企業がどのようにして、消費者の高まるサステナビリティへの需要に応えられるかを見てみましょう。

 

私たちが生きる世界は、産業革命以前の時代と比べて1.5度も温暖化し、深刻な気象現象が人々や経済に大きな損害を与えています。世界保健機関(WHO)はこの問題を「人類が直面する最大の健康リスク」と表現しています。

サステナブルな企業活動の緊急性を認識することは、サプライチェーンの混乱や制裁的な法律回避するだけでなく、消費者の期待と需要を満たすことで、収益性の高いビジネス戦略につながります。

この脅威に対抗するため、消費者と企業は環境や社会的優先事項を見直し、健康や経済、人類全体に利益をもたらすサステナブルな解決策を求めています。

 

サステナビリティにおける問題と解決策は消費者とBtoC企業にある

 

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、世界の温室効果ガス排出量の60~70%が家庭の消費に由来しています。そこでミンテル「サステナビリティの世界的展望 2024-25」を作成しました。このレポートでは、世界の最も注目すべき10カ国を取り上げ、10,000人の消費者の行動、意識、購買傾向を4年間のデータに基づいて追跡しています。

 

本レポートの目的は、マーケティングやイノベーション戦略に役立つ最新のデータと専門的なインサイトを提供し、企業が今後のサステナビリティ課題に対してより柔軟に対応できるよう支援することです。

 

今年の消費者サステナビリティ調査では、日用消費財(CPG)業界におけるサステナビリティに焦点を当てています。食品・飲料、美容・パーソナルケア、家庭用品などの業界に関する詳細な分析を提供し、企業の製品、サービス、方針を際立たせるための最も効果的な戦略について、より深い理解を得ることができます

 

 

消費者はサステナビリティを重視しているか?

 

消費者がサステナビリティを重視していることは、ますます顕著になっており、彼らはサステナビリティに強い関心を持ちながらも、不安や無力感を感じています。気候変動を否定する人は少数派で(28%)、49%の人が異常気象にさらされることで、より強い危機感を持ち始めています。

 

サステナビリティへの消費者の意識と積極性の高まりは、教育と実体験の両方によるものです。調査対象者のうち、4割が環境保護活動によって環境問題に対する理解が深まったと答え、特に企業のカーボンオフセットなどの訴求に対して懐疑的な見方をするようになっています。意識的な消費を心がける人は増えており消費者の3分の2以上が、企業が自らの温室効果ガス排出量を削減することを望んでいます。

 

積極的にサステナブルな取組みを行っている主な層:55歳以上の消費者によるサステナブルな消費行動の実践

 

当社の世界有数の消費者サステナビリティ調査は、意外な発見とともに、いくつかの通説を覆しました。16~24歳の若者は気候変動関連のデモに参加した経験がある割合が最も高く(10%)、ベジタリアンである割合も2倍(6%)でありながら、彼らのサステナビリティに関する行動や気候変動に対する意識は標準的なものにとどまっています。

 

一方興味深いことに、55歳以上の消費者は、サステナビリティに関する行動と積極性が最も高いことが分かりました。この傾向の背後には、2つの要因があると考えられます。まず、年齢が上がることで得られる視野の広さ、そして住宅や資産を所有していることが、こうした行動を可能にしているのです。彼らは自分の行動が環境に良い影響を与えると信じ、その価値観に基づいた行動を取っています。

 

女性のサステナビリティに対する意識

 

「サステナビリティの世界的展望 2024-25」では、「母なる自然」などの伝統的な概念に触れ、特定のグループがより良心的で、家庭の主要な消費者であるというジェンダーに基づく認識について探っています。調査によると、自認が女性である回答者はサステナビリティ問題に対する意識が高く、自認が男性である回答者よりも、気候変動を否定する可能性が6ポイント低いことがわかりました。また、彼女たちは自国が気候変動に苦しんでいると感じる割合が男性よりも5ポイント高く、自らの行動がサステナブルな方法で前向きな変化をもたらすと考えている割合も4ポイント高い結果となっています。

 

うした意識の高さは、リサイクルなどのサステナビリティ活動への積極性表れていると考えられ、リサイクルの実践率では7ポイントのリード、調理時の省エネ行動では5ポイントのリードを示しています。さらに、彼女たちの意識的な消費行動は食生活にも表れており、日常的に肉を消費する割合が男性よりも4ポイント低いことが明らかになりました。

