ホットスポットでは、ミンテルトレンドチームが注目する世界中から選び抜いた新製品・サービスをご紹介します。ブラックコミュニティやラテンアメリカ系コミュニティに公平な金融サービスを提供するデジタル銀行から、ビデオゲームを使って授業の活性化を図るチリの教育ワークショップまで、今月登場した世界で最もイノベーティブな取り組みの数々を見ていきましょう。 アメリカ – 金融サービスならGreenwoodにおまかせ Greenwoodは、ブラックコミュニティやラテンアメリカ系コミュニティに公平な金融サービスを提供し、コミュニティ内で富を再循環させることを理念とする新しいデジタル銀行です。ラッパーのMichael Render（通称 Killer Mike）、Bounce TVの創設者Ryan Glover、元アトランタ市長で活動家のAnderew Youngが立ち上げたGreenwoodは、1900年代に実在した歴史的に有名な地域で、ブラック・ウォール街と呼ばれたオクラホマ州タルサ市グリーンウッド地区にちなんで名付けられました。Greenwoodはデジタル専用銀行で、開設時には預金口座、当座預金口座、デビットカード、Apple PayおよびAndroid Pay、P2P決済、モバイルデポジット、ATMネットワークの利用が可能となります。また、新規顧客は、援助を必要とする家庭一組につき5食を無料提供し、デビットカードでの購入ごとにその金額の端数を切り上げ、購入金額からの超過分を、非営利団体であるNAACPやUnited Negro College Fund、Geodrに寄付をすることができます。また、Greenwoodは黒人やラテンアメリカ系の小規模ビジネスオーナーに毎月1万ドルの助成金の提供も行っています。 アメリカの人々が構造的人種差別に立ち向かってきたこの1年間を考えると、新型コロナの影響や、消費者や投資家の関心の高さを理由にGreenwoodの立ち上げが延期になったことは当然の成り行きといえるでしょう。旧体制の大手銀行には、差別的かつ略奪的な融資慣行やレッドライニング（特定地域の住民には融資しないなどの投資差別）、黒人やラテンアメリカ系の顧客に対する基本サービスの過剰請求、白人が大多数を占める地域に支店を集約し黒人やラテンアメリカ系の富をコミュニティに再循環させないなどの、不平等を長らく続けてきた歴史があります。消費者が構造的な問題に対して構造的な解決を求める中、金融サービス市場の混乱は社会経済的不平等に対する取り組みにおいて、着手すべき重要な課題であります。 トレンドアナリスト アレックス・ミリナッツォ （アメリカ） チリ – ゲームを活用した授業 教師を対象にチリで実施されている教育ワークショップでは、ビデオゲームを利用して授業の活性化を図る取り組みを行っています。「Potencia Tu Clase con Videojuegos（授業にビデオゲームを取り入れる）」というこの新たな取り組みは、チリの教師にハイテク機器を提供して教授方法の向上を図る事を目的としています。Los CreadoresのNational Digital Scholastic Talent Awardが Desafío Latam Academyと共同で開発したこのオンラインワークショップには無料で参加することができます。ワークショップの参加者は、ビデオゲーム開発プログラムの賞品抽選会に参加することができます。このワークショップは社会的に影響力があるハイテクプロジェクトを強化していくため、デジタルとの接点を増やす機会を創出することをサポートしているLos Creadoresのプロジェクトの一部でもあります。 新型コロナのパンデミックに見舞われた2020年に教育が直面した、前例のない難題は、人と接触する全く新しい方法に生徒たちを適応させながら、画面を通じて学問に向き合い続けてもらうことでした。教育上の議題としてすでに取り上げられていたものの、それほど広く普及していなかったゲームやソーシャルプラットフォームは、子どもたちにとって馴染みがあり、快く受け入れられることから、教育現場に導入できる教師の抜本的な支援ツールとなりました。今日では、人との接触を失うことなく、より柔軟性のある混合型の教育方法に焦点が当てられています。この点が重要なのは、対人関係や人とのコミュニケーションが感情的な支えとなり、創造性と学習を促進していく原動力となるからです。 トレンド＆ソーシャルメディアリサーチディレクター ギャビ・リーバーマン（南北アメリカ） スペイン – 安全な会場 バルセロナのPrimavera Soundはソーシャルディスタンスが不要でありながらも、新型コロナウイルス感染症に配慮したコンサートを試験的に開催し、良い結果を得ることが出来ました。バルセロナのバダロナにあるGermans Trias i Pujol大学病院のエイズ・感染症財団との提携によるこのイベントは2020年12月に開催され、463名が参加しました。このイベントは、ライブ音楽イベントが再開できるかどうかを判断するために実施されたものです。