2022年の消費回復は、栄養、健康、ウェルネス市場の成長を促しました。消費者は自身の健康を重要視し、品質が良くコスパに優れ、自身のウェルビーイングにつながる製品を積極的に探しています。たとえば米国の消費者の42%、中国の消費者の71%、インドの消費者の45%は、心と身体の健康に良い食品を選ぶ傾向にあります。

本ブログ記事では、ミンテルAPAC(アジア太平洋地域)フードサイエンス部門アソシエイトディレクターである、ミシェル・テオドロが、世界各国の消費者調査の結果を紹介しながら、今後求められるヘルシーエイジングやアップサイクル製品、メンタルヘルスを訴求する食品・飲料について解説します。

世界各国の状況、革新的な製品事例

サステナブルな食品生産の動きが世界で高まっています。シンガポールの食品庁は、フードテック企業による培養肉生産のための無血清培地の使用を許可しました。イスラエルではSeebo社がAI技術を駆使し、メーカーによる食品廃棄物削減をサポートしています。米国では、2030年までに食品関連の温室効果ガス排出を25%削減しようという動きがあります。

米国、オーストラリア、ブラジル、中国、ニュージーランド、南アフリカの消費者は、手頃な価格で栄養密度の高い食品や飲料を求めています。消費者にとって価格が手ごろであることも大切ですが、栄養を重視していることに変わりはありません。

食品や飲料メーカーはこのことを考慮し、価格に敏感な消費者に対して栄養価の高い製品の選択肢を広げる必要があります。たとえばオーストラリアの消費者の47%は循環器系や免疫力をサポートする効果がある食品や飲料に価値を見出しています。タイの消費者は汎用性のある製品を好み、54%が複数のレシピに利用できる食品や飲料に価値があると感じています。ニュージーランドでは、消費者の32%が家族向けに大容量の食品や飲料がお得だと考えています。

各ブランドが、栄養価が高くコストパフォーマンスの高い製品の開発を進める中で、今後は栄養の質の向上が主な課題となるでしょう。その解決策の1つは、栄養強化によってカロリーあたりに摂取できる必須栄養素を増やすことです。たとえば米国のSara Lee社は、一斤あたりに乾燥野菜を約1カップ練り込んだパンを生産しています。また、フランスのBiofair Nutrition社は、飲料と混ぜて食べる朝食用パウダー、True Kangaroo Breakfast Powderに、プロバイオティクス、食物繊維、リジン、微量栄養素、アシュワガンダ、ブラフミを配合しています。このパウダーは、さまざまな料理に加えて利用することもできます。

 

出典:Sara Lee Bread

 

高価な原料を代替できる原料を使用し、価格を抑える動きも広がっています。日本では、「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスが米粉麵を使用した店舗を2022年に出店したように、小麦粉の代わりに米粉を使用する動きが見られます。オランダのPalsgaard社は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用し、ケーキミックスなどにおける卵の使用量を減らすことで、約5%のコスト削減をしています。

リバースエンジニアリングも、価格を抑えながら栄養を得られる食品の開発に利用できるでしょう。この方法は、高価な機能性原料に代わる、安くてサステナブルな原料を見つけるのに役立ちます。たとえばシアトルのAtomo Coffeeはコーヒーを構成する分子を解析し代替できる原料を選定、スイカの種やヒマワリの種の殻などの原料をアップサイクルし、コーヒー味の飲料を生産しています。同様に米国Voyage社は、サンフラワーシード、ひよこ豆、グレープシード、ソバ、ワイルドライスを使用し、ピーナッツ不使用のスプレッドを開発しています。

 

出典:Atomo Coffee

 

出典:Voyage Foods

 

消費者は栄養素が脳の健康や働きに重要な役割を果たすことを認識しており、ストレスを軽減しながら健全な脳の働きを促進する食品を求めています。アシュワガンダや食物繊維を多く含む食品は、研究でも精神的な安定を促す効果が示されており、国によっては食品としてその効果の表示も認可されています。

ヘルシーエイジングの分野ではホルモンバランスが注目を集めています。中国では消費者の48%がホルモンバランスを整えるサプリメントを利用しています。ナイジェリアのFriska Farms社の Tea for Womenには、抗酸化成分と栄養素の豊富なモリンガ、ハイビスカス、フェヌグリーク、シナモンが含まれています。また、イギリスVitabiotics社のマルチビタミングミ ナチュラルオレンジフレーバーは、高齢男性のテストステロン値を整えるよう設計されています。

 

出典:Mintel GNPD

 

体重管理も人々の関心を集める分野です。オーストラリアの消費者の32%は、食生活の管理で体重を落としたいと考えています。この分野では、サステナブルで栄養密度が高く、入手しやすい食品であることがポイントです。また、腸の健康も体重管理に重要な役割を果たします。

5年以上先を考えると、テクノロジーが農業の基盤を強化することが予想されます。各ブランドは、食品のかす、ナッツの殻、コーヒーかすなどを再利用しつつ、その栄養価の高さを強調するようになるでしょう。災害時には高齢者など過酷な状況の影響を受けやすい人々に、食べやすくて安価な栄養素を提供する必要があります。また、人々の健康やウェルビーイングには、香りや音などの感覚的刺激も利用することができます。例えば、上海交響楽団とメンタルヘルスセンターは、共同でドリップコーヒーパックを販売しています。不安、気分の落ち込み、不眠症などのためとするコーヒーパックに印刷されたQRコードからは、メンタルヘルスの専門家が選択した各症状に効果的な短い交響曲と3分の動画が見られるようになっています。また、米国Abstrax Tech社のOrange Soda Terpenesは、鎮静作用のあるミルセンなどの芳香成分を配合したソーダ飲料で、精神面への効果を謡っています。

 

出典:China Daily

 

出典:Abstraxt Tech

 

ミンテルの考察

食品・飲料ブランドは、健康的に年を重ね、ホリスティックかつサステナブルな方法で体重を管理したい消費者ニーズを考慮する必要があります。本記事でもご紹介したように、テクノロジーを利用して最適な原料に変更し、コストを下げる、栄養価を高めるなどの施策が考えられます。また、音や香りなどの感覚的要素を健康やウェルネスの分野に取り入れることや、自然災害時のためにイノベーションを活用することも不可欠です。災害時、特に影響を受ける高齢者へ、安価で栄養が高く、摂取しやすい食品の開発も考える必要があるでしょう。

 

【消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート】

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