東南アジアにおけるビューティ・パーソナルケア市場を背景に、ミンテルの2024年グローバル消費者トレンド「New Green Reality(環境問題の新たな局面)」を紐解きます。

 

東南アジア市場では、ビューティー&パーソナルケア業界も、サステナビリティ(環境保全)の潮流に乗りつつあります。例えば、2018年10月から2023年9月の5年間に販売された新商品を見ると、倫理・環境に関して訴求している製品数が66%増加しました。しかし、環境に配慮したビューティ/グルーミング製品を購入する際の障壁として、高い価格や信頼性への懸念が挙げられています。 「グリーン」を掲げるビューティ製品が存在感を強める中、ブランドは自らのサステナビリティへの意識取り組みの意義を消費者に伝える機会を手にしているのです

本質的に、美容業界における「消費」製品の使用」に他なりません。 消費者の安心感を高めることが求められる今、ビューティパーソナルケアブランドは、どのように消費の促進と、サステナブルであることを両立すればよいのでしょうか?

1つは、サステナビリティに向けたガイドラインやルール、目標をつくり、多くの人に使いやすいプラットフォーム上で、これらの取り組みを適切に伝えていくことです。

例えば、アメリカのビューティブランドREN Skincareは2018年に「Zero Waste Pledge」を開始し、2021年末までにリサイクル可能なパッケージ、リサイクル素材を使用したパッケージ、再利用できるパッケージのみを製造するという目標を掲げました。 2022年には、その公約を達成したことを発表しています。同ブランドの最新情報や取り組みは、Clean Thoughtsブログにも掲載されています。

消費者からグリーンウォッシュ(環境問題を利用した偽善行為)だとみなされるのを避けるために、ビューティブランドは外部専門機関による評価や監査に積極的な姿勢を示し、企業の説明責任やトレーサビリティ(製造の過程の追跡)を追求していく必要があるでしょう。 ビューティパーソナルケアブランドは既存の製品や生産チェーンを見直し、サステナビリティに関して優れている点、改善しなければならない点を把握しなければいけません。

コストも重要なポイントです。 ブランドは単に価格を下げるのではなく、サステナブルな製品をできる限り選択することの意義や、その選択が気候危機に与えるインパクトなどを伝えていくことができます。

新型コロナウイルスの流行や世界的な紛争により、海外からの資源調達はより高コストになり、サステナブルな製品であるかどうかにかかわらず製品のコストも上昇しています。 こうした課題に対処するため、ビューティブランドは地域で製造された成分やパッケージを活用することで、調達コストを削減しながら地域のビジネスをサポートすることができます。 国内ビューティブランドがすでに強い存在感やアイデンティティを確立している東南アジア地域のビューティーブランドにとって、このアプローチは特に有効でしょう。

また、ブランドは地域コミュニティをサポートすることで消費者の信頼感を高めることもできます。 フィリピンでは、Blk Cosmetics が「あらゆる人向けの誰でも」使えるUniversalシリーズを新発売し、様々な肌の色やタイプに合わせたカラー展開を提供しています。BlKのキャンペーンは、男女ともに参加できる包括性もポイントとなっています。

Blk Cosmeticsの「Universal」キャンペーン;出典:Instagram

 

ラベルのデザインを使ってより多くの情報を分かりやすく提供することもできます。 スペインでは、Fairy Max Poder Refillがパッケージ前面に「プラスチック85%削減」と大きく記載しているほか、「RECARGA」(詰め替え可能)の目を引くバナーも特徴的です。

 

Fairy Maxi Poder Dishwashing Liquid Refill(スペイン);出典:Mintel GNPD

 

東南アジアの消費者の大半がスマートフォンでSNSを利用していることから、デジタルプラットフォームで製品の処方や成分変更を伝えることが効果的と言えるでしょう 中国では、SNSプラットフォーム「小紅書(RED)」とスキンケアブランドYoseidoが共同し、Yoseido製品の主要成分である白樺樹液の収穫から処理、ブレンドまでの生産プロセスを紹介する動画を公開しています。

 

Yoseidoと小紅書(RED)がコラボし、白樺樹液の調達を紹介:出典:小紅書/Yoseido

 

サステナブルな製品とは何かを具体的に消費者に伝える一つの方法は、革新的かつサステナブルな成分を強調することです。

アジア最大の製糖・バイオエネルギーメーカーMitr Pholは、サトウキビから作られた2種類のスキンケア製品を発売しました。この開発はサトウキビをサステナブルな製品としています。サトウキビがスキンケア成分として活かされると同時にサトウキビ廃棄物の削減にもつながっているからです。

長期的に、サステナブルな事業運営に向けた研究や取り組みを伝えていくことが、ブランドと消費者との信頼関係を築く上で重要となるでしょう。

 

ミンテルの見解

ビューティブランドは、信頼のおける啓発・情報源として消費者を導き、その過程でブランドロイヤルティを高めることができます。 気候危機を放置することによるコストについて消費者に伝え、キャンペーンや製品を現地のニーズに合わせることで、市場理解に対する取り組みをアピールできるでしょう。

現地調達の成分やパッケージを活用することで、調達コストを削減できるだけでなく、地域のビジネスをサポートすることもできます。 さらに、ブランドは明確なガイドラインを定め、透明性を担保し、デジタルプラットフォームを活用してエンゲージメントを高めることで消費者の信頼を得ることができます。 ビューティブランドは、こうした取り組みを通じて美容製品の消費と廃棄物削減を両立させ、より多くの消費者がサステナビリティへの第一歩を踏み出すきっかけを与えることができるでしょう。

ミンテルのオンラインストア(英語サイトへ遷移)では、ビューティ・パーソナルケアに関する最新のサステナビリティトレンドレポートをご覧いただけます。このトピックについてさらに詳細をご希望の方は、ぜひミンテルジャパンまでお問い合わせください。