参加者およびミュージシャン全員が、会場に入る前に15分で結果がでる新型コロナの検査を受け、さらに、高齢者世帯と同居していないなどの厳しい基準も設けられました。結果が陰性であればマスクを着用の上で会場に入ることができ、ソーシャルディスタンスの確保は求められません。この試験的なイベントの結果、会場に入ったすべての参加者は新型コロナに感染することはありませんでした。会場入場前の検査対象者496人のうち感染が認められた2名は、会場に入ることが出来ませんでした。 デジタル・イベントやその他のバーチャルな企画の人気は、消費者がいかにライブ体験を渇望し、パンデミック以前の生活の復活を切望しているかを示しています。結果がすぐにわかる新型コロナウイルス検査や、昨今のワクチン接種の開始により、企業、ブランド各社は対面での安全なエンターテインメントを消費者に提供する新たな手段を見つけ、営業再開に備えることができます。同時に、多くの企業からの期待も高まっています。今後の感染爆発を回避し、消費者のウェルビーイングを守りながら安全なエンターテイメントを促進していくため、ブランド各社はソーシャルイベントの開催や混雑した会場での開催にはより慎重にならなければなりません。今後は新型コロナウイルス検査やソーシャルディスタンスの確保、参加者のワクチン摂取状況の確認が標準となる可能性が高いです。 トレンドアナリスト ボルハ・ バリャドリッド（ヨーロッパ） 中国- 塩分含有量は自分で選ぶ 調味料ブランドの Liuyuexianは、ボトルの前面と中央に塩分含有量を表示した減塩醤油シリーズを発売しました。 Liuyuexianは、ヘルスケア業界で人気の高いソーシャルメディア・インフルエンサーであるDoctor Dingxiangとコラボし、さまざまな消費者の嗜好や健康需要を満たす、塩分含有量の異なる4種類の醤油を詰め合わせた減塩ギフトボックスを発売しました。新しくなったパッケージには、ボトルの前面と中央には塩分含有量が表示されており、消費者が欲しい製品を正しく選択でき、他の製品と比較して商品を選ぶことが出来ます。 中国では、消費者が健康的な食生活を求める傾向が高まっていることから、無糖の製品が人気を集めています。一方で、塩分含有量についてはこれまであまり注目されてきませんでした。中華人民共和国国家衛生健康委員会によると、中国の消費者の平均塩分摂取量は推奨値のほぼ2倍であり、塩分を大量摂取することによる健康リスクへの認識が不十分であることを示しています。Liuyuexianはこのような健康リスクへの認識の低さに注目して、減塩への関心を喚起するとともに、塩分含有量をグラム表示で視覚化した目立つラベルを使うことで、他の製品と比較しやすくしています。視覚に訴えかける分かりやすいラベルを作成することで、ブランドは消費者が知りたがっている情報に優先順位をつけ、無意識のうちに消費者が商品を手に取るような仕掛を採用しています。非常に多くの選択肢が溢れる中、消費者は自分のニーズに最も適した選択をするための近道を探しています。 トレンドアナリスト ビクトリア・リー （アジア太平洋） タイ – ハニーフルーツの収穫 League of Legendsモバイル版であるWild Riftの発売プロモーションの一環として、Riot Gamesはゲーム内で使用する回復アイテム、「ハニーフルーツ」を本物の食用フルーツとして再現しました。Riot Game、BBH Singapore, Jack Morton、そして世界的に有名なシェフがこのフルーツの開発に関わり、シェフは食材を使い分け、フルーツの味が毎回変わるような趣向を凝らしました。フレーバーはスパイシーなものやシュワシュワとした発泡感のあるもの、スイート、チョコレートからハーブまで、さまざまなものがあります。タイのゲーマーたちにはバンコクのさまざまな場所でハニーフルーツを試食する機会が設けられ、他のゲームクリエイターたちには「収穫したばかりの」ハニーフルーツが届けられました。BBH Singapore,によると、ハニーフルーツのソーシャルメディア上のインプレッション（広告の表示回数）は、2週間以内で170万回にまで及びました。 モバイルゲームは大規模かつ多様な消費者層を惹きつけることができることから、競争力のあるゲームLeague of Legendsなどを有するゲーム開発業者は、モバイルゲームへの取り組みをより一層強化して、視聴者の拡大を図っています。League of Legendsは知名度が高いという利点があるが、Google PlayストアやApp Storeで毎日登場する何千もの新作モバイルゲームの中で抜きんでるには、強力で魅力的なマーケティングが今後も不可欠であります。Riot Gamesは今回の体験型キャンペーンや親しみやすいブランドアイデンティティを通じて、ゲーマーだけでなく好奇心旺盛な消費者の注目も集めることができました。ファンがリアクション動画や試食会、レビューを熱心に共有したことで、ソーシャルメディア上で大きな話題を呼び、この発売キャンペーンは成功を収めることができました。 トレンドアナリスト メラニー・ナムビア （東南アジア）
