Mintelによる年次報告「Chinese Consumer 2021 レポート」は、消費者支出の主な変化、消費者のライフスタイルや傾向、昨年の市場への影響をまとめ、今後1年間の企業やブランドへの示唆や提言をまとめています*。

Mintelの最新の調査によると、中国の消費者は、新型コロナウイルス流行の時代を経て、人生で最も価値のあるものとは何かを再定義しています。パンデミック発生後、消費者は健康、倫理、自分で自分の身を守ることに対する意識を強めています。2020年には5人に2人近く(36%)がワークライフバランスが仕事において重要であると述べていましたが、新型コロナウイルス発生後の2021年には42%に上昇しています。また、社会生活における責任感が高まったことで、日々の仕事で社会に貢献することを望んでおり、パンデミック発生前後での社会貢献意識の変化は21%から32%に拡大しました。特に、Z世代(18〜24歳)を中心とした消費者の大多数(63%)は、ポジティブな活動を推進し、社会や環境保護を支援することを意識するようになっています。

同時に、あらゆるものがスマート化する時代にあることから、個人データの保護は都市生活の様々な場面での懸念すべき事柄となっており、消費者の日常生活における衣食住から社会保障にまで影響を与えています。2020年3月には、プライバシーの侵害を懸念していると回答した消費者は23%でしたが、現在はそのように回答する人は44%にまで増加しました。

 

Mintel  Chinaのカテゴリー・ディレクター、ローレル・グによるコメント

「消費者の信頼感(暮らしや現況と将来への革新)の高さと堅調な経済成長に加え、健康的なライフスタイルや長期的な将来の安心感を求める消費者ニーズが相まって、今後数年間、消費者支出全体が着実に伸びていくと思われます。消費者は、購入の意思決定をする際に感情的な要素を重視するようになっており、消費者の文化的アイデンティティや個性を尊重し、企業の社会的責任を果たすなど、自らの倫理的価値観に合致したブランドを好むようになるでしょう。」

 

個人消費は2021年にパンデミック前の水準に戻る

Mintelは、パンデミックの影響により、2020年の消費者支出総額は2019年比5.7%減の41兆589億人民元になると予測しています。この減少は、旅行・休暇(61.4%減)、レジャー・娯楽(37%減)、食品・飲料サービス(13.6%減)、外出先で消費するアルコール(14.9%減)などの特定のカテゴリーでより顕著であり、これは外出先での活動の減少(特に自粛期間中)や不要不急の支出を控えたことによるものです。

 

しかし、パンデミックの影響で一部のカテゴリーでは消費量の増加や消費の復調が見られました。例えば、家庭で消費されるアルコール飲料(15.9%)、家庭用食品(13.1%)、医療・ヘルスケア製品(9.3%)、美容・パーソナルケア製品(8.1%)、個人金融・住宅(5.3%)などは、2020年に高い成長率を示しました。

 

Mintelの予測では、2021年には消費者支出総額がパンデミック前の水準に戻り、2020年比9.5%増の45兆6,470億元に達するとしています。その後、個人消費は2021年から2025年まで年率7.1%で成長を続け、2025年には60兆4,000億人民元に達すると予想しています(人口増加率は安定しており、一人当たりの月間支出額は約3,450人民元)。一方で市場のさらなる成熟に伴い、前年比で示した成長率は鈍化するでしょう。

 

今後の個人消費は、旅行、個人ファイナンス、住宅、家庭用食品へシフト

長期的には、2025年までに旅行・休暇関連の支出が、消費者の支出カテゴリーの上位5位以内に戻るのではないかとMintelは予測しています。同時に、消費者の可処分所得の大部分は、将来の安心とより良い生活環境のために、個人ファイナンスや住宅に流れていくでしょう。また、家庭内食品カテゴリーは、健康的な食生活のトレンドに後押しされて今後も安定した地位を保つ一方、レストラン業界にとっては困難も増えることが予測されます。

小カテゴリーの中では、一般医薬品・ヘルスケア製品、美容・パーソナルケア製品が注目すべき分野であり、今後5年間にわたって消費者の支出割合が大きくなる分野となるでしょう。

パンデミックの発生、技術の進歩、新しい政策など社会や経済が進化し続ける中で、消費者が製品やサービスを評価する対象や項目も変化しています。

今後5年間でMintelは、消費者の購買決定により大きな影響を与える3つの重要な要因を考察しています。

「まず初めに中国の消費者は、パンデミック発生後の時代に、不確実性と共存するという課題に適応し、安心感を得られるように機能性やコミュニケーションの面でオープンで透明性のある製品やブランドを好むようになります。また、社会や環境に貢献するエシカルなブランドを選ぶ傾向が強くなるでしょう。これにより製品やサービスを利用するという基本的なニーズを超えて、消費者にさらなる満足感や充実感をもたらすでしょう。最後に、中国国内外問わず各ブランドは中国の文化や伝統を尊重することが消費者の選択に大きな影響を与えることを念頭に置く必要があります。これは、マーケティング・コミュニケーション戦略や、製品コンセプトのデザインなどにも関係してきます」

