変化の激しいビューティー&パーソナルケア業界で、香りは単なる嗅覚の体験にとどまらず、感情、記憶、セルフケアを結びつけるものです。本ブログ記事では、ブランドが注目すべきフレグランス消費者の3タイプとそれぞれの期待や好みをご紹介します。

 

香りによるセルフケアの愛好家:精神的なウェルビーイングを重視

大都市圏居住者に多く見られる香りによるセルフケアの愛好家は、製品に機能だけでなく、リラックスする体験を強く求めます。ミンテルの調査によれば、このような消費者の40%は香りが精神的なウェルビーイングに役立つと考えています。インドでは、お香や精油(エッセンシャルオイル)など天然の香りを伝統文化、特に宗教的な行事に長く用いてきましたが、香りをセルフケアに利用するのは比較的新しい概念です。

これはブランドにとって、消費者の精神的なニーズや好みに合わせた繊細な香りの製品を発表するチャンスです。自宅でリラックスし、癒しのひとときを楽しむための香りもその1つです。たとえばMy Moments by MatasのMy Relaxing Face Oilは、ラベンダーの精油、グリーンハーブ、オレンジ、レモングラスの香りを配合し、肌に塗ることで五感を和らげるとアピールしています。

 

My Moments by Matas My Relaxing Face Oil
出典:Mintel  GNPD

 

香りによるセルフケア愛好家は、香りの持続性やセルフケアとウェルビーイングなど、機能性も求めています。フレグランスの特許は、持続的なメリットを得る上で特許取得済み技術の重要性を示しています。興味深いことに、製品説明にパフュームオイルを言及したフレグランスの新製品開発は2022年に世界で18%増加しました。パフュームオイルは、高い濃度と緩やかな拡散速度により従来のフレグランスより長持ちするものがほとんどです。神経科学的な情報を利用して消費者のセルフケア体験を高めることにもビジネスチャンスがあります。

 

安全志向派:天然素材で安全なフレグランスを優先

現代の消費者は、お気に入りの製品の原材料について豊富な情報を得ることができ、ミンテルのビューティー&パーソナルケアに関する2019年のレポート「Beauty with a Brain」では、消費者が有効性と安全性のさらなる証明を求めるようになると予想していました。特にフレグランスに向ける目は厳しく、原材料の安全性は購入の重要な決定材料になります。

安全志向派は香りを楽しむものの、肌トラブルを懸念し、天然の花の香りつき製品を好む傾向にあります。半数以上(53%)は強い香りよりも優しい香りを好み、39%はビューティー&パーソナルケア製品の香りに天然の原材料を使用すべきと考えています。安全重視の消費者に対しては、天然素材や安全なフレグランスをアピールすることにより、ビジネスチャンスをつかむことができるでしょう。

 

ビーガン、動物実験フリー、天然の香りを表示したTropic Comfort Food Deep Hydration Mask(英国)
出典:Mintel GNPD

 

インドでは、天然素材を表示した新製品の多くがグリーン系、ハーブ系、ウッド系の香りで、フローラル系、シトラス系は比較的少ないため、市場開拓の可能性は十分にあります。

製品ラベルに記載された品質基準は、消費者に対する品質と安全性の裏付けに役立ちます。ビューティー&パーソナルケアブランドとフレグランスメーカーの提携があれば、香りの成分の安全性について正確なデータを取得し、フレグランスの安全性を証明することができます。国際香粧品香料協会(IFRA)などの団体は、科学的研究に基づいて安全性証明書を発行し、業界の安全基準を満たすフレグランスの提供を促進しています。

 

現実逃避型の消費者:フレグランスで素敵な冒険

現実逃避型の消費者は、ビューティー&パーソナルケア製品に珍しくて非日常的な香りの体験を求めています。このような消費者は冒険と新しいものを好み、46%が新しいフレグランスを試すことにわくわくすると回答しています。ブランドは、未知の世界に導き、探求心をそそるような製品を提供することでこのような消費者へのビジネスチャンスつかむことができるでしょう。

食べ物に関連する香りなど、従来にないフレグランスは、くつろいで感覚を楽しむことを好む現実逃避型の消費者に好評です。食品関連のブランドや旅行会社との提携は、製品の魅力をさらに高められるかもしれません。たとえばPHYの男性向けボディケア製品群は、意図的にデザインされた香りによって具体的な場所に行った気分にしてくれます。PHY Mountain Rainボディウォッシュは、雨に濡れた山と豊かな緑の記憶を呼び覚まします。

PHY Mountain Rain Invigorating Body Wash(インド)
出典:The PHY Life

もう1つの例は、ニューヨークのMagnolia BakeryとTula Skincareが提携して発表したTake Care + Indulgeです。このボディクレンザー兼角質ケア剤は、Magnoliaの人気商品であるバナナプディングをイメージしています。

 

Tulaのバナナプディングクレンジングボディエクスフォリエーター(米国)
出典:WWD

 

ミンテルの見解

フレグランスは、消費者とのエンゲージメントに新しい道を開く可能性があります。香りは十人十色と言ってよいほど多様であり、リラックスの追求、安全性、現実逃避の欲望など、ブランドは今後、消費者のタイプに合わせてビジネスチャンスを探ることができます。

経済的に厳しい時代において、香りのあるビューティー&パーソナルケア製品に投資し、日課を至福のパーソナルタイムに変えるという魅力的な理由を消費者に提供することは、ブランドの知覚価値を大きく高める戦略的なチャンスでもあります。