健康的な食生活に対する消費者のアプローチは変化しつつあります。 新型コロナの流行後に注目を集めた予防栄養学や超加工食品の健康リスクに関する研究、現在進行中の経済的な課題などが、健康的な食生活のトレンドに影響を与えており、消費者が健康を重視した食生活を送る後押しとなっています。

タイでの調査では、3分の2以上が「新型コロナの流行後、健康的な食生活の優先度が高まった」と回答し、インドでも約3分の2が「パンデミックの後に不健康な間食習慣を減らしている」と回答しています。 しかし近年の厳しい経済情勢により、一部の消費者にとっては健康的な食生活の優先度が下がっています。ドイツでの調査では、大半「常に/ほとんど常に健康的な食事を心掛けている」と回答している一方で、半数以上は「体重管理よりも金銭的な懸念がより重要」だと回答しています。 このことからも、家計の圧迫は健康的な食生活を定着しにくくさせることがうかがえます。

とはいえ、このような短期的な課題が解消されれば、世界的にも健康を重視した食生活へとシフトすることがミンテルの市場調査で明らかになっています。イギリスでの調査では、68%が「常に/ ほとんど常に健康的な食事をしている」と回答しており、大西洋を挟んだ反対側のカナダでの調査でも、74%が同様の回答をしています。

家計の圧迫という現在進行中の課題があるとはいえ、健康的な食生活が引き続き多くの消費者の中で重要視されていることがうかがえます。 本記事では、健康的な食生活の最新トレンドについて探っていきます。

 

オールナチュラル

世界的にみても、消費者は加工食品より自然食品を好む傾向があります。アメリカでの調査では、半数が「加工食品を減らし食生活を改善したい」と回答しています。 クリーンラベルのトレンドは、食品に透明性やナチュラルさを求める消費者の需要の高まりを反映しており、製品の原材料についてもますます精査されるようになっていることを示唆しています。イタリアではほぼ半数が「食品を購入するにあたり、ナチュラルな原材料の使用が最大の購買理由だ」と回答しています。 しかし、こうした加工食品への意識の高まりは生活費の高騰とも時期を同じくしており、消費者は加工の少ない食品に関心を寄せてはいるものの、大多数はそのために高い金額を支払う意欲はなく、自然食品ブランドには 依然として課題が残されています。

自然食品と加工食品への認識が高まり、消費者が食品の様々な加工度に注目したことで、加工食品と超加工食品とを区別するようになっています。 消費者は自分の中での「良い加工」「悪い加工」のバランスを確立しながら、栄養価が高く、美味しく、手頃な価格で、加工を最小限に抑えた食品を求めています。イギリスでの調査では、68%が「加工度の高い食品であっても、バランスの取れた食事の中で適度であれば摂取しても構わない」と回答しています。 ブランドは、バランスの取れた食事の中で加工食品をどのように取り入れることができるかについて明確な情報を伝えるとともに、消費者がお気に入りの超加工食品の代替品として楽しめる「体に良い」製品を提供することで、満足感のあるヘルシーな食事の提案をすることが求められています。

 

ホリスティックヘルスのための食事

「健康」の定義はますますホリスティック(包括的)なものへと進化しています。世界保健機関(WHO)も、「健康とは、完全な 肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定めています。この進化は消費者の考える「健康的な食生活」へも大きな影響を与えています。ドイツでの調査では、3分の2以上が「食べ物が精神的なウェルビーイングに直接的な影響を与える」と回答しています。レンドについて探っていきます。

ミンテルの健康・栄養に関する幅広い調査

 

ホリスティックヘルスのための食事には、気分や心を癒す食品も含まれる。出典:Gettyimages

 

ホリスティックヘルスのための食事は、身体の健康や体重管理だけでなく、精神的・社会的なウェルネスも重視しています。 消費者は、従来の考え方に基づく健康的な食品(低カロリー、無糖など)だけでなく、気分や心を癒してくれる食品も同様に求めています。 腸内細菌叢と健康との関連性は研究者だけでなく消費者にも認知が広がり、 このことは市場にも反映されています。ミンテルのGNPDデータによると、過去5年間に発売された消化器系の健康を訴求する世界の食品・飲料・ヘルスケア新製品のうち、22%は免疫機能サポートも訴求しています。また、認知機能との関連性から健康志向の消費者の間でますます人気を集めている抗炎症のための食事など、他のホリスティックヘルストレンドにおいても新たなビジネスチャンスが期待できます。

ホリスティックヘルスのための食事では、社会課題の解決に注目したトレンドの成長もみられます。 環境に優しい食事は、「食品生産におけるサステナビリティや、「食事が人間・環境に与える影響への懸念」に対応しています。 ここ数年、プラントベースフードとプラネタリーヘルス(地球の健康)との関連性などへの注目が高まり、大きなテーマとなっています。 環境に優しい食事のトレンドは、単に肉や魚の消費量を減らすだけにとどまらず、より包括的なサステナビリティにも目を向けています。中でも、原材料の調達方法や製造方法はますます重要性を増しています。サステナビリティにおいて、 製品が国内で調達・製造されているかどうかは、ヨーロッパ各地の消費者にとって最も重要なポイントです。 加工食品にも精査の目は向けられており、イギリスでの調査では半数以上が「過去3か月間で、肉加工品に使われている肉の原産国を確認したことがある」と回答しています。 こうしたことから今、食品のサステナビリティに関する課題への革新的な解決策が求められています。

 

予防栄養学

進む高齢化と食事と健康への関心の高まりとが相まって、消費者の長期的な健康をサポートする食生活の取り入れが増加しています。ますます多くの消費者が「医食同源」(food as medicine)の考えに賛同し、疾患の予防における食事や栄養素の重要性に着目しています。 寿命を延ばす食事トレンドでは、食事が果たす疾病予防的役割を強調し、長寿をサポートするだけでなく、生活の質を高める食品や食生活の提案が注目されています。例として、アメリカのネスレが販売するLean Cuisine Balance Bowlや、オーストラリアのBe Fit Foodが販売するThai Green Chicken Curryなど、血糖値の管理に適した調理済み食品などが挙げられます。

 

ネスレのLean Cuisine Balance Bowlは、予防栄養学に関する消費者ニーズに応えた製品の1つ。

出典:ネスレ

 

健康寿命を延ばす食事のイノベーションでは、食欲抑制剤の開発を通じた体重管理や未加工食品の研究などもされており、加工度の低い食品への需要がさらに高まることが予想されています。 食物繊維やクロムなどを配合した食欲抑制に役立つ製品は、健康的な体重管理のトレンドにもなっています。また、食感が食欲抑制に役立つという新たな研究もあり、新製品開発における注目分野として期待されています。

 

健康寿命を延ばす食品・飲料についてはこちらの講演資料でも解説しています。

【アヌーガ・セレクト・ジャパン2024-ミンテル講演】

これからシニアを迎えるX世代向け製品開発
―健康寿命を伸ばすために食品・飲料メーカーが注目すべきことー

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ミンテルとともに未来を見据える

精神、身体、地球環境を含むホリスティックな食事は広がりを見せています。超加工食品の危険性に対する研究の進展と経済的負担の緩和により、消費者の間で環境やサステナビリティの重要性が高まることで、さらに成長することが予想されます。 健康的な食生活の市場をリードするブランドは同カテゴリーの明るい将来性を見据え、変化する消費者のニーズや懸念を念頭に置いた新製品開発を行っていく必要があるでしょう。