比較的インフレの影響が少なかった塩味スナック菓子市場ですが、消費者の購買行動には変化が起きています。貴社ブランドは変化する消費者の期待に応えられる準備ができているでしょうか？ 間食はどこの地域、どの世代でもほぼ一般的な習慣です。ミンテルの調査によると、イギリス、ドイツ、アメリカでは80%以上の消費者に間食の習慣があります。塩味スナック菓子市場では、幅広い品揃えと比較的手頃な価格によってプラス成長を遂げています。しかし、インフレが購買行動に影響を及ぼしたことで、消費者は低価格のものだけでなく、価値を感じる商品を求めるようになってきています。 この新しい経済状況の中、消費者は間食に健康的で身体に良い（Better For YouーBFY ）商品や革新的なフレーバーの選択肢を求めています。また、経済不安によるストレスは、リラックスや自分へのご褒美といった感情的な理由で間食する傾向も強めています。 本記事では塩味スナック菓子市場の将来を形作る新たなトレンドを探ります。今の消費者のニーズを満たすためのイノベーション、価値のある間食体験をどのように提供できるのかを見ていきます。 知っておくべき4つの塩味スナック菓子のトレンド 予算内での間食 世界中の多くの産業がそうであるように、塩味スナック菓子市場もインフレや世界的な紛争、気候変動など、様々な危機の影響を受けています。メーカーは輸送コストの高騰により値上げを余儀なくされ、消費者にコスト転嫁せざるを得なくなっています。これにより、塩味スナック菓子メーカーは、価格で価値を示すことが難しくなっています。これは、ドイツ人の45%が、塩味のスナック菓子は買い物かごに入れる優先順位が低いと考えているというデータからも見て取れます。このカテゴリーにおける節約志向が高まり、マルチパックや、特売品、プライベートブランド商品の購入、ディスカウント店での購入が増加しています。また、イギリスでは間食する人々の半数以上が、インフレにより間食の回数を減らしています。しかし、塩味スナック菓子は、消費者の厳しい家計状況からくるニーズにおいてチャンスもあります。多くがレジャーを制限する中、塩味スナック菓子を外食しない夜に楽しむ間食として位置づけることで、需要を喚起することができるからです。 塩味スナック菓子が家庭の定番であり続けるためには、消費者の行動に順応していく必要があります。ひとつの例として挙げられるのは、規格外野菜を使ったスナックです。これは製造者の経費削減に役立つだけでなく、無駄を省き、低価格での提供にも繋げることができます。さらに、果物や野菜の推奨摂取量を満たすのに役立つナッツ類やフルーツチップスのように、スナック菓子が単なるジャンクフードではなく、栄養を摂取できるものという認識を持たせることもできます。 ミンテルのスナック市場調査を見る ヘルシースナック市場の台頭 新型コロナのパンデミックは消費者の行動に継続的な影響を及ぼし、多くの人が健康と栄養を意識するようになりました。そのため、天然由来成分配合、低糖質、食物繊維豊富など、健康を促進するスナックの需要が高まっています。身体に良い（Better For You－BFY）の訴求は、ドイツのBMEL（ドイツ連邦食糧農業省）やイギリスのHFSS法（高脂肪、高糖分、高塩分の製品における販売促進の制限）のような、より健康的な食生活とライフスタイルの選択を促進する政府のイニシアティブに支えられ、塩味スナック菓子市場におけるイノベーションの方向性を示しています。 栄養価の高い食品を求める消費者の動向は、ヨーロッパにおけるニュートリスコアやトラフィックライトラベルシステムの成功からも明らかです。これらのシステムは、消費者のヘルシースナックを探す労力を軽減し、商品情報を把握した上での購入を促すことで、メリットをもたらします。ドイツの5人に2人が栄養スコアの低い食品を避け、イギリスの成人の10人に6人が、トラフィックライトラベルは健康さの良い指標だと考えています。塩味スナック菓子に栄養スコアやトラフィックライトラベルを貼付することは、生産者が製品の栄養情報における透明性をアピールし、肥満やその他の慢性疾患を減らし、より健康的な食品環境を促進するチャンスになります。 ミンテルのレポートによると、北米でも健康スナックの需要が高まっており、アメリカの消費者の3分の1が「機能的効果のあるスナックは価格に見合う価値がある」と回答しています。このことからも、健康的なご褒美おやつの分野で継続的な商品開発が必要であることがわかります。好例はToodalooの、Turning Heads Adaptogenic Trail Mixです。同商品は、ハイビスカスやホワイトローズなどの機能性成分を配合し、肌の健康をサポートすると言われています。Toodalooでは最近、ホリスティック（包括的）な健康バランスを訴求した機能性スナックミックスも発売しており、同商品にはストレスに対応する効果があると報告されている、アダプトゲンというキノコが含まれています。Toodalooはヘルシースナック市場をリードしており、企業がいかに健康志向のトレンドを活用し、消費者ニーズを満たすための製品イノベーションを起こせるかを実証しています。 塩味スナック菓子のフレーバーフュージョン時代 フレーバーや嗜好性、原材料の多様化は、特にアジアの市場においてこれからの塩味スナック菓子に重要な要素です。ミンテルの調査によると、中国では間食する人々の4分の3がエキゾチックな風味のスナックを試してみたいと答えており、新しい味を発見することがスナックを楽しむために大切であることが明らかになりました。