2023年10月、International Flavours and Fragrance（IFF）、DSM-Firmenich、および中国の乳製品メーカーMengniuが、中国で発売する乳児用調製乳にヒトミルクオリゴ糖（HMO）成分を使用する承認を取得しました。ヒトミルクオリゴ糖（HMO）は母乳に含まれる固形成分の中で3番目に多く、免疫系を調節するとともに有益な腸内細菌の増殖をサポートすることで、乳幼児の発育と健康に大きなメリットをもたらします。 現在の中国の規制下では、乳児用調整乳、フォローアップミルク、医療用の特殊ミルク、子供向けの粉ミルクなど、さまざまな乳製品でHMOの使用が認められています。これまで遺伝子組換え微生物を用いた発酵処理によって生産されていたHMOは、現在ますます中国の親の間で人気を博しているため、この規制の進展は特に注目すべきです。ミンテルの調査によると、0-3歳の乳幼児に乳児用調整乳を与えている中国の親の45%が、より多くHMOを配合した調整乳に魅力を感じています。 中国における乳児用調整乳の新製品開発はここ数年で減少しており、ミンテルGNPDによると2019年10月から2020年9月にかけては29%だった割合が、2022年10月から2023年9月には14%まで低下しています。HMOを活用して乳児用調整乳を母乳の栄養成分に近づけることで、同カテゴリーの活性化が期待されています。 HMOで調整乳と母乳のギャップを埋める 母乳育児にはさまざまなメリットが認められていますが、母親にとっては大きな障壁があります。例えば、中国の少なくとも10都市では公共スペースに授乳室がないことが報告されており、働く女性が母乳育児を続けることが困難な状況となっています。 HMOを配合した乳児用調整乳は母乳の代替品として使用しやすく、乳幼児が手軽に必須栄養素を摂取できるようにします。ミンテルの調査によると、0-3歳の子供を持つ中国人の親の半数以上が「母乳に似た成分を配合した調整乳は母乳育児の代わりになる」と回答しています。 また、2022年には4-12歳の子どもを持つ親が最も懸念する健康問題として、免疫系や消化管の問題が挙げられていることから、こうした問題を予防するHMOの腸免疫軸も、HMOの魅力をさらに高めるでしょう。 親への教育とエンゲージメント 0-3歳の乳幼児に乳児用調整乳を与えた中国の消費者の3分の1以上は、HMOについて聞いたことはあるものの、その機能性についてはあまり認識していません。乳児用調整乳メーカーのEnfamilは、HMO成分の免疫サポート機能をパッケージの前面に記載することで、消費者がその健康効果を認識できるようアピールしています。さらに、同メーカーはウェブサイトでも免疫系の健康をサポートする独自の配合について説明しています。 Enfamil Neuro Pro（カナダ） 出典：Mintel GNPD 工業規模でHMOを生産するためには精密発酵が必要とされます。そのため、成分そのものは遺伝子組換えでなくとも、使用する微生物から遺伝子組換え成分が残る可能性があります。ブランドは調整乳の機能的効果をアピールするだけでなく、科学技術を使って栄養価を改善することの安全性やメリットについても、消費者を教育していく必要があるでしょう。 例えばNutifood Grow Plus+は、スウェーデンを拠点とするNutifood Nutrition Research Instituteの研究と、ベトナムの子どもの健康な発育に必要な栄養素に関する同社の栄養士の知見を組み合わせて紹介しています。 Nutifood Grow Plus+（ベトナム） 出典：Mintel GNPD 多くの親は、DHA／ARA、プレバイオティクス、プロバイオティクスなどの栄養素を配合した乳児用調整乳を求めています。しかし、ミンテルの調査によると、中国の親の52%が「乳児用調整乳に記載されている栄養表示は分かりにくい」と回答しています。したがって、特定の栄養素が子どもにもたらす具体的な健康効果を明確に伝えることがブランドには求められています。 ミンテルの見解 中国でHMOの使用が承認されたことは、乳児用調整乳カテゴリーにとって重要な転機だと言えます。調整乳と母乳との栄養価のギャップを埋めるHMOは、母乳育児に困難を抱える母親に実用的なソリューションを提供することができます。HMOの安全性やメリットについて消費者を教育していくことで、乳児用調整乳の市場も回復を遂げ、中国の未来ある子どもたちの最適な健康を実現できるでしょう。 ミンテルの食品・飲料市場調査では、消費者、製品、成分などの最新トレンドをお届けしています。ベビーフードや乳児用調整乳(英語サイト)に関してより詳細なインサイトをお求めの方は、ミンテルストア（英語サイト）をご覧ください。
