ホットスポットでは、ミンテル トレンドチームが注目する世界中の選り抜きの新製品・新サービスをご紹介します。リアルタイムで料理のアドバイスを受けられるメッセージホットラインを提供する調理器具ブランドから、働く日を選択できる新しいハイブリッドワークモデルを導入しているデザイン会社まで、今月登場した世界で最もイノベーティブな取り組みの数々を見ていきましょう。

 

調理ブランドのメッセージサービス– アメリカ

Great Jonesはリアルタイムで料理のアドバイスを行うテキストメッセージ形式のホットラインの提供を始めました。ポットラインと銘打ったこのサービスは、無料で利用でき、Great Jonesから直接ショートメッセージを受け取ることができます。料理や下ごしらえに関する質問であればどんなことでも回答してくれるのが特長です。手持ちの食材をメッセージで送ればGreat Jonesの担当者がレシピの提案まで行います。サービスの営業時間は米国東部標準時正午から18時までです。

パンデミックの影響で、料理やお菓子作りが盛んになり、調理器具ブランドにはいかに競合と差別化を図るかという課題が生まれました。 Great Jonesは他のDTCブランドと同様、豊富なカラーラインナップと美しいデザインを武器にブランド価値を高めています。Great Jonesが提供するプレミアム価格の裏付けとして、商品を存分に活用してもらうことに焦点を当てたこのホットラインを運営することで、独自性をアピールすることができます。

ダイアナ・ケルター – 北米消費者トレンドアソシエイトディレクター

 

フレキシブルに働く – オーストラリア、英国

従業員所有のグローバルなエンジニアリング・デザイン会社が、新しいハイブリッド・ワークモデルを導入し、従業員が働きたい曜日を選択できるようにしています。Arupのワーク・アンバウンド モデルは15,500人の従業員(うち6,000人は英国を拠点)に、週7日のフレックスタイム制を導入しています。これにより、希望した従業員は週末に契約時間内で働くことができ、もしくは従来通り月曜から金曜までの勤務を継続することも可能です。また、在宅勤務も半永久的に認められており、英国拠点の従業員は、週のうち3日間の勤務地を選び、残りの2日間はArupのオフィスで働くというスタイルも選択できます。ワーク・アンバウンドモデルの導入は、同社イギリス・リバプールとオーストラリア・クイーンズランドのオフィスでの実証実験の成功を機に開始されました。

パンデミックの影響で、多くの企業が働き方改革を余儀なくされましたが、加えて、働く人々が以前から抱いていた「働く時間と場所の自由度を高めたい」という希望もより強くなりました。リモートワークに不可欠なツールやテクノロジーの発展により、企業が従業員に柔軟性を提供できるようになった今、従来通りの週休2日制のあり方が疑問視されはじめています。 一部の研究によると、稼働日を週5日よりも少なくしても、週5日の稼働と同等のパフォーマンスが実現できるという結果が出ていることから、稼働日を従来の5日から減らすことを検討している企業が出てきています。さらに、より多くの人々が人生においての優先順位を見つめ直すようになり、ストレス解消方法や心身ともに健康を維持するための時間を確保するようになりました。こうした変化に対応するためにも、ワークライフバランスのさらなる柔軟性が重要視されています。

ヘレン・フリッカー – EMEAトレンドマネージャー

 

星占いチョコレート – ブラジル

Nestléはブラジルの占星術サイトAstrolinkと提携して、ユーザーが出生占星図を出すとチョコレートバーを割引で提供するコミュニケーションプラットフォーム, をローンチしました。その年に最も運勢の悪い5種の出生占星図を持つユーザーに対して、1年間無料でチョコレートをプレゼントするほか、毎月の星占いの結果に応じてチョコレートの割引を行います。

昨年、パンデミックにより日々の生活の多くがスムーズに動かなくなってしまったことで、サポート、人とのつながり、自分を見つめ直すことへの欲求が高まりました。孤立を感じる現代に、星占いをはじめとするスピリチュアルな要素に向き合うことで、自己を取り巻く精神的なつながりを感じることができます。星占いに興味を持った個性豊かな若者たちがソーシャルメディアでも多く 見受けられます。エンターテイメントを提供するだけでなく、消費者の個性を尊重し、消費者との意味のあるつながりを生み出すために、星座や星占いに関わるイノベーションを打ち出すブランドが増えています。

デイナ・マッケ – アメリカ大陸 トレンドディレクター

 

仮想空間におけるモビリティマーケティング – 韓国

Hyundai Motor Companyは、自社製品や将来のモビリティソリューションのプロモーションのために、オンラインゲーミングプラットフォーム、Roblox上に仮想空間(メタバース)を開設しました。 Hyundai  Mobility Adventureと名付けられたこのバーチャルゲームでは、ユーザー同士が交流し、 Hyundaiが提供するモビリティをアバターの形で体験することができます。ユーザーはRoblox上にあるヒュンダイのメタバースに設けられた5つのバーチャルゾーンを自由に行き来することができます。また、様々な課題をクリアしていくゲームやロールプレイも用意されています。プレイヤーは、NEXOやIONIQ 5といったヒュンダイの車に乗ったり、パーパスビルトビークル(PBV)やアーバンエアモビリティ(UAM)の輸送機器を操作することも可能です。

グローバルな自動車メーカーがオンラインゲームプラットフォーム上でコンテンツを制作するのは初めてのことです。パンデミックを通して人と人との直接の交流が減ったことにより、消費者はメタバースに関わりの場を求め、Roblox、Fortnite、Minecraftなどのプラットフォームのユーザー数が急増しました。 こうした消費者の動向を踏まえ、ブランドがメタバースでどのように存在感を示すことができるかを思索する傾向が見らます。韓国では、メタバース・エコシステムの開発に多額の投資が行われており、メタバース事業へ参入するブランドが増加しており、市場におけるメタバースの重要性が増していることが分かります。 このようなRoblox上でのキャンペーンは、新車購入の可能性を持った若い層に向けて、 Hyundaiのモビリティソリューションをアピールすることができるため、理にかなったマーケティング方法と言えるでしょう。

 

ヴィクトリア・リー – APAC トレンドアナリスト