消費者の冒険的な味覚のニーズを捉えたメーカーの1つに、香港のPop!があります。抹茶ラテ&ココナッツオイルシーソルト味のグルメポップコーンは、日本産の抹茶を含む最高品質の原料を使用しています。 おやつの時間をターゲットとする塩味スナック菓子メーカーブランドにとって、フレーバーイノベーションは依然として不可欠です。イギリスではスナックを利用する人の3分の1がおやつとしてスナックを選ぶ際に刺激的なフレーバーを求めています。既存の消費者を満足させるためには、馴染みのフレーバーを維持しつつ、より目新しいバリエーションをラインナップに加える必要があります。しかし、どうすれば新しいフレーバーの商品に注目を集められるのでしょうか？パッケージはフレーバーを効果的に伝える必要があり、メディアを利用したATLプロモーションと店内でのマーケティングの両方に注力すべきでしょう。新しいフレーバーをスナック売り場で告知することで、購入という重要な場面で最も注目されるようにします。 このカテゴリーでは、期間・季節限定フレーバーが定着していますが、これは消費者の新しさへの関心を高め、ワクワク感をもたらすための重要な手段であり続けています。アメリカの塩味スナック菓子は、季節商品で料理に使用されるフレーバーを使用しています。Southern Recipeから発売されたSmall Batch Pork Rindsには、アップルシナモン味とクランベリーハラペーニョ味があり、ポークラインズ（豚の皮を油で揚げたスナック菓子）本来の塩味に甘い風味を組み合わせています。この甘じょっぱい組み合わせは、伝統的な季節商品に新鮮なひねりを加え、新たな楽しみ方をアピールするでしょう。 Southern Recipeから発売された甘じょっぱいフレーバーは、塩味スナック菓子市場のフレーバー・イノベーションを牽引しています。出典：Southern Recipe。 心に響く塩味スナック菓子 間食はもはや、空腹を満たすためのものではありません。役割の1つは、一日を通して感情的な欲求を満たすことです。実際、ミンテルの調査によると、アメリカでは10人中7人が、リラックスのためにおやつを食べ、イギリスの10人に4人はご褒美のために食べるということが明らかになっています。感情的な欲求を満たすことができるという魅力はミレニアル世代でさらに強く、5人に2人が、「ストレスや退屈さを解消するために間食する」と回答しています。スナックとは何か、消費者にとって間食とは何かを再考することは、商品のメッセージと開発の両面でのチャンスに繋がります。スナック菓子は様々な場面での利用に対応する必要があるでしょう。例えば、リラックスして楽しむためのものとしての位置付けや、遊び心のあるもの、子供の頃の懐かしいノスタルジックな味にインスパイアされた商品なども良い例です。人々が間食する感情的な理由を理解することで、消費者にとってより有意義で価値のある間食体験を提供することができます。 塩味スナック菓子の未来にどう備えるか？ 将来を見据えた供給の変化 塩味スナック菓子メーカーは、気候変動が農業に与える影響を緩和するための解決策を検討する必要があります。これは、オーストラリアのじゃがいも不足に見られるように、サプライチェーンに影響を与える可能性があるからです。原料の安定供給のためには、新たな生産方法や異常気象に強い作物を発見するための投資が必要です。 デジタル体験の創造 デジタル空間が拡大し続ける中、メーカーはますますメタバースを活用し、革新的な方法で消費者と関わるようになってきています。物理的な世界とデジタルの世界の両方の要素を組み合わせることでより多くの人々にリーチし、より大きなエンゲージメントを促進する没入型の体験を作り出すことができます。 世界的なインフレにもかかわらず、塩味スナック菓子市場は依然として家庭の定番です。時代の先端を走り続けるためには消費者ニーズの変化に素早く対応し、イノベーションを起こす必要があります。これには、より健康的なスナックの選択肢を提供すること、新しいフレーバーを取り入れること、感情的なニーズを満たす方法としてスナックを位置づけることなどが含まれます。 ミンテル独自の市場調査や消費者調査をご活用いただくと、世界の塩味スナック菓子市場の最新動向の把握や商品開発に合わせた戦略を策定ができます。リンクより弊社のスナック市場に関する調査をご覧いただけます。 ミンテルのその他の記事はこちら 【消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート】 株式会社ミンテル ジャパン（https://japan.mintel.com） ミンテルは、消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパートです。英国に本社を置く世界最大規模のマーケットインテリジェンスカンパニーとして、世界と国内の市場に関する独自の視点から消費者／市場／新商品／競合他社の分析を行い、市場の将来的な展望についての情報を多角的に提供しています。1972年の会社設立以降、クライアントのより迅速な経営決断を可能にする予測分析と専門家のレコメンデーションを提供。ミンテルの使命は、ビジネスと人々の成長をサポートすることです。 お問い合わせ先 〒100-6318 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 丸の内ビルディング18階 Tel: (03) 6228-6595 Email: infojapan@mintel.com
