世界的な紛争や気候変動による大きな混乱が続く中、ジュース業界はさまざまな課題に直面しています。製品イノベーションの原動力となる新たなジューストレンドについて、皆様はご存じでしょうか? 生活費の逼迫や新型コロナウイルスの余波によりエネルギー・輸送コストが高騰する中、食品・飲料価格の急激な上昇やそれに伴う実質所得の減少などが、ジュース市場にも大きな打撃を与えています。 インフレにより同カテゴリーの価値が持ち直している一方、ミンテルはイギリスのジュース市場の販売数量が2023年に3%低下すると見込んでいます。さらには、環境への影響や人々の健康に対する懸念も、引き続きジュース業界の足かせとなっています。消費者が買い控えや支出の削減に取り組むと予想される中、「非必需品」カテゴリーであるジュース市場は、今後も家計の圧迫の影響を受け続けることになるでしょう。 しかし、悲観的なことばかりではありません。経済的圧迫を感じる消費者に「価値」を示し、サステナビリティや健康に対する懸念に応えることができれば、各ブランドにはイノベーションを刺激するチャンスが期待できます。 消費者の関心を惹きつけ、高い価格設定の妥当性を示す上で重要となる最新の消費者ニーズ、新たなジューストレンド、そしてイノベーションを、ミンテルが厳選いたしました。 ジュースのトレンド – 消費者は何を求めているのか? 価格上昇で苦境に立たされる消費者 2022年にイギリスを襲った夏の熱波、ブラジルの干ばつ、アメリカのハリケーンなど異常気象による果物・野菜の価格高騰により、ジュース1リットルあたりの平均価格が著しく上昇しています。イギリスの消費者の72%が、高騰する製造コストに対抗するためにフルーツジュースやジュース、スムージーへの出費を控えようと試みています。消費者の3分の1以上は、より安価な製品へと切り替えるようになっており、ジュース市場でプライベートブランドが数量シェアを拡大させている一因にもなっています。大手企業は、競争力を維持し価値提案を高めるため、プロモーションの提供やより大きめのサイズでコストパフォーマンスの高い製品を販売し始めています。この取り組みは確かに有用ではありますが、ブランドは消費者が安価な製品へ切り替えることに対抗し、賢明な消費を心掛ける消費者にもアピールできる多様な製品を提供する余地があります。 イギリスの消費者の10人に4人は、「フルーツジュースやスムージーブランドが製品に水を加えることを許容できる」と回答しています。これは、価格設定を下げるコスパの良い方法であると同時に、糖分含有量への懸念に対処するための方法でもあります。Waterbombの新シリーズWhat a Juice Lightは、製品のボトルパッケージで、砂糖を通常のジュースの半分に抑え、水の含有量を増やすことで1本あたりわずか150カロリーを実現しているとアピールしています。「価格に見合う価値」のイメージを高めるために、水を含有することで「水分補給に優れた製品」として位置づけることができます。また、使用する水をミネラルウォーターや電解質を含むものにすることで、さらに魅力を高めることができます。同カテゴリーのイノベーションに取り組むことで、消費者側の節約につながるだけでなく、水分補給や運動後などの場面においてジュースがより重要な役割を果たすようになるでしょう。 What a Juiceライト 出典: Waterbomb 味覚の変化:健康的なジュースのトレンドが拡大 肥満やその他の健康問題の蔓延を引き起こす砂糖の存在は、ジュース業界で消費者が新たな味の好みを形成する主な要因となっています。最近のミンテルレポート「年間レポート:ジュース・濃縮飲料 – 2023年」によると、フランスの成人の3分の1以上が甘さを抑えたジュースやスムージーに関心を寄せているほか、イギリスのジュースやスムージーを飲む消費者の半数以上が砂糖の摂取に配慮し、1日に飲む量を小さなグラス1杯に制限しています。一見すると、砂糖に関連するこれらのトレンドはジュース市場の成長を妨げているようにも見えますが、見方を変えると、ブランドがより体に良いレシピのイノベーションに取り組み、消費者の健康に関する懸念を和らげるチャンスであるともいえます。 低糖や甘さ控えめのフレーバーに注目することで、夜の飲用シーンで活躍の幅を広げることもできるでしょう。成人の3分の1が、「植物エキスやスパイスなど洗練されたフレーバーのフルーツジュース、ジュース、スムージーは、普通のフレーバーのものよりもアルコール代替品として優れている」と回答しています。健康志向の消費者にも嗜好性の高い製品を求める消費者にもアピールできる魅力的かつ革新的なフレーバーを開発することで、節酒志向の高まりを活用し、従来のアルコール飲料に代わるユニークな製品を提供することができます。 砂糖不使用の訴求以外を見ると、ジュース市場では2020年から2023年にかけて免疫訴求が機能性製品の新発売において大半を占めました。これはコロナ渦で「免疫」が人々の注目の的となったためです。Sainsbury’sは、健康を意識した同社のFlourishシリーズに、Flourish Orange Carrot Passionfruit & Ginger Immune Smoothieを追加しています。同スムージーはビタミンB、C、Dが配合されているほか、免疫強化サポートがボトルの前面で強調されています。 