水を使用する時に消費者が求める感覚について質問するという、感覚的アプローチを導入している。「心地よい気分にさせてくれる」、「快活さをもたらしてくれる」、「気分を明るくしてくれる」などは、男性的な香水はもちろんのこと、女性的なものや中性的なものにも当てはまる回答である。クイズの最後に、消費者は自分用にカスタマイズされたランディングページに転送され、そこで自分の好みに合ったあらゆる製品にアクセスして購入することができる。

ナチュラのこの取り組みは、テクノロジーの利便性と感覚的アプローチを組み合わせて、消費者が何を買うべきかアドバイスをするという、非常に大胆かつシンプルな方法だ。美容分野では、大きな混乱を引き起こすほど製品の種類が豊富にある一方で、既存のオンライン・ガイダンスツールが採用している嗅覚のノート(香調)に関する用語は、製品が断片的に感情に訴えかける側面を伝えるには明確さに欠 けるという問題がある。このため、オンラインでのアドバイスの効果は現状では最大限に発揮できていない。ナチュラは用語を変化させていくことで感情をオンライン購入プロセスの中心に置き、消費者との感情的なつながりを高めながら、消費者の選択に効果的なガイダンスを提供するための中核的なツールとして「パーフェクト・クイズ」を活用している。

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— トレンドアナリスト ヴァネッサ・ロンディーネ(ラテンアメリカ)

シンガポール – 都市型農業への期待

DBS銀行は、自社のシンガポール事務所の隣に従業員向けの都市型農場を建設中だ。銀行の敷地内にある、シンガポール初のコミュニティ農場と謳われるDBSフード・フォレストでは、シンガポールの人々が毎日消費する50種類以上の食用植物やハーブを栽培する予定である。農場はチャンギ・ビジネスパークにあるDBSアジアハブのビルの屋外に建設され、今年中の完成を予定している。この取り組みの目的は、屋外スペースを有効活用しながら、従業員に職場でリアルな農業体験の機会を提供することである。また、このコミュニティ農場は環境にも配慮しており、社内食堂から出る廃棄物は、DBSフード・フォレストの肥料として活用される。節水を目的とした無駄のない点滴灌漑システムの導入も予定している。

シンガポールは土地が不足しており、食料は輸入に大きく依存している。人口の増加や環境問題、食糧安全保障への懸念から、この都市国家では過去数年間に多くの都市型農場が出現している。また、栄養上の健康や、地元で取れる生鮮食品を消費することの価値に対する評価が高まっていると同時に、環境劣化への懸念も高まっている。それゆえに、消費者を直接巻き込んだ都市型の農業活動は、消費者に自給自足と持続可能な生活の機会を提供することができるのだ。

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— トレンドアナリスト メラニー・ナンビアー(東南アジア)