お茶は世界中で親しまれている飲み物です。異なる国では、それぞれ独自のお茶文化が形成されています。イギリスでは、お茶はほぼすべての問題を解決できる定番アイテムとして重宝されています。中国ではお茶は伝統とマインドフルネスの象徴となっており、日本では茶道が芸術と見なされています。トルコではお茶がおもてなしの重要な一部となっており、北アメリカの消費者はアイスティーや甘いお茶を好むことで知られています。 こうした文化的なステレオタイプはお茶の魅力を垣間見る一助となる一方で、お茶の市場は世界的に急速に進化しつつあります。 ミンテルとともにお茶の市場を世界的に捉え、最大かつ最新のトレンドを深く掘り下げていきましょう。変化する消費者の需要に応えるために、各企業がどのような製品開発に取り組んでいるのか、そして、各企業がダイナミックなお茶市場で一歩先を行くにはどうすればよいのかを探りましょう。 お茶の市場は世界的に成長しているのか? ミンテルの予測によると、イギリスのお茶市場は2023年から2028年にかけて販売額のわずかな増加が見込まれており、割合にして1.1%、価格では8億8,400万ポンド(2024年11月の為替レートで、約163億円)に達すると推定されています。今後数年で実質所得が上昇し始めると、インフレが落ち着き、販売額の成長が減速していくでしょう。各企業はコーヒーやソフトドリンク、そして外食機会の増加による競争の激化に対抗するために、製品を多様化させていく必要があります。 アメリカのお茶市場も、インフレの影響を受けて同様の状況に直面しています。お茶およびReady To Drink(RTD)市場におけるドル売上高の成長は、消費の増加ではなく主に価格の上昇によって支えられています。アメリカの消費者では83%がお茶を飲んでいる一方で、調査対象となったお茶消費者では、40%弱が「最も一般的なお茶が自分の好みの味」だと回答しています。フレーバーが同カテゴリーの弱点であることから、味を向上させることがアメリカのお茶業界の成長においては不可欠となるでしょう。 ドイツ市場では、高インフレにもかかわらず長期的な販売額の成長が見込まれています。ミンテルの予測によると、ドイツのお茶市場の販売額は2023年から2028年にかけて4.8%成長すると推定されています。特にオーガニックなお茶の人気は、健康や環境に対する意識の高まりに応える形で、この力強い成長を後押ししている要因の一つです。2030年までに農業形態の30%をオーガニックにするというドイツ政府の目標も、この拡大するトレンドを押し上げる原動力となっています。 中国のお茶市場、特に喫茶店は成熟期に突入していますが、それでも2027年までに3,708億元(2024年11月の為替レートで、約8兆円)まで成長することが予想されています。この成長はお茶の消費習慣の進化によって押し上げられており、今では伝統的な場面に限らず、仕事中やリラックス時間にもお茶が広く楽しまれています。喫茶店も製品ラインナップを拡大し、さまざまな消費シーンに対応する機能性成分を取り入れたイノベーションを進めています。 お茶市場の見通しは地域によっても異なりますが、全体的には明るい成長が期待できます。成長の促進要因には、サステナビリティ、健康効果、多様な成分、新しいお茶の消費シーンの定着などが挙げられます。では、これらの主要トレンドがグローバル市場をどのように形成し、世界各地のお茶の消費にどのような影響を与えているのでしょうか。次から詳しく解説していきます。 サステナブルな未来を煎じる:お茶市場のトレンド 環境にやさしく倫理的に生産された製品を求める消費者需要により、世界中でサステナビリティが強く意識されるようになっています。以下では、お茶ブランドがエコ意識の高い消費者を満足させるために取り入れている、大胆かつ新しいアプローチをいくつかご紹介します。 パッケージのイノベーション お茶ブランドは、環境にやさしいパッケージに力を入れることで、製品のサステナビリティ向上に積極的に取り組んでいます。