Sainsbury’s Immuneスムージー 出典:Sainsbury’s アメリカでは、健康を意識したジュースのトレンドも高まっています。ミンテルのアメリカレポート「US Juice and Juice Drinks Market Report 2023」では、ジュース・スムージーを飲むアメリカの消費者の40%が、ビタミン摂取量を増やす手段として1年前よりもジュースを多く飲んでいることが明らかになっています。健康的な食生活に対する関心の高まりや、より栄養価の高い飲料を日常生活に取り入れようとする意向の強まりは、ブランドにとって大きなビジネスチャンスになるでしょう。 サステナビリティがジュースの消費に与える影響 サステナビリティは、もはや単なるトレンドではありません。私たちは今まさに、異常気象やエネルギー・食料価格の高騰といった厳しい現実に直面しています。消費者は、自身の行動が環境にどのような影響を与えるかをより意識するようになり、企業が環境に配慮した製品を提供することを期待しています。 気候変動やサステナビリティへの懸念が高まる中、ジュースを飲むイギリスの消費者の10人に4人が、トロピカルな原材料を使用したジュースのフードマイレージ(食料の輸送に伴う環境負荷)に懸念を抱いています。生活費の逼迫が和らぎ、再びサステナビリティを優先する余裕ができれば、消費者の懸念はさらに悪化していくとミンテルは予想しています。地元で栽培された果物を活用すれば、フードマイレージに対する懸念を払拭することができるでしょう。ジュース市場で展開するブランドは、地元産の原材料を取り入れたレシピを試すことでイノベーションを実現することができます。また、フードマイレージの低さとサステナビリティとの関連性を強調することで、倫理的な信頼性を高め、環境意識の高い消費者の注目を集めることができます。地元産の魅力を高めるために、ブランドはこうしたストーリー性を活用しながらイギリスの農家を支援し、消費者の心を掴むことができます。「人間らしい側面」を提供するだけでなく、信頼感を増し、品質の高さを納得させることができるでしょう。 地元産の原材料は、ジュース業界の存続を支える。 ミンテルの調査によると、アメリカの消費者の3分の1が、フードマイレージだけでなく、サステナブルなパッケージを使用していないジュースブランドにも懸念を抱いていることが明らかになっています。消費者の多くが環境に優しいパッケージの重要性を認識する中、ブランドにはそうしたパッケージを標準的なものとして提供することがますます求められています。過去5年間、イギリスのジュース市場では環境に優しい訴求を掲げる新製品が急増しています。このような訴求は確かに増加しているもののすでに飽和状態で、数多くの新製品の中で際立たせる効果はありません。一方、一部のブランドは、よりクリエイティブな方法で環境への優しさをアピールしています。例えば、Don Simonはジュースのパッケージをリニューアルし、「廃棄物ゼロ、汚染排出ゼロ、水消費ゼロ」の「トリプル・ゼロ」目標を強調しています。この取り組みでは、大胆な発想と透明性が消費者との信頼関係の構築に一役買い、結果的に製品の利用と消費が増加することとなりました。 ミンテルとともに、今後のジューストレンドに備える 近年の世界的な紛争や気候変動が、消費者の健康やお財布事情にどのような影響を与えているかを把握することは、ジュースブランドにとって非常に重要です。ジュースブランドは今後、経済的負担を強いられる消費者に自社製品の価値を提案し、ナチュラルで健康的な製品を求めるニーズの高まりに応えながら、サステナビリティにおいてもより責任を果たしていくために、さらなる努力が必要になるでしょう。 貴社のビジネスは、進化を続けるジュース消費者の考え方や好みに対し、迅速に対応されているでしょうか?ミンテル独自の市場調査や消費者調査をご活用いただくことで、ジュース市場の最新動向や新製品の発売に合わせた戦略を策定することができます。 ミンテルのジュース市場に関する調査はこちら(レポート言語:英語)。 日本語のレポートをご希望の方はお気軽にミンテルジャパンまでお問い合わせください。 【消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート】 株式会社ミンテル ジャパン(https://japan.mintel.com) ミンテルは、消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパートです。英国に本社を置く世界最大規模のマーケットインテリジェンスカンパニーとして、世界と国内の市場に関する独自の視点から消費者/市場/新商品/競合他社の分析を行い、市場の将来的な展望についての情報を多角的に提供しています。1972年の会社設立以降、クライアントのより迅速な経営決断を可能にする予測分析と専門家のレコメンデーションを提供。ミンテルの使命は、ビジネスと人々の成長をサポートすることです。 〒100-6318 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 丸の内ビルディング18階 Tel: (03) 6228-6595 Email: infojapan@mintel.com