消費者の好みの変化が、食品・飲料業界における成分イノベーションに大きな変革をもたらしています。

新型コロナ流行の煽りを受け、健康に対する予防的なアプローチや気候変動への懸念に対処することへの重要性がますます意識されるようになり、食品業界における成分も多様化しています。こうした変化に富んだ状況を切り抜けるために、食品・飲料業界も食品製造に革命をもたらすような新技術を模索しています。ここでは、消費者の需要を捉える成分を深く掘り下げるとともに、食品・飲料の未来を形作る、急成長中の成分トレンドをいくつかご紹介していきます。

 

健康への予防的アプローチが食品成分のトレンドに影響を与える

世界全体で、健康に対する予防的なアプローチへのシフトがますます顕著になっています。新型コロナの流行は消費者の意識を大きく変化させただけでなく、消費者行動にも引き続き影響を与えており、健康を維持することへの重要性がますます意識されるようになっています。高齢化する社会構造とも相まって、健康やウェルビーイングを維持するための積極的な取り組みを人々は余儀なくされています。食品・飲料に対して健康やウェルビーイング関連の信頼性を求める消費者はますます増えており、こうした進化する需要に応える成分の開発や、メーカー/ブランド間での競争がより活発になっています。人々は食品を、生活の質に対し長期的に投資するための糸口だと捉えています。

東南アジアでは伝統的な食品成分のトレンドが復活しており、「食を薬とする(food-as-medicine)」アプローチも再認識されています。古くからの伝統を継承したこのコンセプトは今、現代の消費者からますます注目を集めるようになっています。現在、タイでは免疫系を強化するために健康的な食事を重視するトレンドが最も勢いを増しており、タイの消費者の5分の3が、新鮮なフルーツや亜鉛が豊富な食品など、免疫系の強化に効果のある食品を積極的に食事に取り入れています。免疫系の健康を重視するこうした動きはフィリピンでも見られ、45歳以上の消費者の80%以上が免疫系の強化に役立つ食品を求めています。

ミンテルの「Thai Herbal Ingredient」調査レポートによると、天然成分やオーガニック成分、特にショウガ、ターメリック、高麗人参などのタイで伝統的に使われてきたハーブ成分は、「純度が高く健康的で安全だ」という認識から特に高く評価されています。このトレンドを活用したブランドの一つが、ビタミンC、E、Aを配合したジンジャーハーブRTD飲料を発売するHOTTA Coolです。同製品は、消費者の購買要因を把握したブランドが成功できるかを示す好事例です。HOTTA Coolは健康を意識したブランドの一つとして、同製品の主成分であるショウガの免疫系の強化作用や消化機能の改善効果をアピールしています。

HOTTA Coolは免疫強化成分を強調。出典:HOTTA Cool

 

「食を薬とする」アプローチが世界に広まる

「食を薬とする(food-as-medicine)」考え方は欧米諸国にも広がっています。欧米では食品とヘルスケアとの接点がますます拡大しており、年齢やライフスタイルに伴う健康問題を自主的に管理する手段として、食事が活用されています。こうした健康に対する関心の高さはイギリスにおいて特に顕著で、10人に7人のミレニアル世代が加齢とともに衰える健康に懸念を抱いているほか、ドイツでは60%が今後5年間に健康が悪化することを懸念しています

2型糖尿病や肥満をはじめとする食事関連の疾患の増加も、こうした警戒心を煽る原因となっています。多くの場合、代謝機能が低下すると体重が増加し、様々な慢性疾患のリスクを高めることが知られています。ブランドは「砂糖不使用」や「無糖」の製品を提供することでこうした懸念に対応しながら、ケトジェニックなどのトレンドになっている食事ニーズに寄り添うことで、消費者が代謝機能の健康を管理できるようサポートしています。

 

 

また、健康的な血糖値のコントロールに役立つ製品も登場しており、こうした製品ではグリーンバナナパウダー、食物繊維、クロムなどの成分が活用されています。こうした革新的な食品成分カテゴリーで活躍するブランドの例が、アメリカを拠点とするSupergutsです。同社が開発したプレバイオティクスバーにはグリーンバナナを含むレジスタントスターチ混合物が配合されており、食品成分のイノベーションが代謝機能の健康への懸念に対処する上でいかに役立つかを示す良い例となっています。Supergutsは、代謝機能の健康を改善したい人々をサポートする食事・ライフスタイルのソリューション企業として自社の魅力をアピールしています。

 

