近年、エイジングに対する社会的な見方は大きく進化し、アンチエイジングから脱却しつつあります。代わりに、エイジングを含む人生のあらゆる段階を前向きに受け入れることが重視されています。

他の多くの国々と同様、タイも人口分布の変動が顕著で、中年以降の年齢層が増えています。この人口分布の変動は、様々な業界にとって大きな市場成長のチャンスと言えます。

2004年から2023年にかけて、Googleでの「アンチエイジング」の検索数は減少しましたが、「ヘルシー」「ポジティブ」「ウェルエイジング」関連の検索数は比較的安定しています。‌アジア・太平洋地域(APAC)では、シンガポール、香港、フィリピンが「ウェルエイジング」の検索でトップを走り、僅差でタイが続いています。ミンテルのレポートによると、55歳以上のタイの消費者の10人に7人は自分の外見に満足していますが、残りは自分の外見について中立的な立場を示しています。

ミンテル世界新商品データベース(GNPD)によると、北アメリカでウェルエイジングを促進する新製品が増加しており、これはエイジングに対するメーカーのアプローチ方法が変化していることを示しています。APAC地域のメーカーは、このような「ウェルエイジング」への関心を汲み取って、ビジネスチャンスを掴む機会があると言えるでしょう。

ここで重要なのは、「ウェルエイジング」とは外見や健康的な食事だけを意味するのではない、ということです。健康的な生活と年齢に合った幸せを育むことを意味しているのです。

メディアや広告ではあらゆる年齢層を被写体とすることが望まれている

55歳以上の消費者をターゲットとする製品は、広告やキャンペーンにターゲットと同じ年齢層のモデルを起用することがプラス効果をもたらしそうです。タイの55歳以上は10人に6人が、同年代の俳優や女優をもっとコマーシャルに起用して欲しいと考えています。これは、包括性や多様性の促進に留まらず、あらゆる年齢層の人々が尊重されるべきで、メディアや広告の被写体となるに値する、という力強いメッセージでもあります。

このアプローチは、これまで長年マイナーな存在だった消費者の声が高まっていることにスポットライトを当てたミンテルのトレンド「Serving the Underserved」の記述とも一致しています。

エイジングに関する固定概念に挑戦している例として、YouTubeの「良識あるおばあちゃん」(ポルトガル語で「Avós da Razão」)というチャンネルがあります。60歳以上の女性3人が中心となって、さまざまなテーマについて語り合うという内容です。3人は、気軽でフレンドリーな会話を通じて、固定概念とは大きく異なり、「齢を重ねるプロセスは楽しい」というメッセージを伝えています。

 

良識あるおばあちゃん」YouTubeより

 

ウェルビーイング(より良い生き方)のために健康を優先

ミンテルの調査によると、年配の消費者、特にX世代以上の消費者にとって、美しさはあまり重要ではなくなってきています。この年齢層は今、むしろ健康問題全般を価値あるものとして注目しています。

このような年配の消費者を惹きつけるためには、メーカーは外見の魅力だけを強調するマーケティングから、内側からのウェルビーイングや健康に焦点を置いたマーケティングに移行すべきです。この消費者層の74%が、寿命を延ばすために食生活を変えていることを踏まえると、食品・美容メーカーにとって、健康的に年齢を重ねたいというニーズに応えつつ、年齢に関わらず楽しめる、というコンセプトにビジネスチャンスがあるのです。

例えば、Bettamilk Goat Milk(ヤギのミルク)は、消化しやすく、美容、健康、長寿に効果が期待できる、というこの層に魅力的な要素を備えた飲み物としてアピールできます。

Bettamilk Goat Milk(ロシア)。

出典:ミンテルGNPD

 

特定の年齢層向けのシンプルなラベリング

メーカーは、「アンチエイジング」という言葉を避け、代わりに「55歳以上の女性に適している」「65歳以上の男性向け」など、特定の年齢層を製品に表示するアプローチをとることもあります。このアプローチは、エイジングを前向きに捉え、加齢への差別を避け、包括的なブランドであることを示すものです。

パッケージに対象年齢を明記している例として、Blackmoreから発売されているMultivitamin Nutri 50+があります。

Blackmoreから発売されているMultivitamin for 50+。

出典:Bekindpharmacy

 

ミンテルの見解

エイジングは、より前向きで包括的な視点へと進化しています。この変化はメーカーにとって、エイジングを前向きに受け入れ包括的な幸せをサポートする製品や企業姿勢を求める年配消費者のニーズに応えるビジネスチャンス、と見ることができます。さらに、年齢に関する差別や固定概念に挑戦することで、メーカーは今後のビジネスにとって重要なこの年齢層とより強いつながりを築くことができるのです。

 

高齢層向けの製品開発についてはこちらの無料レポートでもご紹介しております。

2023アジア太平洋地域における食品・飲料業界の動向(無料ダウンロード版レポート)

 

本記事でご紹介している各国の消費者調査データや海外の製品トレンドについてのお問い合わせはミンテルジャパンまで。

【お問い合わせ先】

株式会社ミンテルジャパン

100-6318 東京都千代田区丸の内二丁目41号 丸の内ビルディング18
Tel: (03) 6228-6595
Email: infojapan@mintel.com