水分補給以外の健康効果を提供する飲料は「機能性飲料」と呼ばれ、2023年に話題となりました。腸の健康に効果的なコンブチャからCBDを配合した清涼飲料水まで、機能性飲料の市場はますます拡大し、多様化しています。機能性飲料が訴求する健康効果は多種多様で、どのような製品が好まれるかは性別や年齢といった要因に大きく左右されます。ここでは機能性飲料のトレンドを掘り下げ、今後の動向を予測していきます。

機能性飲料市場

ここ数年、機能性飲料業界は世界中で注目を集めており、特にアメリカは健康効果を訴求する飲料の市場が注目されています。市場は成長中ではあるものの、一方で機能的効果を訴求する食品・飲料の新商品の発売は2019-2020年にピークを迎え、それ以来は頭打ちとなっています。この傾向は世界のさまざまな市場で共通しており、2020年以降はヨーロッパ、アメリカ、APAC(アジア太平洋)地域でも同様に停滞しています。

2023年にミンテルが実施した調査では、機能性飲料を消費するアメリカの消費者と機能性飲料の利用に関心を寄せる消費者との間にギャップがあることを取り上げてます。例えば、アンチエイジング効果のある機能性飲料に関心があると回答した人のうち、実際にそうした飲料を利用したと回答した人は半数にも達していませんでした。

こうした実際の消費の少なさは関心の欠如が原因というだけではなく、他の要因も関係しています。その一つとして、アメリカをはじめとする世界の経済情勢があります。可処分所得の低い消費者は、高価な製品を購入する頻度が低くなります。調査の中で、機能性飲料を利用する人の3分の1弱は「ご褒美」として飲む」と回答していることから、関心と消費との間のギャップは家計事情によるものだと考えられます。

 

主な新商品

  1. Lo Bros Kombucha
    近年好調に売り上げを伸ばしているLo Bros kombuchaは、「プロバイオティクスを多く含み」「糖分含有が元来低い」ことを訴求。コンブチャはここ数年で人気の機能性飲料となっており、腸への健康効果だけでなくその美味しさが特徴となっています。 
  2. Söta Calm Sparkling Organic Tea
    カナダの企業Sötaは、ストレスを和らげる10種類以上の機能成分が人気のアダプトゲンを配合した製品、Calm Sparkling Organic Teaを発売しています。
  3. キリン プラズマスポーツ
    アジアでは、キリンがプラズマスポーツを発売。免疫系を強化するキリン独自のプラズマ乳酸菌が配合されており、運動中の体をサポートします。

飲料に関するグローバルな調査レポートは、ミンテルストアをご覧ください

 

機能性飲料のトレンド

アメリカの消費者の間では、ジュース、炭酸飲料などの清涼飲料水や乳飲料が一般的に消費される傾向が最も高く、実際、アメリカの消費者の約70%がこれらを定期的に消費しています。機能性飲料はこうした人気の飲料に大きく後れを取っており、定期的に飲んでいる割合はおよそ10人に1人です。そして、そのうち「清涼飲料水を選ぶ際に機能的効果を重視する」と回答したのは4人に1人でした。この結果は、機能性飲料のトレンドが徐々に落ち着きつつあることを示唆してます。

 

 

最も人気の機能性飲料は?

こうした中、引き続き機能性飲料の健康効果に価値を見出している消費者もいます。彼らを惹きつける機能性飲料の主な利点とは何でしょうか。機能性飲料において最も人気の機能性は「効果的な水分補給」となっており、10人に7人の消費者が同機能性を謳う飲料を好んで選択しています。次いで「免疫の強化」、「炎症の緩和」、「認知機能の向上」なども消費者から広く人気を集めています。一方、最も頻繁に消費されている機能性飲料という点では、「体重管理」と「睡眠サポート」が注目されています。機能性飲料を利用する消費者の80%近くが、「週に複数回利用する」と回答しています。 

 

機能性飲料をとりまく消費者の習慣とは?

機能性飲料を定期的に消費している人々の生活習慣は多様であり、それに対応するために製品の選択肢も広がっています。 利用者のほぼ半数は「午前中に機能性飲料を飲む」と回答しています。午後に飲む人はこれよりわずかに少なく、その約3分の1は夕方に飲むと回答しています。このことから、1日の始まりに機能性飲料を飲む習慣が好まれていることが分かります。エネルギー増強や認知機能の向上が最も人気であることを見ると、1日の早い時間の利用の多さはそれが理にかなっているからであることが予想されます。

 

機能性飲料を飲むのは誰か?

男性と女性を比べると、男性はタンたんぱく質、オメガ3脂肪酸、向知性成分などを配合した製品を好む傾向にあります。一方、女性はコラーゲン、ビタミン、プロバイオティクスなどを配合した製品を利用しています。

機能性飲料の好みは性別だけでなく、年齢層によっても差が生じています。 全体的に、65歳以上の人々は若年層に比べると機能性飲料の利用で後れを取っています。しかし、機能性飲料を利用する高齢層の間ではビタミンや電解質を配合したものが好まれる傾向が高くなっています。若年層の利用者では、その大多数が果物や野菜、たんぱく質を配合した飲料を購入しています。コラーゲンは一般的に20代、30代、40代の消費者をターゲットにしていますが、その想定通り、調査では25-44歳の人々の間で人気を博していることが示されました。

 

ミンテルとともに未来を見据える

機能性飲料の市場全体を見ると、新商品の発売はますます少なくなっています。実際、2022年から2023年にかけて発売された機能性飲料の新商品は前年よりも減少しています。家計の逼迫などにより、機能性飲料への関心と消費との間に大きなギャップが生じており、市場の縮小は消費者規模の縮小と一致しています。

しかし、機能性飲料を定期的に消費している消費者は、引き続き市場全体に幅広い関心を寄せています。さまざまな年齢・性別の消費者がそれぞれ異なる製品や機能性訴求を好んでいることから、ターゲットとなる消費者層は依然として広く存在しています。機能性飲料の市場は伸び悩んではいるものの、新製品開発に取り組む企業にとって特定の製品の流行り廃りがそれほど顕著に見られないことは安心できるポイントでしょう。免疫強化や認知機能向上などは人気が高く、他の多くの機能性もそれぞれ一定のニーズは存在しています。

機能性食品・飲料の海外及び日本のトレンドについては、昨年のifia(国際食品素材/添加物展・会議)にてミシェル・テオドロ(ミンテルAPACフードサイエンス部門アソシエイトディレクター)が行った講演でもご紹介しております。

以下よりスライド資料を無料でダウンロードしていただけますので、ご興味のある方はぜひご覧ください

スリープヘルス:次世代機能性食品ifia Japan 2023講演内容