ホットスポットでは、ミンテル・トレンド部門が調査した、世界中で発売される製品やサービスの最新情報をお届けする。今月登場するのは、女性の経営するビジネスへの融資に特化した商業銀行や、走行中に車両を充電できるエレクトリック・スマートロードを開発したスタートアップ企業など。世界で最も画期的な取り組みの数々をご紹介いたします。

イスラエル − エレクトリック・スマートロード

イスラエルのスタートアップ企業、Electreon Wirelessは、走行中に車両を充電できるスマートロードを開発。これにより、走行距離を制限されることもなく、寿命が短いうえに重いバッテリーを持ち運ぶ手間も省ける。スマートロードを機能させているのはアスファルトの8cm下に埋められた銅製コイルで、車両下部の受信機に無線で電力を送るための管理装置とつながっている。試験では走行中の長距離トラックに問題なく充電できた。Electreon Wirelessは次の試みとして、テルアビブ当局およびDan Bus Companyとの協働により、テルアビブ大学から鉄道駅まで続く道路の電化済みの1kmの区間でシャトルバスを試運転する予定である。エネルギー省はさらに、テルアビブ市内の10km区間における商用プロジェクトを発表し、まずはバスの充電の実用化からスタートする予定だ。

大気汚染や限りある石油資源の問題に取り組むため、炭素排出量を制限することのできる電気自動車は、近いうちに世界中の都市交通の未来の定番となるだろう。最小限のバッテリーを搭載した電気自動車は、特に商用車や大型車の分野においては最も持続可能で費用対効果に優れたソリューションである。このことを受け、都市はインフラを改修し、充電ポイントを増やし、電気自動車のエネルギー効率を上げて、車の乗り換えがしやすい手頃な価格とするためバッテリー寿命の改善に投資をしている。目に見える技術革新によって、小型ながらもより多くの乗客数と効率改善が可能な大容量バッテリーは充電時間もさらに短縮されており、電気自動車は消費者にとってより魅力あるものとなってきている。

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トレンドマネージャー ヘレン・フリッカー(欧州・中東・アフリカ)

米国 − 銀行での女性ファースト

First Women’s Bankは女性の経営するビジネスへの融資に特化したシカゴにある商業銀行で、同市内において、10年以上ぶりの新規金融機関となるべく準備を進めている。First Women’s Bankは連邦預金保険公社(FDIC)から条件付きの認可を取得し、JPMorgan Chaseから米国中小企業庁に至る経験豊富な業界の専門家による首脳チームが設けられている。米国の中小企業の経営者に占める女性の割合が伸びてきているにもかかわらず、女性起業家は男性起業家と比べローンや融資を得るのに苦労をしてきており、これに関して設立者たちが議論したことがきっかけで始まったのがFirst Women’s Bankだ。

First Women’s Bankで注目すべきは、その理念だ。市場へ新規参入が見込まれるその他の企業の信頼を高めるかどうか確信はないものの、この理念は伝統的な旧来の金融機関では果たし得ない役割を浮き彫りにしている。ファースト・ウィメンズ・バンクは変化の遅い業界に新しく奇抜なイノベーションを投げかけているだけでなく、あると知りながらも満たすことのできていないニーズに積極的に対応しようとしている。そのニーズが示すのは、製品やサービスの知識の伸びしろがある既存市場の可能性である。金融機関の乗り換えには面倒な手続きが発生することから、一般的に消費者は自分にとって都合の良い金融サービスを選ぶものだが、これによりFirst Women’s Bankの運営には困難も待ち構えているだろう。しかし、この銀行の発足や高まりつつあるサービスの需要を受け、その他の金融機関が同様のサービスを導入するきっかけとなる可能性がある。

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出典:シカゴ・トリビューン

トレンドアナリスト アレックス・ミリナッツォ(米国)

