イギリス、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」(ミンテルグループ)の日本法人「株式会社ミンテルジャパン」(東京:千代田区)は、2023年5月17日から3日間に渡り開催された、ifia Japan 2023(国際食品原料・添加物展示会)に出展し、アナリストであるミシェル・テオドロが「スリープヘルス:次世代機能性食品」と題したプレゼンテーションを行いました。

睡眠をサポートする革新的な製品とその動向について、国内外の例を取り上げながら、ミンテルの世界新商品情報データベース(GNPD)および消費者データを基に、今後のビジネスチャンスについて解説しました。

 

消費者は睡眠改善にサポートを必要としている

コロナ禍において、多くの人々がストレスや不安の多い生活を強いられてきました。そして、快適な睡眠を得られているとは言えない状況が続いたことにより、睡眠の改善を促すスリープヘルス製品の需要が拡大しています。ミンテルの調査によると、日本の消費者のうち自身の睡眠に満足している人はわずか29%。30代の日本人女性は57%が睡眠に関する問題を3つ以上抱えていることが明らかになっています。

アナリストのミシェル・テオドロは次のように述べています。

「スリープヘルスと総合的なウェルビーイングおよびセルフケアとの結びつきが強まっています。消費者の「睡眠を改善したい」という欲求が高まるとともに、各ブランドが新しい手法で睡眠サポート製品を開発する動きも見られます。 この分野の製品に配合される成分は、消費者のニーズや行動、独特なトレンドに影響を受けます。今回提示した、スリープヘルス製品の商機に関する3つの提言は、今後の方向性やどこに注目すべきかの理解にお役立ていただけることでしょう。」

 

ミンテルの提言1:スリープヘルスをトータルウェルビーイングの一部と位置づける

ミンテル・トレンドの『トータル・ウェルビーイング』によると、トータルウェルビーイングの概念の受け入れは世界で共通しており、包括的なウェルネスの一部として睡眠を位置づけています。ミンテルの調査によると、日本の消費者の55%は身体的な健康を維持、もしくは改善することが、より良い睡眠を得るために最も有効であると考えていることが明らかになりました。

しかし、ミンテル 世界新商品情報データベース(GNPD)によると、過去5年間(2018年3月~2023年2月)、世界の食品・飲料・サプリメントの新商品のうち、ストレスや睡眠の健康に関して訴求したものは1%未満であり、主にお茶やサプリメントでした。

ミシェルは「睡眠の管理に対する消費者の関心は、ウェルネスという広範な健康の文脈の一部として高まっています。十分な睡眠は、身体的、精神的、感情的な健康を維持するために不可欠です。私たちの調査では、より良い睡眠のサポートに栄養素が不可欠であることを示していますが、ストレスや睡眠の健康に役立つビタミンやサプリメント(VMS)の発売は非常に少なく、睡眠に役立つ製品の開発に商機があることを示しています」と述べました。

【より良い睡眠を促す製品の一例】

 

消化不良を起こさない夜食

Nightfood は睡眠に適したアイスクリームブランドとして知られており、最近では同シリーズのクッキーも発売されました。(アメリカ)

出典:ミンテルGNPD、nightfood.com

 

ミンテルの提言2:乳製品を睡眠とリラクゼーションに結び付ける

ミンテルの調査によると、タイの消費者は「牛乳は身体的な健康以上のメリットをもたらす」と考えており、乳製品が脳の健康(55%)、快眠(41%)、気分の改善(30%)をもたらすことを期待しています。また、中国の消費者の54%は、健康的な乳製品に睡眠のサポート効果を望むと答えています。

ミシェルは、「私たちは、牛乳に含まれるマグネシウムやトリプトファンが果たす、ストレスや睡眠への重要な役割に注目しました。乳製品に睡眠をサポートする機能性成分を加えることの検討は、睡眠サポート市場における商機を見出すことに役立つでしょう」と述べました。

【睡眠サポートを訴求する乳製品の一例】

コエンザイムQ10

カネカ わたしの力®Q10ヨーグルトには、還元型コエンザイムQ10が100mg含まれています。一過性のストレスを感じている方の「睡眠の質の向上(ぐっすり眠れること、眠りが深いこと、睡眠中に目が覚めないことなど)」「起床時の疲労感の軽減」「一過性のストレスの軽減」に役立ちます。(日本)

出典:カネカ


ミンテルの提言3:ナチュラルな原材料で消費者を惹きつける

ミンテル 世界新商品情報データベース(GNPD)によると、微量栄養素と植物由来成分は世界的な睡眠サポート、ストレス緩和製品の成分を牽引しており、カモミール(25%)、レモンバーム(20%)、ラベンダー(15%)は、それらの食品、飲料、サプリメントにおいて多く使用されています。

一部の消費者は、メラトニンを含む睡眠サポート商品を利用することでのメラトニン依存や、副作用のリスクを懸念しています。そのような消費者は、依存や副作用のリスクを負う必要のない製品を求め、メラトニンを含まない商品が睡眠の質を改善する素晴らしい選択肢であると考え始めています。

ミンテルの調査によると、中国の消費者の37%が「メラトニンのような睡眠サポートサプリメントは副作用がある」と考えています。

「ブランドは、消費者ニーズに適合したスリープヘルス製品を提供するために、次の3点を踏まえて製品の開発を検討する必要があります。1点目は効果が穏やかで多機能な天然睡眠サポート成分(アダプトゲンなど)を配合すること。2点目は、副作用を引き起こす可能性のあるサプリメントに頼らずに睡眠の質を改善したい消費者へ、メラトニンフリー製品を提供すること。3点目は、確かな根拠で睡眠をサポートする機能性成分の効果を裏付けることです」 とミシェルはプレゼンテーションを締めくくりました。

本プレゼンテーションのスライドは以下のリンクからダウンロードしていただけます。

スリープヘルス:次世代機能性食品ifia Japan 2023講演内容