本記事では、ミンテルの消費者&カルチャーレポートのディレクターであるCarol Wong-Liが、アメリカとカナダのZ世代を比較し、またカナダのZ世代向けマーケティングにおける3つの戦略をご紹介します。

 

経済、社会、環境に関する数々のニュースが常に生活の不安定さを感じさせる、今という時代を生き抜くのは、誰にとっても容易なことではありません。不況に見舞われ、また、大切な時期を新型コロナウィルス感染症によるパンデミックに台無しにされ、それでも生活を確立して経済的自立を目指さなければならないZ世代にとっては特に大変です。カナダアメリカの両方に共通するのは、Z世代(1997年~2012年前後に生まれた世代:現在11歳から26歳くらい)の若者たちが、その上の世代の人々に比べて「ストレスや不安を感じやすい」ということです。

ストレスと不安に対する耐性は、両国の18~26歳に共通しますが、カナダのZ世代はアメリカのZ世代に比べると、「心の健康をコントロールできている」と感じる傾向にあります。この違いはどこから来るのでしょうか。

アメリカにおける政策の方針転換など、社会情勢が影響していることは間違いありません。しかし、ミンテルの調査によれば、こういった社会的状況のほかに、「支出の裁量が任されている度合い」もその理由として考えられます。例えば、カナダのZ世代のほうが、アメリカの同世代よりもレジャーや趣味に自分の裁量で支出できると回答しています。余暇を過ごしたり自分を表現したりするというアクティビティにお金を使えることが、自分に人生の決定権があり、自立しているという感覚を与えていると思われます。

では、カナダのZ世代はどのような分野にお金を使うのでしょうか。「仮に500ドルを自由に使ってよいと渡されたら、何に使いますか?」という質問に対し、最も多かったのは衣類の購入と外食でした。ここで重要なのは、カナダのZ世代のほうが自分の意志で買い物をする傾向が強いため、各ブランドや企業は、アメリカよりもカナダの18歳から26歳に働きかける意味がある点です。Z世代が自分のためにお金を使うのをサポートすること、そして常にその場面に合った適切なオプションを提供することができるかが鍵になります。

 

Z世代の心を探る – 「私」というメンタリティ

ミンテルが発表した『グローバル消費者トレンド2023』の「私」というメンタリティのセクションでは、この2年間、消費者が社会のためにどれほど自分自身のやりたいことを後回しにしてきたか、について言及しています。この考え方の犠牲になったのが、Z世代です。卒業パーティーは中止になり、職を失い(サービス業に顕著)、企業の業務縮小によってインターンシップがカットされ、キャリアの良好なスタートを切ることさえできませんでした。将来の成功に向けて準備をする人生の大事な段階において、こういったことが起こりました。人生は計画通りにいかないとZ世代が感じるのも当然です。そして現在、彼らは失われた時間を取り戻し、自分自身のことに再び注力したいと強く願っています。その苦労を知っているブランドの役割は、彼らを励ますとともに、未来に向けて着実に歩むためのツールとリソースを与え、成功を勝ち取れるという安心感を与えることです。

 

カナダのZ世代向けマーケティング:3つの戦略

Z世代はまず、自分をコントロールできているという感覚と安定感を取り戻す必要があります。そして、未来の成功に向けて順調に前進するためのツールを必要としています。そういった彼らに向けて、次の3つの戦略を検討してみましょう。

 

  1. 小さな成果を称え、順調に前進しているという安心感を与える

毎日の平凡な作業をこなすことは、簡単に見えるかもしれません。しかし、そのような日々の小さな積み重ねに注目することで、「日常的に生活をしているだけでも成果を上げている」とこの世代の若者たちに感じさせることができます。小さな成果は、小さな成功への第一歩です。未来への見通しが立たず、自分たちに決定権がないように見える時代において、これは重要なことです。ブランドの役割は、このような小さな成果を称え、彼らが順調に歩んでいるという安心感と、現状に対する満足感を与えることです。

 

  1. パーソナライズやカスタマイズで文字どおり自分の思い通りにできる自由を与える

SNSを愛用するZ世代は、上の世代と比較すると自分の日常を他人に見せるのを好む傾向があります。SNSを受動的に見るだけでなく、自分自身や自分が関心のあるトピックを積極的に投稿します。Z世代の42%は、すきま時間にTikTokの動画やポッドキャストの録音といったコンテンツを制作しているという結果が出ています(ミンテルレポート[Leisure Trends – Canada – 2023]より)。 つまり、Z世代は常に自分の個性を外に表現することと、その表現がユニークであることを重視しています。彼らは上の世代に比べ、自分を他人に見せ、個性を表現するために、外見にこだわる傾向にあります。