中国 − 衛星越しの学習

哔哩哔哩(Bilibili)は、科学普及を目的としたコンテンツ作りのために、リモートセンシング衛星を打ち上げた。発表は、子どものような好奇心を持ち続け、世界や世界中にあるありとあらゆるものを探求してもらえるよう消費者に働きかけるという意図のもと、哔哩哔哩(Bilibili)の子どもの日キャンペーンの一環として行われた。哔哩哔哩(Bilibili)のリモートセンシング衛星は地上から500kmを超える高度で太陽同期軌道に入り、1日に地球を約15周回ることができる見込みだ。衛星が撮影する写真や動画は、科学や人文化学、歴史、公共福祉などの教育的コンテンツ作成に使われる。発表から2時間たらずで、哔哩哔哩(Bilibili)の新しい動画衛星アカウントの登録者数は111,000人を超えた。

哔哩哔哩(Bilibili)は現時点でもサブカル愛好家に人気の動画ストリーミングサイトであるが、ライフスタイルやテクノロジーといった狭い分野に限定された、より真面目なコンテンツを用意し、それらのニッチなコンテンツのターゲットをZ世代(デジタルネイティブ)の消費者層全体へと急激に拡げている。これは哔哩哔哩(Bilibili)にとって、大人の世界に足を踏み入れ、まだ学生だった頃とは異なるものごとに関心を持つようになった主要視聴者とともに成長するための戦略的な動きである。この年齢層は、興味の対象がより幅広くより真面目なものになってきている。このように若い消費者層は、料理や魅力的な科学情報などの情報を得ることで、日々の暮らしを生き抜く術を学んでいるのだ。

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トレンドアナリスト ジョイス・ラム(アジア・パシフィック)

コロンビア − 愛は誇り

コロンビアにあるScotia Bankの新キャンペーンは、性別も年齢も関係なく誰かを誇りを持って愛することを讃えるものだ。プライド月間(LGBT文化に寄りそうイベントが開催される期間)にコロンビアで開始された新キャンペーン「Orgullosos de Amar(愛は誇り)」は、他者を愛することを賛称している。キャンペーンの目的は、あらゆる性的指向、年齢、外見を持つカップルや個人の写真を展示し、コミュニティ全体の代弁者としてあるべき姿を表現することである。

世界中で、プライド月間を祝うためにキャンペーンに参加する民間企業が増え始めている。かつては、わずかな特定のブランドだけがプライド支援を表明していたが、現在ではあらゆる業界で事業展開するブランドがプライド月間に声明を出し、より多様で受容的な社会を支援すると表明している。ブランドは最近の社会的な出来事や不公平についても声明を出している。これからの広報やCSR活動は、特定の集団を対象とするのではなく、コミュニティを形作る一人一人が社会とつながっていることを示すものになっていくだろう。

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トレンドアナリスト ヴァネッサ・ロンディーン(南米)

タイ − セルフサービスのStarbucks

Starbucksは、初めてのセルフサービス方式の自動販売機をバンコクに設置した。数あるメニューの中でもクラシックラテ、カプチーノ、アメリカーノ、ホットココア、キャラメルマキアートなど、様々なドリンクをホットやアイスで提供する。顧客はさらにエスプレッソショットやシロップを追加するオプションを選択することもできる。Starbucksの自動販売機は、サムヤーン・ミットタウンのAIS eスポーツ・スタジオ内に設置されている。

eスポーツ業界の需要が大きく高まることで、ブランド、マーケティング担当者どちらにも大きな収益が期待できる商機を提供することにつながっている。ゲームプレイヤーは対戦中、集中力を高めようとコーヒーを欲する可能性があるため、eスポーツの拠点におけるセルフサービス方式の販売開始は、Starbucksにとってブランディングの好機になる。まだゲーム中の流れがどのような商機につながるのかは未開拓であるため、ブランドは迅速に動き、ゲームの進行を邪魔することなくゲームプレイヤーのニーズに応えるための最適な方法を検討すべきだろう。

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トレンドアナリスト メラニー・ナムビア (東南アジア)