ラベル表示の威力

より健康的な栄養素を提供する成分は、世界各国の政府機関による後押しもあり、今後も成長を続けると予想されます。多くの国ではより厳しい政策が導入され始めており、食品・飲料業界が消費者の健康増進に部分的な責任を負うようになっています。そのような中、砂糖、塩、飽和脂肪酸、カロリーなどの低減は引き続き重要なポイントです。これは、砂糖税やHFSS(高脂肪・高塩分・高糖分)食品の制限といった取り組みや、ヨーロッパのニュートリスコア(Nutri-Score)、イギリスのトラフィックライト(交通信号)ラベルをはじめとするパッケージのラベル表示システムなどにも反映されています。フランス、ドイツ、ポーランド、スペインの消費者の30%以上が「栄養評価システムは、その製品がどの程度健康的であるかを判断する上で最も良い手段」だと回答しています。このような透明性により、消費者は栄養成分や食品の品質について、より情報に基づいた選択をすることが可能になります。より健康的な栄養素を備えた製品へのニーズは食品成分のイノベーションをさらに推進し、こうした製品開発の実現を後押しすることでしょう。

 

成分の多様化で、人と地球の健康をサポート

世界の食糧システムはこれまで大きな発展を遂げてきましたが、その対価とは一体どのようなものでしょうか?過去100年を振り返ってみると、食品製造業の工業化が進み、食品を低コストで製造できるようになったことで、増え続ける人口の需要に応えてきました。一方、環境への負担という負の側面も存在しています。資源消費型の農業慣行は環境に害をもたらしており、動物性製品や米、小麦、トウモロコシといったごく一部の作物に対する過度な依存により、食糧供給・生産システムは気候変動に対し脆弱になっています。

サステナビリティは、世界中の多くの消費者にとって最大の懸念事項となっています。ミンテルの「The Future of Ingredients」調査レポートによると、カナダで10人に4人、アメリカで3人に1人以上の消費者が「サステナビリティの向上に最も責任があるのは企業」だと回答しています。サステナブルな未来を願う意識の高まりを受け、食品・飲料業界は、成分の多様化やサステナブルな成分調達への取り組みを積極的に推進することで、業界の長期的な存続可能性を確保しながら、環境への負荷を最小限に抑えようとしています。

したがって、資源を大量に消費する動物性食品から、よりサステナブルな製品へと移行するための成分開発が急務となっています。こうした中でも植物性タンパク質はその道を切り拓いており、ミンテル世界新商品タベス(GNPD:Global New Products Database、以降ミンテルGNPDによると世界の新製品の3%以上がプラントベース訴求を掲げています。

植物性タンパク質以外でも、世界の消費者は代替成分を積極的に取り入れ、よりサステナブルな食事を心がけています。ドイツの消費者の半数近くは「珍しい」サステナブルな成分を使った食品を試してみたいと回答しています。一方、ブランドは幅広い消費者の好みに寄り添い、気候変動に耐性のある作物へと多様化を進めています。シンガポールのWhatIF Foodsが発売したMoringa Noodlesはその一例です。同製品は再生可能な作物で土壌の健康を回復させるだけでなく干ばつにも耐性があるバンバラマメから作られている、気候変動への備えに役立つとWhatIFは強調しています。

 

WhatIF Foodsは気候変動に耐性のある成分の最先端をリード。出典:WhatIF Foods

 

ミンテルの成分市場調査を詳しく見る

 

サステナブルで美味しい成分

「サステナビリティ」と「健康」の2つの魅力で注目を集めるプラントベース業界は2018年に急激な成長を遂げ、現在も緩やかながら成長を続けている一方で、特に味、価格、ナチュラルさといった点で消費者の期待に沿えない製品が多いことから、その人気の高まりはやや落ち着きを見せています。

サステナビリティは重要な要素ではあるものの、それだけでは消費者の食生活を変えるには不十分であるため、味の美味しさも確保する必要があります。ドイツの消費者では3分の1フランスの消費者では4分の1が「通常の肉と同等の味や食感を持つ製品は、他の代替肉よりも購入したいと思う」と回答しています。テクノロジーや成分を活用し、代替タンパク質で魅力的な食感を提供している企業の一つに、オーストリアのブランドRevoがあります。同ブランドは3Dプリンターを活用したヴィーガン代替サーモンの開発を発表しており、通常のサーモンと同じような身のほぐれ方やジューシーな食感の実現を目指しています。

 

 