 

ここで提案するパーソナライズは服や食べ物に限りません。たとえば皮膚科医に推奨されるアメリカのスキンケアブランドのCetaphilは、日々のスキンケアを改善するために、確かな根拠に基づいて何をどのように使ったらよいかを判断するための総合的な肌の分析機能アプリを発表しました。このオンラインアプリは、まずAI技術を用いてユーザーの自撮り写真とデータベースに保存された7万枚もの肌の写真を比較します。その後、ユーザー個人向けのレポートを作成し、肌のタイプ、問題点、どのような状態になりやすいか、などの情報を提供します。こういったパーソナライズされた情報により、ユーザーは自信を持って自分の外見を磨くためのスキンケアを選択できます。

 

 

 

  1. 経済が不安定な時代には財務管理ツールを

将来に目を向けると、景気の先行き不透明感やインフレの状況もあり、マイホームを手に入れるといった将来の資金計画を立てることがより難しく、手の届かないものに感じられるかもしれません。実際のところ、Z世代やミレニアル世代にとって、このような経済的な計画を達成するには非常に時間がかかります。投資アプリは数々ありますが、彼らにとって重要なのは、安定した経済基盤を確立する方法を学ぶツールです。つまり、予算管理、信用度の確立のほか、BNPL(Buy Now Pay Later-後払い決済)によって簡単に物を購入することの意味と結果の理解など、基本的なことから始める必要があります。使いやすさが好評のお小遣いアプリ、OopsはTikTokで大流行しました。このアプリは、衝動買いを記録し、自分がどれだけ衝動買いにお金を費やしているかを把握できます。若い消費者が予算を立て、自分の経済状況を把握するには便利なツールです。

 

 

ミンテルの見解

ここでご紹介した戦略は概要にすぎませんが、ポイントはZ世代がパンデミックのために人生の大事な時期に大変な状況を体験していること、「そのために年上の世代の常識が通じないこと」を認識することです。また、彼らも大人として成功したいと努力していますが、これまでの世代と違い、直面する困難も目標も一人ひとり全く異なります。この点を、彼らをターゲットとする企業は理解する必要があります。彼ら一人ひとりが、自分の人生のストーリーを形作るための手助けをするには、カスタマイズとパーソナライズが鍵になります。そしてこの不確実性の高い時代においては、彼らが人生のあらゆる段階で必要とするツールを的確に提供するという取り組みが、企業としては必要になるでしょう。

 

Z世代向けの食品・飲料の開発にご関心のある方、必見!

Hi Japan(食品開発展) 2023にて、日本と世界のZ世代を比較し、彼らの食習慣について考察する講演を行いました。

プレゼンテーションの資料をこちらからダウンロードしていただけます:https://japan.mintel.com/comparison-of-global-and-japans-eating-habits-for-gen-z

 

講演タイトル:「食」から見える世界のZ世代- ご褒美おやつからサステナブル意識まで

日時:10月4日(水)10:30-11:50

会場:PL会場

講演者名: Jonny Forsyth (ミンテル フード&ドリンク ディレクター)※言語:英語―逐次通訳あり

 

概要:

世界人口の1/4を占めるZ世代(1997年~2010年生まれ)は、2030年までに総収入が3,300億ドルに達すると予想されています。彼らはどんな食習慣を持ち、企業はそれにどう対応できるでしょうか。本講演ではZ世代における次の3つのテーマを取り上げます。1. 健康とご褒美の考え方、2. エコ意識よりもエコ無関心、3. 正式な着席型の食事よりも雑多な間食を好む傾向。

 

講演者経歴:

15年以上の業界経験を有し、世界の大手食品・飲料企業に対し、最新の消費者動向や市場動向に関するアドバイスを行っている。以前は世界最大のビール会社、AB InBev社に勤務。現在は食品・飲料分野のアナリストとして、Z世代やメタバースが食品・飲料業界の将来にとって何を意味するかなど、「大局的な」視点に立った先駆的なレポートの作成に注力している。

 

展示会詳細:https://hijapan.info/