これまでの生活費危機では、物価上昇に耐えられる客層が多い高級小売店は影響を受けない傾向がありました。2020年代を通じて優勢な「自分へのご褒美」トレンドが続く予測もあり、富裕層は引き続き高級品を購入することでしょう。しかし、このような贅沢な出費が、より「厳選された」、より「慎重に検討する」買い物へと変化してきています。人々は、これまで以上に価格に見合った価値を求めており、そのため小売業者は、新しい商品や体験を提供し、革新的である必要があります。

 

持続可能な要素を付加し、リニューアルされる名品たち

半数近くの大人が、まだ試したことのないプレミアムBPC(ビューティー&パーソナルケア)製品を購入する前に、最安値を探して買い物をしていることがわかりました。インフレが継続していること、人々が自由に使える額が減少していることを背景に、この傾向は強まっています。その結果、高級ブランドは人々に目に止めてもらうための努力が必要になり、また、消費者側は自身のした買い物に納得できるよう、各ブランドが商品の有効性を示すことを期待しています。多くのブランドは、既に顧客がついている、試行錯誤を重ねた後に開発した製品のマーケティングに注力しています。これは、多くの場合、既に人々に愛されている名品に「環境に配慮した機能」を追加したうえで復活させる動きなどに表れています。

Glossierは、大成功を収めたリップ製品「Balm DotCom」をヴィーガンに配慮した製品に改良すると発表しました。また、より使いやすいパッケージに一新し、再生不可能なペトロラタムをヒマシ油のゼリーに変更しました。同様に、メイクアップブランドのHourglassは、昆虫を砕いて作られる顔料のカルミンの代替としてRed 0を使用し、ブランドのアイコニックな色を損なわないまま、同シリーズを新しくヴィーガンリップスティックとしてリリースしました。いずれのブランドも「責任ある持続可能な変化」をもたらすことで、ブランドイメージを高めることに成功しています。これらは、高級なBPCの買い物体験で、持続可能性を優先する新しい顧客を惹きつける例として見ることもできます。

Z世代にアピール

ミンテルの「Consumer Attitudes Towards Luxury (UK)」のレポートでは、Z世代が高級ブランドに最も関心を示していることがわかりました。しかし、この層は一般的に自分で自由に使える金額が少ないため、メーカーブランドはZ世代と彼らが使える予算にアピールする方法を考え直す必要があります。

若い消費者にアピールする方法のひとつとして、より身近な商品とのコラボレーションがあります。2023年5月、H&Mは高級衣料品ブランド、Muglerとのコレクションを発表し、アイテムが早々に売り切れるなど、大成功を収めました。同様に、2023年春夏シーズン、ニューバランスはミュウミュウとのコラボレーションを継続し、大人気のディストレストデニムスニーカーを発表しました。身近で手に入れやすいブランドと憧れの高級ブランドのミックスは、潜在的な消費者にとって魅力的であり、より手頃な価格でブランドの入り口となる商品を提供することで、将来のロイヤルカスタマーを育てることができます。 

エンゲージメントを高めるもうひとつの効果的なアプローチは、購入プロセスにカスタマイズを組み込むことです。Z世代の3分の2がクリエイティブ志向であることから、顧客の個性に合わせたパーソナライゼーションの魅力が高まっています。2022年、グッチはパーソナライゼーション・ステーションを発表し、顧客は高級な商品を自宅に持ち帰ることができるようになりました。顧客により深くショッピング体験に参加してもらうことで、顧客はブランドと深いつながりを築き、リピーターになる可能性が高くなります。

 

体験型レストラン

多沢さを味わえるユニークで面白い方法を探しています。多くのレストランが、体験型レくの消費者、特に若い世代の消費者は、贅沢をしたいと考えていても予算が限られているため、高級レストランでの体験に憧れを抱き、デザイナー製品に大金を費やすことなく、贅ストランでこの成長市場に対応しています。体験型レストランでは、暗闇の中での食事や、映画や演劇をテーマにしたメニューを楽しむなど、ユニークなイベントが提供されています。このような体験を通じて、顧客は楽しいひねりを加えた5つ星の待遇を受けていると感じることでしょう。多くの場合、こうしたレストランはチケット制のため、料金が高くても最終的なコストが明確なので安心して訪れることができます。

ダイナミックさや楽しさを演出するために、期間限定でゲストシェフを招く高級レストランも増えています。ロンドンにある180 Cornerでは、様々な料理経歴を持つシェフを招き、贅沢なレストラン体験を提供しています。こうしたイベントは通常、数日間にわたって開催され、いつもほぼ完売です。これは、オーダーメイドの特別な体験を求める市場の欲求を表していると言えます。

 

ミンテルとともに未来を見据える

高級小売店のブランドは、継続的な顧客維持のために、環境に配慮した処方や素材を積極的に採用し、革新的である必要があります。 

さらに、高級ブランドは、長期的な顧客ロイヤリティを確立するために、新興市場に目を向けなければいけません。Z世代は今現在、自分で判断して使えるお金の金額は少ないですが、高級品の購入に関しては最も熱心であることがわかりました。そのため、メーカーブランドがターゲットとする層としては有望です。 

ミンテルでは詳細な市場調査のご依頼も承っています。貴社の事業戦略や消費者行動の最新トレンドの把握にぜひご活用ください。海外市場のリテールレポートにご興味のある方は、Retail Market Research(英語サイト)をご覧ください。