2023年には、世界で発売されたお茶・RTD茶の新製品の3分の1以上、イギリスで発売されたお茶新製品の5分の4以上が環境に優しいパッケージを採用していました。タイだけでも、消費者の4分の1が「プラスチック不使用のパッケージで販売されるお茶にはより高い金額を支払っても構わない」と回答しています。各企業はこうした高まる消費者からの期待に応えるため、ティーバッグからプラスチック素材を排除するだけにとどまらず、生分解性や堆肥化可能な代替素材などを模索するようになっています。 透明性と倫理的な調達 消費者は、製品やサービスにおけるサステナブルな調達や生産に関して、透明性をますます求めています。ドイツのお茶消費者の半数以上は、「価格の増分が直接農家に支払われるのであれば、倫理的に調達されたお茶に高い金額を支払っても構わない」と考えています。ブランドは、サプライチェーンや倫理的な調達に関する情報をパッケージに記載することで、これに対応しています。ミンテルのエキスパートが「年間レポート:茶・麦芽飲料・その他ホット飲料 – 2024年」で取り上げた注目の取り組みの一つに、アメリカのブランドによるEqual Exchange Organic Hibiscus Teaがあります。この革新的なアプローチは、小規模農家により大規模な市場へのアクセスを提供することで、小規模農家を支援し、より大きな影響力を与えることを目的としたものです。このアプローチでは、小規模農家に機会を提供するだけでなく、倫理的に生産された製品に対する消費者の関心にも寄り添っています。 同様にイギリスのお茶ブランドも、倫理的な慣行、公正な労働者待遇、環境への配慮を伝えるために、フェアトレードやレインフォレスト・アライアンスなどの認証取得にますます力を入れています。 Equal Exchange Organic Hibiscus Teaは、倫理的な調達を通じてお茶のグローバル市場を革新しながら、小規模農家を支援する新製品を発売している。 環境再生型農業の実践 将来にわたってお茶市場を守り続けるために、ブランドは環境再生型農業の実践に目を向けています。この取り組みでは、土壌の健康と生物多様性を維持することで、お茶栽培のサステナビリティを確保することに重点が置かれています。また、ブランドはカーボン効率の高い原材料を使用することで、カーボンフットプリントを削減する取り組みにも乗り出しています。これは、企業がカーボンオフセットではなく、二酸化炭素排出を実質的に削減することで責任を果たしてほしいと期待する約4分の3の食品・飲料消費者にも寄り添っています。イギリスを拠点とするKib’s Liven up Hibiscus Teaは、その先駆けとなるブランドの一つでしょう。同社の製品は「フォードフォレスト」で栽培されており、ここでは自然の森林生態系を模して設計されたサステナブルな農業システムが実践されています。こうしたシステムは、生物多様性を高め、二酸化炭素を吸収し、よりサステナブルな農業への取り組みに貢献しています。 環境再生型農業を生産に取り入れることで、ブランドはサステナビリティに対する消費者ニーズに応えながら、環境保護への取り組みを示すことができるでしょう。 サステナビリティはお茶市場の中核的な存在となっており、ブランドは環境に配慮した倫理的な製品を求める消費者の期待に応えるために一丸となって取り組んでいることが、こういった事例からも見て取れます。 お茶の消費シーンの拡大 お茶は、消費者の好みの変化や革新的な新製品発売の影響を受け、さまざまなシーンで楽しめる飲み物として認識されています。 お茶とスナック:完璧な組み合わせ 「スナック化」トレンドとアフタヌーンティーの習慣には、興味深い結びつきがあります。「スナック化」トレンドでは食事と間食との差が曖昧になりつつあることが指摘されており、19-24歳の消費者の間では、一日中スナックを食べる、あるいは通常の食事をスナックで置き換える動きまで見られるようになっています。