また、ローレルは以下のように考察を述べています。

 

家庭用食品:健康、利便性と感覚的体験の今後の成長とイノベーション

このカテゴリーの消費者支出総額は、2020年には2019年比13.1%増の7兆3,300億人民元になると推定されています。消費者が今後も健康的な食生活を意識することで、パンデミック発生がきっかけで始まった家庭での調理習慣を維持することとなるでしょう。外食サービスへの出費をしない、もしくは出費の少ない消費者の大多数は、家での調理が健康的な食生活をする一助になると考えており、これが有益な効果をもたらす健康商品の需要拡大につながっています。その結果として、家庭内食品カテゴリーは2020年以降も成長軌道を維持する一方、外食産業の回復により2021年には成長率が8.5%に鈍化すると予測されます。

Mintelの予測によると、家庭用食品に対する消費者支出総額は、2021年から2025年にかけて、2015年から2019年の年率(7.1%)に程なく近い7.3%の年率(CAGR)で成長し、2025年末には10兆541億元に達すると予想されています。

 

ビューティー&パーソナルケア分野では必需品以外の製品カテゴリー登場を予測

今後5年間で、美容が健康やライフスタイルとより密接に関連するようになるにつれ、消費者は美容プロセスをより真剣に考えるようになるでしょう。ほとんどのパーソナルケア製品は、日々の衛生管理ケアに必要だとされているため着実な継続使用が見込めます。同時に、パーソナルケア製品は、消費者体験を向上させるために、配合をアップグレードし、剤型やフレグランスを中心に革新を続けています。

一方で生活必需品以外の美容・パーソナルケアカテゴリー(フレグランスなど)製品は、感情にポジティブな影響を与えたり、自己表現のツールとなるアイテムとして今後数年間でより多くの消費者の注目を集めることになるでしょう。Mintelは、美容・パーソナルケアに対する消費者の総支出は、今後5年間で年率8.6%で成長し、2025年には1兆2020億元に達すると予測しています。

 

レクリエーション 楽しさやリターンをもたらす製品や活動が次のブレークスルーとなる

オンラインエンターテインメントの消費者支出は、有料ユーザーやアップグレード・ユーザーの拡大により、引き続き増加すると思われますが、オフライン・セグメント(映画館、カラオケボックスの意を持つKTV、入浴施設/スパなど)も堅実に回復すると予想されます。Mintelの調査によると、消費者はウイルスにさらされるリスクを強く警戒しており、過去1年間はオフラインの活動を再開することに慎重になっています。その結果、レジャー・エンタテインメント全体の支出は、他の多くの分野に比べて比較的ゆっくりの回復となるものの、2022年末にはパンデミック前の水準、そして2025年には2兆8,190億人民元に達すると予想されています。

レジャー・レクリエーション支出は、アウトドア活動の大幅な減少により、2020年には37%減少しています。余暇時間の多くは、比較的費用対効果の高い家族やオンラインでの娯楽活動に流れ、ライブのEコマース、ストレス解消に役立つゲームなどが主流となっています。また、パンデミックの影響により健康だけでなく、消費者自身や子供のための知識とスキル向上に取り組むことにも注目が集まっています。次の人気のあるレジャー消費セグメントは、使うことで楽しさと充実感を得られる製品やアクティビティを中心に展開されるでしょう。

 

ノンアルコール飲料 摂取目的が多機能にわたるクロスボーダー飲料

ノンアルコール飲料の消費者支出の伸びは、2020年には2.5%に鈍化しますが、これは主に、流行の初期に家庭外での消費が減少したことに起因します。このセグメントでは、ボトル入り飲料水と植物性タンパク質飲料が上位に入りました。これは、前述の製品群により、消費者が炭酸飲料で贅沢な気分に浸ることができることと、健康へのニーズを満たす体に良い成分を取り入れられることが背景にあります。一方、炭酸飲料の人気が高まるにつれ製品の差別化を強化すると同時に健康的な成分がイノベーションとプレミアム化の手段となっていくでしょう。

 

テクノロジーとコミュニケーション 5Gサービスが急成長

新型コロナウイルスは、スマートフォンに加えて、人々がオンライン学習に適応し始めたことで、コンピュータ、タブレット、ブロードバンドサービスに対する消費者の需要に拍車をかけています。多くのテクノロジー分野が成長を続け、テクノロジーの未来が有望視されていることから、オンラインエンターテインメントへの支出は今後数年にわたって成長を続けると思われます。タブレットを内蔵した電気自動車、ゲーム機器、ウェアラブルテクノロジー、新しい形態のオンライン小売、5Gテクノロジーを搭載したスマートフォンなどがテクノロジー支出の急速な回復をもたらすと予想されます。今後10年間は、5Gネットワークサービスに対する消費者の受け入れが進み、5Gサービスの成長の10年となるでしょう。

 

*Mintelの「The Chinese Consumer 2021 Report」は、15の主要な消費財カテゴリーにおける消費者支出を網羅し、5つの主要産業を含む各カテゴリーにおける今後の成長機会を分析しています。

**3,000人の20-49歳のインターネットユーザー、2020年