過去5年間、イギリスの外食産業は紛れもなく様々な課題に直面してきました。新型コロナウイルスによる外出自粛から景気後退、消費者の食生活の変化などにより、レストラン、カフェ、テイクアウトなどのサービスは、変化する状況やニーズに継続的に適応する必要がありました。こうした経済的な圧力や不安定な状況がありながらも、現在イギリスの外食産業は順調に回復しています。ミンテルのレポートによると、2019年には消費者の84%が外食していたのに対し、2023年にはその割合が90%まで増加しています。この間にイギリスにおける外食率が81%まで低下した年もあったため、業界全体として喜ばしい回復を遂げています。それでは、レストランやテイクアウト、飲食店などはどのように回復してきたのでしょうか?ミンテルと共に、イギリスの外食産業の最新トレンドやイノベーションを紐解いていきましょう。

 

レストラン業界の消費者トレンド

外食産業は多種多様で、カジュアルダイニングから高級飲食店、ファーストフード、伝統的な食べ物やエキゾチックな料理まで様々なものが挙げられます。このように選択肢が多くある中、イギリスの消費者はどのような味を好むのでしょうか?イギリスで最も人気のある飲食店のタイプはパブレストランで、イギリス料理レストランやカフェがそれに続いています。このことから、イギリスの大半の消費者はカジュアルで落ち着いた外食を好んでいることがわかります。

ヨーロッパ料理、イタリアン、アメリカン、シーフードレストランなどの多くの飲食店では、テイクアウトするよりも店内で食事をする方がはるかに人気です。この傾向が特に顕著なのがパブレストランで、店内で食事をする消費者とテイクアウトする消費者とで60%以上もの差があります。こうした中、唯一の例外は中華料理やインド料理などのエスニックレストランで、これらの店ではテイクアウトに訪れる消費者の方が多くなっています。

年齢別の消費者行動を見てみると、世代間での差が顕著な例としてテイクアウトの注文が挙げられます。65歳以上の消費者がテイクアウトのために注文するのは、中華レストラン、インドレストラン、フィッシュ・アンド・チップスなどの伝統的な選択肢に限られています。しかし、若い消費者がテイクアウトで注文する料理はますます多様になっており、その背景にはUber EatsやDeliverooといった急成長しているサービスや様々なレストランの選択肢が登場したことが挙げられます。例えば、20-24歳の消費者は、65歳以上の消費者と比べ、ハンバーガー/鶏肉料理店からテイクアウトを注文する割合が4倍以上高くなっています。

さらに、テイクアウト料理全般で最も注文頻度が高い年齢層は16-24歳の消費者です。このことから、高齢の消費者と比べ、若い消費者のテイクアウトに対する関心は特定の料理に限ったものではないことがわかります。

 

消費者はどのように外食先を選ぶのか

ミンテルの調査によると、飲食店を訪れる主なきっかけは最も単純な「家族や友人からのおすすめ」が大半です。もちろん、多くの消費者は引き続きオンラインの信頼できるレビューを参考にしたり、ロイヤルティ特典を活用したり、環境にやさしい取り組みを重視しています。しかし、多くのイギリスの消費者は、特定のレストランを訪れるきっかけとして個人的なおすすめを挙げています。

このことは企業にとって何を意味するのでしょうか?簡潔に言うと、外食での体験が最も重要だということです。口コミでマーケティングを行うためには、外食の基本となる美味しい食事、優れたサービス、リーズナブルな価格などが求められます。つまり、消費者が外食先を探す上で基本に立ち返っている今、企業も基本的なサービスに目を向け、これらを満足できるものにする必要があります。

さらなる外食産業のインサイトにアクセスするには、ミンテルストアをご覧ください(英語のレポート購入サイトに遷移します)。

 

外食市場の最新トレンド

2024年、レストランやカフェのメニューに登場する最新のトレンドは何でしょうか?ここ数年における最も大きな傾向としては、朝食やブランチでの外食が大幅に増加していることです。ミンテルのレポートによると、2021年に朝食やブランチを外で食べている消費者はわずか29%でした。しかし、2023年には朝食・ブランチの外食率が35%まで急増し、大幅な増加をみせています。ランチ、ディナー、間食などを外で食べる消費者の割合は変わっていないことから、消費者は外食習慣を変化させるのではなく、むしろ拡大させていることがわかります。

外食に関する消費者の行動をさらに詳しく見てみると、新しい味を楽しみたい人と、馴染みのある料理を好む人の割合がほぼ均等に割れていることがうかがえます。このことから、消費者が好む味の主なトレンドは「馴染みのある好きな味」と「試したことのない味」に二極化しているといえます。
新しいものを試したい消費者は、その大半が「複雑な料理の値段が高めに設定されているのは妥当」だと考えています。つまり、イギリスで外食をする消費者のほとんどは、自宅では作れないような珍しいメニューに高い金額を支払っても構わないと考えています。消費者の多くは、より複雑な料理に相応の価値を見出していることから、外食と自炊にかかるコストの差を妥当なものだと考えています。一方、支払ってもよいと思う金額については、消費者の大半、特に若い世代が「肉を使わない料理はより安くあるべき」だと回答しています。

 

外食産業におけるイノベーション

ここ数年の外食産業における主な変革としては、大企業に対してメニューにカロリーの記載が義務付けられたことが挙げられます。2022年4月に可決された法案に基づき、大手外食サービス企業はメニューに料理のカロリー情報を記載することが義務付けられました。2019年には、イギリスの消費者の半数以上が「この措置は消費者がより健康的な食事を心掛けるきっかけになる」と回答していました。2024年には、35歳未満の半数が「メニューにより多くの栄養価情報を記載してほしい」と回答しています。こうした法律の改正により、企業が配慮すべき慣行も変化していることが分かります。

多くの業界と同様に、外食産業のイノベーションでもテクノロジーが重要な役割を果たしています。新型コロナウイルスの流行によってますます普及したQRコード注文やファストフード店でのタッチスクリーンを使った注文、アプリ内でのロイヤルティプログラムやお得な情報など、様々なものが挙げられます。「馴染みのあるもの」がトレンドとなっている今、こうした選択肢は消費者が新しい店舗やメニューを試すきっかけにもなるため、企業はテクノロジーを活用して新たな体験を提供することで、消費者を取り込むことができるでしょう。

ミンテルとともに未来を見据える

レストラン、カフェ、テイクアウト、その他の飲食店にとって、こうした消費者トレンドに追従することは極めて重要です。企業には長続きしない一過性のトレンドに飛び付かない慎重さが求められるものの、レストランのメニューなどは消費者のニーズや業界のトレンドを取り入れていく必要があります。

これを念頭に、多くのレストランでは朝食やブランチメニューを取り入れることができるでしょう。 外食の選択肢としてブランチが注目され、朝から昼の時間帯に様々なメニューを展開するカフェやコーヒー店が急速に成長していることから、朝食を外で食べるトレンドは多くの飲食店にとって重要な商機となっています。

テイクアウト可能な飲食店やレストランでは、バラエティーやイノベーションに前向きな若い消費者に注力していくのが賢明でしょう。高齢の消費者は伝統的なテイクアウト料理やテイクアウト方法を好む一方で、若者はフードデリバリーのテクノロジーやこれまでとは異なる外食の選択肢を楽しんでいます。テイクアウト業界は、店内で食べられるオプションを追加するなど利便性を取り入れた新しい外食体験を提供することで、今後も拡大し多様化していくことが期待できます。

ミンテルの幅広い外食産業に関する市場調査を活用し、消費者行動の最新トレンドをいち早く把握しましょう。

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