「未来は予測できないが、未来は発明できる。」ガーボル・デーネシュ(『Inventing the Future』、1963)、電気工学者であり物理学者。ホログラフィーの発明でノーベル賞受賞。

 

未来は予測できないから、人類は発明するのだ…

2020年が終わりを迎えようとしている。これには「ありがたい」という声も聞こえてきそうだ。人類は2020年から多くのことを学んだとはいえ、未来がどうなるかはいまだに不透明である。社会、技術、環境、政治、そしてもちろん、パンデミックにおいては、無数のものが変動的で、絶え間ない変化がある。しかし、私たちはミンテルのアナリストとして、十分な試行を重ねたミンテルの研究方法を適用して、未来がどうなるのかを予測していく義務がある。

 

今となってははるか遠い昔に感じる2019年11月の初め、ミンテルは「2030 Global Consumer Trends(2030年世界消費者動向)」を発表した。当時は、パンデミックが世界中に広がり、国や社会、コミュニティ、消費者、企業にとって全く新しい「Next Normal(新しい日常)」が形成されることになろうとは誰も考えてもいなかった。この新型コロナの大流行を踏まえて、ミンテルは今年5月に、「How COVID-19 brought the future forward(新型コロナがいかに未来を前進させたか)」と題して、2030年の動向をアップデートした。そのタイトルが示唆するように、当社の予測それ自体は間違っていなかったが(これによりミンテルの方法論が有効であると立証することができる。)、当時では計算に盛り込みようのないこのパンデミックが原動力となって、世界は私たち(または、他の誰か)の予想よりも速く動いた。

 

こうした予測の要点は、100%正解であることではない。重要なのは、私たちが展開を見守ってきた(そして引き続き見守る)大きな流れを振り返ることであり、現在の道筋を踏まえて、私たちがどのような世界を作りだすのかを推測することだった。これらの予測は、我々が望まないような何かが起きる可能性があることに対する何らかの警告であり、私たちが築きたいと願うような世界、つまり、私たちが発明したいと望むような未来に対する何らかの願望でもあったのだ。

 

願い事は慎重に!

この記事の冒頭にある引用文のあとには、「人間社会を現在の姿に作り上げたのは、人間の発明能力だった。」という一文が続いている。

 

この言葉が指摘しているのは、技術の発明そのものがゴールではなく、私たちが創造し住みたいと願う社会についてより深く考え、それをもとにどのような技術を生み出し、残していく必要があるのかを判断する必要があるということだ。人類の歴史の大部分において、鋤や印刷機、電信機、電話など、人類が発明した技術が社会を形成してきた。現代では、機械化されロボット化された武力衝突、気候変動、環境悪化、過剰人口、そして言うまでもなくパンデミックがもたらす実存の脅威はすべて、人類の急速な「進歩」に着目したものではなく、むしろ進歩による副作用、あるいは長年積み重ねられた副作用ではないかという疑問を問いかけている。

 

そうした実存の脅威は、2020年に出版されたトビー・オード氏の著書『The Precipice』に挙げられており、統計的にも非常に分かりやすく数値化され、大きな注目を集めている。オード氏は著書の中で、自然環境への侵略がどのようにこのパンデミックを引き起こしたと考えられるか、そして、パンデミックによるロックダウンが要因となって、どのように人々が自然界とその素晴らしさに対して感謝の気持ちを持つに至ったかなど、パンデミックによって人々の関心の焦点がいかにはっきりしたかを指摘している。これは、人々や社会の中ではごく小さな、つかの間の気持ちの変化のように思われたかもしれないが、それらは強く成長し、深く根を張り、枝を伸ばすアイデアの種となり、最終的には、これまでより顕著な考慮すべき事項として、大きな影響力を持つことになるだろう。

 

消費者は、自分たちが本当に欲しいものは何か、欲しい理由は何かについて考えを変えつつあり、政府や企業はそうした空気の変化を感じ取りながら、消費者の新たな欲求に応えられるよう自らの戦略を変化させている。一方で、政府や企業もまた、自らが提供するものを通じて、消費者が求めるものを方向づけているのだ。したがって、より良い製品を提供し、より良い選択肢を提供することが企業の役割なのである。この役割を全うするため、企業自身が選択を迫られている。つまり、自社のためだけでなく、顧客にとってもより良い世界を予測するために、どのようなビジョンを選択するかが問われているのだ。ブランド・ビジョンは、収益性を超えて、今では「より良い」とはどのようなものであるべきかというビジョンを提供することにまで広がりを見せている。

 

未来の舵を取る

ドライバーといえば、かつては車を運転する人を意味した。しかしここでは、ドライバーとは自分の未来をコントロールする方法を指す。消費者が何を求め、なぜそれを求めるのかを企業が把握できるよう、ミンテルは7つのコンシューマードライバー(消費者行動を生む原動力)を考えた。この7つのコンシューマードライバーを考察することで、企業はより良い未来の消費者が望むものを予想でき、自社のブランド・ビジョンと既存客や見込み客のビジョンとの歩調を合わせることができるようになる。その時代においてどのような思想が主流となっているかを正しく理解する企業は、繁栄する。しかし理解を誤れば…その先に待ち受けるものは言うまでもない。

 

2020年11月を前にして、私たちは再び未来を発明している。私たち目標とするのは、未来の特定の年(2030年)ではなく、「今」(今から1年間)、「次」(今後2~4年間)、「未来」(その後5年間)を予想することである。同じように聞こえるかもしれないが、重要な違いだ。今年ミンテルは、一定の時間に固執するのではなく、むしろ、現実によって加速も減速もしる予測不可能なことに適応できるような生きた文書、成長し続ける文書を作成している。これにより、私たちは変化に対して適応反応することが容易となり、私たちや私たちのクライアントは、私たち(人類)が発明したい、またはしたくないと望む未来に焦点を当て続けることができるのだ

 

この11月も変わらないものといえば、ミンテルの新たな予測すべて、常に正しい予測を生み出してきた7つのコンシューマードライバーと、それらを支える4つの柱からなるシステムをもとに考え出されているということだ。また、当社の予想はCOVID-19の大流行によって加速する変化や、消費者の思考や企業の対応に見られる微妙でありながらも深い変化を考慮に入れ、世界的に消費者が望むより良い未来を集約しながら、企業が独自の戦略的ビジョンを構築できるように支援している。

 

消費者が何を求め、なぜそれを求めているのかについての専門家であるミンテルは、消費者行動の未来、そしてそれがブランドにとって何を意味するのかを分析、予測していきます。これまで、10年以上にわたり、私たちは未来についての情報を正確に伝え続けてきました。私たちはこの今まで築き上げてきたレガシーを今後もさらに意味のある方法で継続していきたいと考えています。今後も私たちの活動、後続記事等に是非ご期待ください!