こうした中、ブランドもさまざまなスナックに最適なペアリングとしてお茶を提案することで、このトレンドの波に乗っています。この戦略により、伝統的なアフタヌーンティーの習慣は、若い消費者にもアピールする形で再び活気を取り戻しています。例えばドイツでは、Z世代の10人に7人が少なくとも1日1回は間食をとっており、イギリスでは18-24歳の5分の1が1日に3回以上間食をとりながら、スナックと一緒にお茶を楽しみ、贅沢感とリラックスを感じるひとときを過ごしています。 こうしたトレンドはタイなどの市場でも見られています。タイでは消費者のほぼ半数が午後にお茶を飲んでいることから、飲料ブランドは、空腹感の解消や午後のエネルギー補給としてよく食べられる塩味スナックに最適なペアリングとして、お茶を提案していくことができるでしょう。お茶、特にRTD茶に関しては、斬新なアイデアを取り入れ、単体で楽しめる「間食」としてマーケティングしていくことで、このトレンドをさらに活用することができます。ビスケット味の紅茶やタピオカミルクティーといった贅沢感や甘みのある製品は、間食代わりに楽しく飲める甘い飲み物が好きなタイの消費者の好みにもマッチしています。 お茶の消費と「スナック化」トレンドを組み合わせるアプローチは、ブランドが贅沢感や精神的なウェルビーイングを求める消費者の好みに沿った新しい消費シーンを生み出すきっかけになるだけでなく、お茶を日常生活の一部に取り入れていくことも可能にするでしょう。 禁酒ムーブメントがお茶市場のイノベーションを刺激 人々が積極的に節酒・禁酒に取り組む「禁酒ムーブメント」は、お茶市場に新たな商機を生み出しています。例えばドイツでは、健康的なライフスタイルを維持する一環としてアルコールを控える、または飲まない消費者がほぼ半数に達しており、禁酒・節酒トレンドが勢いを増しています。結果として、ドイツのお茶消費者の10人に7人は、お茶をアルコール飲料に代わる理想的な代替品として捉えています。各企業はこの禁酒ムーブメントをマーケティング戦略に取り入れ、夕食時や人との集まりだけでなく、心を落ち着けたい時やリラックスしたい時など、普段人々がアルコールを手に取るきっかけとなる情緒的な要素とも結びつけることで、お茶をアルコールに代わる健康的な飲料としてアピールしていくことができるでしょう。 このトレンドはドイツに限らず、より健康的なライフスタイルが重視されている他の市場にも適用できます。イギリスではお茶消費者のほぼ半数、アメリカではミレニアル世代消費者の5分の1が、お茶を満足のいくアルコールの代替品と見なしています。消費者の需要の変化に応じて、各企業は人気のあるアルコール飲料のフレーバーを模した汎用性の高い製品を開発しながら、新製品開発に取り組んでいます。Meßmeが発売するGin Lemon Style Fruit Hot Teaは、その最たる例でしょう。この製品はアルコールを最小限に抑えながら、ジンレモンの味わいを再現しています。この革新的なアプローチは、おいしいお酒を楽しむ時間を犠牲にすることなく、アルコール摂取量を減らしたい消費者にとっては魅力的です。 Meßmer Gin Lemon Style Fruit Hot Teaは、お茶をアルコールに代わる健康的な飲み物として強調することで、禁酒・節酒トレンドに合わせたマーケティング戦略を実施。 俯瞰して見ると、この禁酒ムーブメントは新たなお茶の消費シーンを創出することでお茶市場の成長を押し上げており、多くのブランドが、集まりの場やリラックス時間に自然に溶け込む、アルコールに代わる理想的かつ健康的な飲料としてお茶をアピールしています。 機能性を備えたお茶市場の台頭 機能性のあるお茶は、健康やウェルネスへの関心の高まりにも後押しされ、世界中のお茶市場で大きなトレンドとして台頭しつつあります。