 

 

意識的な消費と進化する購買行動

 

進化する購買習慣は、食糧や水不足を深刻に受け止め、効率性と価値の両方を実現するサステナブルな解決策を模索する、より資源を大切にする消費者の出現を表しています。この意識的な消費へのシフトにより消費者は、消費や廃棄物を減らしつつ資源を最大限に活用する購買行動やライフスタイルを取り入れるようになっています。

 

食生活の変化は依然として緩やかですが(ベジタリアンやヴィーガンは人口の5%で横ばい)、オーガニック食品や肉・乳製品の代替品は、毎週の買い物リストに欠かせないものとして定着しています。また、当社のグローバル調査のデータは、家庭や輸送におけるクリーンエネルギーの利用拡大の業界動向を裏付けています。2024年時点で、調査参加者の3分の1以上が再生可能エネルギーを利用しており、家庭用太陽光発電やヒートポンプの導入が顕著に増加しています。同様に、電気自動車(EV)の普及率も上昇しており、ハイブリッド車や完全なEVの所有・リースが増加し、従来のガソリン・ディーゼル車のシェアは減少しています。

 

 

より環境負荷が少なく、より責任ある製品を戦略的に位置づけるためのガイドライン

 

2024年の調査では、自の行動が「環境にポジティブな影響を与える」と信じる消費者の割合が、2021年の51%から47%に減少していることが明らかになりました。同時に、リサイクル可能なパッケージや責任ある調達といったサステナビリティ要因が、購買決定において重要性を失いつつあることもわかりました。企業によるサステナビリティに関する訴求に対する不信感が高まる中で、企業がより環境負荷が少なく、より責任ある製品や企業方針を提供する際には、以下の3つの課題に取り組む必要があります。

 

  1. 消費者の自身が及ぼす影響力に対する意識低下を克服すること
  2. 企業の訴求方針に対する不信感に対応すること
  3. 消費者の購買判断におけるサステナビリティの優先度の低下を認識すること

 

当社のサステナビリティ調査は、消費者が自身や企業の行動によってポジティブな影響を感じる部分と、感じない部分を明らかにしています。調査対象の美容・パーソナルケア、家庭用品、食品・飲料消費者のうち、約5人に2人が、企業は政府よりも世界的な変化を促進できると考えています。消費者はアップサイクル、CO2の回収遺伝子組み換え食品、原子力の代替エネルギーに多少の関心を示していますが、消費者の4分の1が、環境問題の一部を理解しにくいと感じています。これは、企業が教育、透明性、具体的なガイダンスを通じて、消費者のサステナビリティへの取り組みを支援する存在として信頼を得る必要があることを示唆しています。

 

美容・パーソナルケアや家庭用品をよく購入する消費者の半数以上が、リサイクル可能性などの情報を求めてラベルをチェックしており、食品・飲料消費者の3分の1以上が、その製品を購入することで支援できる環境への取り組みの詳細を確認しています。これは、消費者の不信感を克服し、よりサステナブルな製品を選びやすくするために、ラベル表示やメッセージが重要であることを示しています。

 

サステナビリティの優先順位が低下している今、マーケターは気候変動の危機とその解決策をより身近に感じられる形で伝える努力をする必要があります。消費者は、サステナブルな製品がもたらすポジティブな影響について、マーケティングコミュニケーションで具体的な証拠を得ることこれまでになく求めています。また、サステナブルな選択が健康面や経済面でもたらすメリットを明確に理解したいと考えています。

 

企業のサステナビリティ活動は、成功するビジネス戦略につながる

 

消費者は、この課題の根本的な一部を担っており、解決のカギも握っています。消費者はブランドや企業と同じように、サステナビリティを感情的な環境問題ではなく、公共の脅威や資源問題として捉えています。この理解は、より健康的で効率的な消費選択へと彼らを導いています。当社の「サステナビリティの世界的展望」は、サステナビリティを意識した世界における消費者の意識を理解し、企業が消費者の進化するニーズに応えるためのマーケティングやイノベーション戦略を策定・適応させるための戦略的なインサイトを提供します。

 

「サステナビリティの世界的展望 2024-25」の概要資料はこちら:https://japan.mintel.com/sustainability-outlook