本記事では、米国における「日焼け止め」および紫外線防止機能があるマルチ機能製品の今後の市場について、ミンテルUSA、カーソン・キッツミラーからの報告をご紹介し、日本での同製品の商機についても言及します。

 

【記事の要旨】

  • 米国の「日焼け止め」ユーザーの半数以上(54%)が、1年前より「日焼け止め」を塗る頻度が増えたと回答。
  • 老化やがんを予防するための「日焼け止め」使用は、2021年と比較して20ポイント以上増加。
  • 米国の黒人の「日焼け止め」ユーザーの84%が、自分の肌色に特化して作られた製品の選択肢がもっとあればいいと考えている。

 

「日焼け止め」および紫外線防止機能がある皮膚保護製品は、肌の健康状態を保つことも含めた健康習慣への注目が高まったことが後押しした2020年の成長につづき、2021年から2022年にかけても、爆発的に伸び、2023年まで7%の成長が見込まれています。しかし、ミンテルの調査は、この市場はその後2027年まで成長は鈍化すると見ています。紫外線防止機能も含んだマルチ機能スキンケア製品が便利であると評価され、日常使いされると予想しているからです。ミンテルの調査によると、米国の「日焼け止め」ユーザーの半数以上(54%)が、1年前(28%)よりも「日焼け止め」を頻繁に使用しています。大多数の使用目的は「皮膚がんのリスクを減らすため(89%)」で、昨年(69%)よりも20ポイント増加しています。さらに10人に7人(69%)が肌老化を防ぐために「日焼け止め」を使用しています。これは昨年(44%)から25ポイントの増加です。

ミンテルのビューティ&パーソナルケア・シニアアナリストであるカーソン・キッツミラーは次のように述べています。 「『日焼け止め』の使用率はここ数年安定していますが、消費者の日常的な使用率は上昇しています。近年、消費者が包括的な健康やセルフケアに重点を置いているため、肌の健康はビューティーやパーソナルケアカテゴリー全体の話題になっています。これからの『日焼け止め』は、消費者に『日常使いしたい製品』と思われねばなりません。従来はスキンケア製品の領域と考えられていたような成分、効果、訴求を取り入れ、『日焼け止め』が本来持っている紫外線防止以外の価値も提供せねばなりません。」

 

紫外線機能付きスキンケア製品の台頭

ミンテルの調査によると、紫外線防止機能付きのスキンケア製品を使用している消費者の半数以上(57%)は毎日使用しており、これは「日焼止め」にとっては脅威といえます。スキンケア製品は肌の保護などの機能をもつことから男性(50%)、女性(61%)ともに年間を通して定期的に使用されており、このような日常使い製品に紫外線防止機能を追加すれば、毎日の習慣に紫外線防止も簡単に取り込むことができるため、消費者にとっては魅力的です。「日焼け止め」は依然として紫外線防止製品の中で最も選ばれていますが(74%)、日常使いしてもらうための工夫が必要です。

キッツミラーはさらに「スキンケアブランドは、消費者の価値観や利便性に応えるために、紫外線防止やブルーライトからの保護のような需要の高い機能を備えた新製品を開発しています。『日焼け止め』ブランドは、スキンケアブランドとの競争に生き残るために、紫外線防止以外の美肌や健康上のメリットを取り入れるべきです」と述べています。

 

「日焼け止め」のカテゴリーでは、まだまだ足りない肌の色の多様性

「日焼け止め」を使用している49%の黒人消費者のうち、半数以上(54%)が1年前よりも「日焼け止め」を塗る頻度を増やしており、これは市場全体の傾向と一致しています。しかし、ブランド側は黒人ユーザーの要求に応えきれていません。「日焼け止め」黒人ユーザーの5人に4人以上(84%)が、「自分の肌色に特化した製品の選択肢がもっとあればいい」と答えています。

キッツミラーはつづけて「肌の色に合った『日焼け止め』がないことが、黒人消費者が『日焼け止め』にあまり関心を示さないことの要因の一つとなっています。Coppertone や Dune Suncareのような『日焼け止め』ブランドは昨今、多様な肌の色に包括的に対応できる処方を発表しました。しかしさらに、各々の肌になじむ色が用意され、かつ白浮きしない処方であれば、包括的な製品以上により幅広い層の消費者に受け入れられる魅力あるブランドになるでしょう」と述べています。

 

肌の保護を訴求 主要なターゲットは25歳から44歳

25~44歳の米国人は他の年代と比較して、肌を保護する化粧品類を使う人が多いという数字が出ています(25~44歳:69%、全成人:54%)。大気汚染やブルーライトなど外的環境から肌を守るスキンケア製品の使用率をみると、この年代では30%、全成人では16%です。23~44歳の67%が、都市公害(大気汚染など)に耐えうる強い肌へと導くスキンケア製品があれば高い金額を払ってもよい、と答えており、38%がブルーライトから肌を保護する製品に高い金額を払ってもよい、と答えています。

キッツミラーは最後に「消費者が製品の訴求ポイントや効能をより深く吟味するようになるにつれ、複数の保護機能をもつ製品が一般的になるでしょう。複数の保護機能があると消費者層が広がり、使用場面が増え、結果として、ひとつの製品で多くの消費者の肌を様々な環境下で守ることができるようになり、製品の機能が最大限に活かされます。競争の激しい市場を勝ち抜くことができるのは、紫外線防止にとどまらず、消費者から求められている保護機能をタイムリーに取り入れ、様々な環境下で肌を包括的に守ることができる製品です」と締めくくりました。

 

日本市場での商機

日本ではSPF値やPA値の表記に上限があるため、紫外線防止機能製品は長年、美容訴求やベースメイク訴求により差別化をはかってきました。またブルーライトや花粉などから肌を「守る」という訴求も見られます。特に日本では使用目的の上位に複数の美容目的が入っており*、美容目的に関する消費者の目は厳しい状況です。

上記ミンテルUSA、カーソン・キッツミラーからの報告によると、米国では紫外線防止機能製品に関し、美容目的を期待する人が増え、他機能と併せた訴求が市場を牽引しています。インバウンド復活への期待が高まる中、多機能を備えた日本の紫外線防止機能製品(日焼止め、メイクアップベースなど)は外国人観光客にとっても魅力的であると思われます。

*ミンテルジャパンレポート「サンケア・トレンド – 日本 – 2022年」より

 

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