エネルギーや免疫機能の改善、睡眠の質や集中力の向上、全体的な健康サポートなど、さまざまな健康効果を備えたお茶は世界中で人気を集めています。イギリスでは、消費者の5人に1人がプラスの健康効果を取り入れたお茶を選んで購入しており、アメリカでは、お茶消費者の半数以上が「機能性訴求があれば、新しいお茶ブランドを試してみたいと思う」と考えています。 イギリスのお茶市場は、特定の健康ニーズに応える機能的なお茶の新製品を発売することで、消費者の需要に応えています。大手ブランドのTwiningsやTetleyは、ビタミン、向知性成分、アダプトゲンなどを配合した新製品を発売し、プラスの健康効果を求める消費者を魅了しています。例えば、Twiningsが発売する「Women’s Health」シリーズでは、更年期を迎える人々をサポートするお茶が登場しています。一方で、Tetleyは、ビタミンCやその他の栄養素を配合したお茶シリーズ「Super」をリニューアルし、免疫サポートやエネルギー向上などの効果を提供しています。こうした新製品開発は、消費者の間で、お茶の味のおいしさだけでなく具体的な健康効果を求める声が高まっている動きを反映したものでしょう。 Twiningsは、更年期を迎える人々をサポートする製品を発売し、機能的なお茶に対する需要の高まりを活用している。 さらに、カフェイン特有の震えが起こらないナチュラルなエネルギー源を求める消費者が増えていることから、お茶はエネルギー向上効果のある飲料カテゴリーでも重要な存在として商機を拡大していくことができます。ドイツのお茶消費者では、3分の1以上がエネルギー維持に役立つRTDアイスティーに関心を寄せており、アメリカでも同様の割合の消費者がRTD茶にエネルギー増強効果を求めています。 ミンテルGNPDによると、2023年8月までの12か月に世界で発売されたお茶およびRTD茶製品のうち、機能性エネルギー訴求を掲げている割合はわずか5%と少ないながらも、消費者がお茶に含まれるナチュラルなエネルギー源にますます注目するにつれ、この割合は増加していくと予想されています。植物由来のカフェインやイェルバ・マテなどのハーブ成分を取り入れたお茶は、コーヒーや機能性飲料にありがちな手の震えや興奮を引き起こすことなく、よりマイルドで穏やかなエネルギー向上効果を提供することができます。こうした需要が高まる中、ミンテルは、製品やマーケティング戦略を刷新し、お茶の自然なエネルギー向上効果を強調するブランドが今後ますます増えていくと予測しています。ナチュラルな成分を通じて持続性のあるエネルギーを提供するお茶の効果をアピールしていくことで、各企業は健康を重視する消費者を魅了することができるでしょう。 ブランドは変化するお茶トレンドにどのように適応できるのか? お茶市場は将来的に、サステナビリティ、消費シーンの拡大、機能性を備えたお茶への需要の高まりといった重要なトレンドによって急速に進化していくでしょう。こうした大きな変化が起こる中、データやインサイトを持たないブランドや企業は後れを取ってしまうリスクがあります。 ミンテルでは、あらゆる規模の企業様が消費者の期待に応え、成長し、絶えず変化する市場の中でイノベーションを起こしていくためのさまざまなソリューションや専門家によるアドバイスをご提供しています。 新規のお客様は、無料のブログ記事やレポートがダウンロードできる、ミンテルSpotlight をまずはぜひご購読ください。Spotlightにご登録いただくと、無料リソースの更新情報をメールでお届けします。ここでは、お客様にとって重要な市場に関するインサイト、新たな視点、そして革新的な分析をご覧いただけます。 消費者行動、市場の動向、製品開発、競合分析などについてより詳しいインサイトや情報をお求めのお客様には、ミンテルがそれらをサポートする幅広い製品やソリューションをご案内いたします。ぜひ、ミンテルジャパンまでご相談ください。 ミンテルとともに、データに基づいたビジネスの意思決定を始めましょう。