インフレ下でもサステナブルな成分を優先できるようサポート

サステナブルな生活に対する意識が高まってはいるものの、インフレは依然として障壁となっています。インフレの煽りを受け、欧米やアジア諸国の消費者はサステナブルな製品への関心を持たなくなったり、そうした製品にわざわざ高い金額を費やすことはできないと感じています。イギリスの消費者の10人に6人は「生活費の高騰により、食品のサステナビリティは自分にとって重要性が低くなっている」と回答しており、タイの消費者の半数以上は気候変動よりも価格の上昇を懸念しています(リンクは同レポートにアクセスできるミンテルのお客様のみ閲覧可能)。インフレが長引き、食品のサステナビリティを重視することができない消費者がますます増える中、ブランドは一歩踏み込むことで、環境への配慮に対する信頼性を高めることができます。サステナブルな選択をすることに「価値」を与え、サステナブルな製品をより身近で魅力的なものにすることで、消費者は金銭的な負担を強いられることなく、環境にやさしい意思決定を進んで受け入れることができるでしょう。

 

テクノロジーはいかに革新的な食品成分を変革させるのか

ミンテルは、斬新なテクノロジーがサステナブルな成分のイノベーションにおいて重要な役割を果たすと考えています。実際、人工知能(AI)はすでに新たな成分の発見に活用されており、生理活性物質(バイオアクティブ)を開発するBrightseedは、AIを活用することでより素早く健康に役立つ重要な成分を発見しています。同社は独自のAIプラットフォームとバイオサイエンスの専門知識を組み合わせることで、健康的な腸内微生物叢をサポートするヘンプ由来の繊維質を開発しています。ドイツの消費者の10人に6人は、健康全般において腸内微生物叢が果たす役割の重要性を認識していることから、この飛躍的な発明はドイツの消費者のニーズとも合致しています。

生物学的栄養強化テクノロジーも、革新的な食品成分の開発を後押しすると考えられています。このテクノロジーでは、精密育種や豊富な肥料などにより、作物にプラスの栄養素を配合することが可能となります。これは、特に「ヘルシーエイジングトレンド」の一環で、機能性食品に対する消費者の関心が高まっていることとも合致しています。イギリスの消費者の約5人に4人は「必要なビタミン・ミネラルを摂ることがヘルシーエイジングにおいて重要」だと回答しています。また、プラントベースの食事に対する人気が高まるにつれ、動物性食品に主に含まれるビタミンB12の不足を懸念する声も高まっています。これを受け、イギリスのJohn Innes Centre、LettUs Grow、Quadram Instituteによる研究チームは、生物学的栄養強化テクノロジーを活用したソリューションを開発しています。この研究では、1日あたりのビタミンB12推奨摂取量(牛肉2人前相当)を1食分で補うことができる、ビタミンB12強化エンドウ豆の新芽の生産が実現しました。こうした例では、テクノロジーの活用により、栄養価の高い革新的な食品成分を開発できる可能性が示されています。

 

ミンテルは、お客様がトレンドの食品成分を瞬時に特定できるようサポートします

どうすれば各地域において急成長中の成分を見つけることができるでしょうか?
どの成分が自社の顧客にとって魅力的なのかを、どのように判断すればよいかお悩みですか?
自社の定番製品に新たな刺激を与える斬新な成分の特定にご関心がありますか?

ミンテルがお届けする最新のツールIngredientscape AI原料AI分析ル)では、そうした期待に全てお応えいたします。Ingredientscape AIは、お客様が必要とするカテゴリーや市場における成分の成長・普及率を解き明かす究極のソリューションです。

10年以上にわたるミンテルGNPDのデータを活用した革新的なこのツールでは、世界の裏側で発売された製品であっても、AIテクノロジーを活用することで、あらゆるカテゴリーや市場における食品・飲料成分のトレンドを瞬時に把握するインサイトをお届けします。ビジュアル、成分、処方、訴求、価格など、新製品に関する詳細なインサイトをぜひご活用ください。

ショウガエキスを例に挙げると、Ingredientscape AIを活用することで、特定の市場やカテゴリーにおけるショウガエキスの成長の勢い、普及率などの概況を瞬時に把握することができます。また、同じ成分を活用する競合他社についても分析し、お客様がこれまでGNPDの検索に費やされていた時間を大幅に短縮することができます。

Ingredientscape AIでは膨大な量の複雑なデータが分かりやすいフォーマットで可視化できるため、お客様のステークホルダーとの共有も容易です。Ingredientscape AIは、成分の未来を皆様の手元まで迅速にお届けします。

  1. Ingredientscape AIを使用することで、特定のカテゴリーや市場で使用される成分の概要を瞬時に把握し、成分の成長や普及率を迅速に評価することができます。
  2. AIを搭載したツールで35,000種類以上の成分を瞬時に評価し、お客様のカテゴリーや市場で知っておくべきことを把握することで商機を特定します。
  3. トレンドを可視化し、成分を分類し、市場活動をレビュー・比較することで、競合他社の製品を深く掘り下げます。

 

お問合せはこちらから:https://japan.mintel.com/ingredientscape-ai