不安定な時世が続く中、ストレスや不安をコントロールすることが、これまで以上に大きな課題となっています。食べ物と幸福の関係は密接です。食べ物の気配がすると、脳はドーパミンを発し、快楽中枢と報酬中枢に影響を及ぼします。この記事では、不安を払拭する食べ物の分野でイノベーションを起こし、消費者へ食べ物を通して喜びを与えるためのさまざまな戦略についてシニア・グローバル・フード&ドリンク・アナリストのHonorata Jarockaが解説します。

贅沢と質素のバランス

消費者の気分を向上させ、ストレスや不安を解消することを目的としたスナックバーのブランドは、「許される贅沢」というコンセプトを強く打ち出す必要があります。多くの人が、不安定な時に甘いものを摂取する傾向にありますが、糖分はストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げることで、ストレス解消に作用するという研究もあります。

しかし、多くの消費者はおいしさと健康が両立した商品により強い関心を持っているため、節度をもったアプローチが鍵となりそうです。例えば、フランスの消費者の5人に3人はスナックバーに含まれる糖分は多すぎると答え、さらにスペインの消費者は10人に8人が健康的なスナックを選ぼうとしています。

出典: Mintel GNPD

Tasti Go On… Indulge Choc Caramel Choc Cereal Bar(ニュージーランド) ライスポップとオーツ麦のサクサクした食感に、キャラメルを贅沢に塗り、クリーミーなチョコレートコーティングを施したものです。1本あたり100kcal未満で、食物繊維を含んでおり、リサイクル可能な5本入りパックで販売されています。

パーソナライズを提供し、質の良い睡眠を促進

機能性スナックバーは、目的にあったソリューションや機能を提供することで、健康への訴求力を高めることができます。ドイツでは、3分の1近くの消費者がリラックス感の得られるスナックを試したいと考えています。

出典: Mintel GNPD

Bakalland Ba!lans Relax Cherry and Lime Bar(ポーランド) は、甘さが与える喜びとヘルシーなおやつのバランスが両立していることを謳っています。サクサク食感のシリアル、蜂蜜、ナッツ、ドライフルーツを組み合わせたもので、ホワイトチョコレート、蜂蜜、ライムフレーバー、フリーズドライのチェリーが入っています。リラックスをサポートする生理活性成分であるメラトニン、レモンバーム、ビタミンB12、ヘンプシードエキスを配合し、パーム油、ブドウ糖果糖液糖、水素添加油脂を使用していません。

出典: Unwind

一方、Unwind(アイルランド)は、カモミール、l-テアニン、モンモランシーチェリーを配合し、おやすみ前に睡眠を助ける理想的な「ナイトスナック」と謳われています。

シンプルで、腸にやさしいレシピを取り入れる

腸に働く微生物とメンタルヘルスの関連性を活用し、総合的なアプローチで健康を手に入れたい消費者とのエンゲージを図るブランドにとって、新たな商機となりそうです。

出典: Mintel GNPD

Core Bar Peanut Butter Chocolate Organic Overnight Oat & Probiotics Barは、7gの食物繊維とタンパク質、生きたプロバイオティクスとプレバイオティクスを含み、身体に必要な栄養をバランスよく摂取することができます。USDA認証のオーガニックかつ、ビーガン、コーシャの認証を受けており、遺伝子組換え食品、グルテン、砂糖も不使用です。食物繊維、糖質、タンパク質の含有量をパックに大きく表示しています。食べ物の選択肢も栄養に関する情報も多すぎるが故に、多くの消費者が悩まされています。そのため、必要な情報をパッケージ上でアピールすることは非常に重要です。

商機

肉体と共に精神的な健康も重要視される中、消費者は自分へのご褒美として許せる範囲での贅沢を求めています。ブランドは、ストレス緩和や腸の健康を期待できる成分でイノベーションを図ることで、商機を探ることができるでしょう。また、自分自身の健康だけでなく、環境にも気を配る消費者の心をつかむには、栄養面や環境面でのメリットを明確に打ち出すことが必要です。