イギリス、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」(ミンテルグループ)の日本法人「株式会社ミンテルジャパン」(東京:千代田区)は、2023年5月17日から3日間に渡り開催された、CITE JAPAN 2023 (第11回化粧品産業技術展)に出展し、アナリストである河端香織が「サンケア・トレンドー日本」と題したプレゼンテーションを行いました。

本プレゼンテーションでは、世界のサンケア市場と比較しつつ現在の日本市場を分析し、今後日本企業が検討すべき市場について解説しました。

世界のサンケア市場

2020年度のサンケア市場は、新型コロナウイルスの影響を色濃く受けました。2022年は回復傾向の国が多いものの、ばらつきが見られます。売り上げ金額で見た場合の、主要10か国の2015年から10年間の成長予測を比較すると、市場の規模は中国と米国が他を大きく引き離しています。

出典:Mintel Market Size

使用目的の違い:皮膚がんを恐れる英米 / 美容目的の日本

ミンテル 世界新商品情報データベース(GNPD)によると、2019年の日本のサンケア市場は日焼止めに集中しており、逆に英国ではセルフタンニングが日焼止めの半分の市場規模を占めています。

* Hot or Not—Evaluating the Effect of Artificial Tanning on the Public’s Perception of Attractiveness

昨年発刊したミンテルジャパンレポート「サンケア・トレンド – 日本 – 2022年」によると、日本の消費者調査では、何らかの日焼け止めを使用している人の割合は60%でしたが、これはイギリス(71%)、アメリカ(63%)などと比べて有意に低いとはいえないものの、高い数値ではありません。しかし、日本と英米では日焼け止めの使用目的が違っていることがはっきりとしています。

アメリカやイギリスの消費者が日焼け止めを使用する理由は、「皮膚がんリスクを避けるため」が半数を超えるのに対し、日本人の日焼け止めユーザーは圧倒的に「シミを防ぐため」と回答しており、皮膚がんリスクへの懸念は低い状態です。これは、そもそも日本人は民族的に皮膚がんリスクが低いためとも考えられます。

一方、紫外線防御機能を示すSPF値に注目すると、日本や韓国は高SPF製品の比率が非常に高いのに対し、欧米ではそれほどでもありません。国ごとにサンケア製品の嗜好は大きく異なっていることが見て取れます。

日本での製品開発の方向性と未開拓のサンケア製品の見直し

アナリストの河端は、「SPF値に表示上限があり、この点において差別化ができない中で、各企業が力を入れている製品開発の方向性として2つ挙げたいと思います。1つ目は、防御機能の強化。2つ目は美容機能の強化です。」と述べ、すでに市場に見られる製品を例にとり解説しました。

【防御機能強化製品の例】

花粉や大気汚染からの肌ダメージを防御

処方中に抗炎症成分でもあるトラネキサム酸を含む

コーセーコスメポート Whitening UV Sunscreen Essence SPF 50+ PA++++(日本)

【美容機能強化製品の例】

医薬部外品 美白

資生堂 Anessa Whitening UV Sunscreen Gel SPF 50+ PA++++(日本)

また「日焼止め市場が成熟し、大きな成長が望めない昨今においては、未開拓のサンケアを見直すことも商機につながる」とし、消費者調査から浮彫りになった以下の3つの商機を挙げました。

  • 日焼け止めを使用しない理由第1位:面倒くさいから(3人に1人)

→異なる形状を検討

  • 肌や体に悪影響がなければ日焼け肌になりたい(4人に1人)

→セルフタンニングなど

  • 日焼けをしてもアフターサンケア製品でダメージを最小限にできると思う(3人に1人)

→アフターサンケアの習慣を作る

【面倒くささを減らす製品の例】

携帯にも便利なスティックタイプの日焼け止め

Cetaphil Sheer Mineral Sunscreen Stick SPF 50

出典:Mintel GNPD

日本の男性向けの製品開発

河端は日本企業がリーチ可能な海外市場についても解説し、続いて日本での潜在顧客「男性」にリーチしている製品を紹介しながら、次のように考察しました。

日本人男性の日焼止め使用者は1/3人と女性の半分以下というデータがあり、開拓の余地が大きいことが分かります。使用率が低い理由には、日焼肌への考え方と知識の少なさがあげられます。日焼のデメリットをわかっていても選び方や使用方法がわからない男性も多くいるようです。特に選び方について知っていると回答したのは、男性の1/5人にとどまります。つまり、日本における男性日焼止め市場伸び悩みは、4/5人は選び方がわからないことが原因です。」

長期的な環境配慮の取り組み

「環境配慮に関する法律の整備などの外的要因を受けて、日本の日焼け止め市場でもここ2年間で環境配慮に関する訴求が増えています。韓国でも同様の傾向がみられますが、中国やタイでは大きな変化はありません。今後は日本・アジア各国でこのトレンドが波及すると思われます。環境配慮への取り組みは時間はかかるものですが、世界的な取り組みであり、消費者の意識も変化することが見込まれるため、長期的ビジネスチャンスが見込めます。」とプレゼンテーションを締めくくりました。

本プレゼンテーションのスライドはこちらからダウンロードしていただけます。

サンケア・トレンドー日本CITE Japan 2023講演内容