世界中で心の健康が話題になる中、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって心の健康対策の重要性がさらに注目を集めました。ミンテルの調査によれば、タイの消費者の49%が自身の心の健康状態を「良い」、16%が「とても良い」、10%が「悪い」と回答しています。

また、新型コロナウイルス感染症が多くの人に心の問題をもたらしたことに、タイ人の40%が強く同意しています。問題の原因は、経済的なストレス、将来への不安、仕事、学校、家族関係、健康問題、環境的な状況、社会や仲間による圧力、SNS、政治などさまざまです。

本記事では、食品・飲料が消費者の心の健康を高める可能性を探ります。

 

「ポジティブエイジング」への転換

タイ人の半数近く(特にX世代*)にとって心の健康が優先事項である現在、身体的、精神的な健康をサポートする食品や飲料の需要が高まっています。Z世代は自身の心の状態が「良い」とする割合が最も低く、この世代に絞ったソリューションが必要であることを示しています。ミンテルの調査によれば、タイのZ世代の3分の1以上(38%)が孤独を感じており、全世代のうち最も孤独を感じています(消費者全体では27%)。

また、世界中で高齢化が進んでいます。60歳以上の人口は急激に増え続けており、2050年までに20億人に達すると予想されています。こういった状況を背景に、消費者が尊厳を持ってしなやかに年齢を重ねるための製品やソリューションを提供する商機が見込めると言えます。

健康に年齢を重ねるには、健康やウェルネスへのホリスティックかつ能動的で、自然なアプローチが必要であり、それが心の健康のための食品・飲料に対する需要を引き上げています。

 

コンフォートフードと「感情にふける」世代

コンフォートフードはタイ人の心の健康に重要な役割を果たし、消費者の77%は塩味のスナックが自分へのご褒美として適していると感じています。アイスクリーム、チョコレート、ミルク、コーヒー、炭酸飲料、お茶、ビタミン入りの水、肉、スポーツ飲料・エナジードリンクなど他のコンフォートフードに頼る人もいます。

Z世代*やヤングミレニアル世代*は心の健康を維持するための体験に依存する傾向が強く、ミンテルの調査ではこの世代を「感情にふける世代」と呼んでいます。食品や飲料のブランドはその世代のライフスタイルを考慮し、心の健康に良いことをアピールしています。たとえばオーストラリアのWhite Wolf Smart Energyは、朝鮮人参、Lテアニン、カフェイン、ビタミンB6、B12を原料とするコンフォート飲料であり、筋トレ、ゲーム、仕事に最適とうたっています。

White Wolf Smart Energy(オーストラリア)

出典:ミンテルGNPD

 

18~24歳のタイ人女性は脂肪や砂糖を多く含む高カロリーのコンフォートフードを好む傾向にあります。このような食品は栄養価が比較的低いものの、気分を高め、一時的なストレス解消となります。これは、一部の食品がドーパミンの放出を促し、幸福感を与えるためと考えられています。

 

「マインドスナック」の登場

コンフォートフードのトレンドはブランドにとって、安心感やストレス解消を求める消費者に訴えるチャンスでもあります。タイ人の3分の1近くは心の健康に良いスナックの種類が増えることを歓迎しており、「マインドスナック」市場の成長がうかがわれます。Alpinaのフレッシュチーズスナック「Queso Pera」は、ストレスの多い日常の中で一息入れ、身体に栄養を与えることを若い社会人に奨励しています。

 

食品や飲料のブランドは、心の健康に関連する団体と提携して心の健康をサポートすることもできます。たとえばKitKat Australiaは自殺防止の慈善組織「R U OK?」と提携し、一休みして自身の心の健康について話し合うよう呼びかけるメッセージを同社チョコレートのパッケージに記載しています。

Crisp Wafer Fingers Covered with Smooth Milk Chocolate(オーストラリア)

出典:ミンテルGNPD

※こちらのリンクはミンテルGNPDをご契約のお客様のみご覧いただけます。

 

腸脳相関に革新

X世代*の3分の2以上(64%)は栄養と心の関係を信じています。食品や飲料の高い栄養価が心の健康を改善すると考える人の割合も同様です(Z世代は51%、全体は56%)。このような人々は栄養が心身の健康に役立つと考えています。ミンテルの調査でこのグループは「心身の栄養重視派」と定義されています。この消費者は、ジュース、アイスクリーム、ミルク、コーヒー、お茶など、栄養面や機能性において価値のある食品や飲料を選択する傾向があります。「感情にふける世代」と比べ、「心身の栄養重視派」は塩味のスナックやチョコレートといった楽しむだけの食品・飲料は好みません。

たとえばTropicana + Viva VitalityはビタミンCとマグネシウム、Tropicana + Fuel for Thoughtは心の機能を高めるビタミンB3とB6を強化しています。一方、Tropicana + Berry Boostは、免疫系の正常な機能をサポートするビタミンCを含みます。

Tropicana + シリーズ、Tropicana UK

 

X世代の半数近く(46%)は健康的な食事が良い気分にもつながると考え、腸脳相関に対して高い意識を持っています。腸の健康に良いことで知られる食物繊維は、健康に年を重ねる上で有益です。各ブランドが成長中の心の健康をサポートするこの市場で成功するために、腸脳相関を取り上げるのは一つの手段だと言えます。

*タイにおける各世代の区分けは以下の通り。

Z世代 – 1997年~2012年生まれ。2023年においては11~26歳。

ヤングミレニアル世代 –1990年~1996年生まれ 。2023年においては27~33歳。

オールドミレニアル世代 – 1981年~1989年生まれ 。2023年においては34~42歳。

X世代 – 1965年~1980年生まれ。2023年においては43~58歳。

 

ミンテルの考え

食品・飲料ブランドは、リラックス効果やストレス緩和、認知機能・集中力向上などのメリットを製品に組み込むことで、心の健康に配慮する消費者に訴えることができます。心身のエイジングを促進し、腸脳相関を強化する栄養素を組み込めば、消費者への魅力は高まります。

革新的なフレーバーで消費者の関心を引くことで、心の健康分野でブランドが優位性を保つこともできるでしょう。たとえばコーヒーは、X世代、Z世代、ヤングミレニアルなど多くの世代に好まれています。過去に訪れたことのある特定の場所を想起させるフレーバーを使い、製品に懐かしさや心のつながりを感じさせることも、Z世代の共感を得る上で有効となるでしょう。

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