ホットスポットでは、ミンテル トレンドチームが注目する世界中の選り抜きの新製品・新サービスをご紹介します。商業施設の少ない地域で営業する移動式スーパーから、公共福祉事業と連携したフリーサイズ展開のランジェリーまで、今月登場した世界で最もイノベーティブな取り組みの数々を見ていきましょう。

カナダ – 移動式スーパー

トロントに拠点を置くGrocery Neighbourは、食料品店が近くにない地域にサービスを提供するため、移動式スーパーというコンセプトでビジネスを開始しました。食料品店まで車で15分以上かかる、商業施設の少ない地域がターゲットです。全長約16mのトラックで移動するこのスーパーは、肉や青果、乳製品、パン、日用消費財を中心に取り扱っており、最大2,000SKUを運ぶことができます。顧客が自分の携帯電話で商品をスキャンして清算するため、店員とのやりとりは不要です。将来的には、各地域の習慣や関心に合わせて製品ラインナップを変えていくことを検討しています。

新型コロナウイルス感染症が引き起こしたパンデミックは、多くの消費者の食料品の購買習慣に変化をもたらしました。デリバリーサービスの普及やカーブサイド・ピックアップ(オンラインで注文した商品を車から降りずに店舗の駐車場などで受け取るサービス)など購買方法の選択肢が増えたことで、食料品分野を手に入れる利便性に対する消費者の期待も変化しています。移動式店舗というコンセプトは、家のすぐ近くにまで来てくれる上に、自分で商品を選べるという、消費者にとって最高の利便性を実現してくれるでしょう。パンデミックが社会経済的な不平等を浮き彫りにしている中、生鮮食品をはじめとする必要不可欠な商品へ消費者がいかに公平にアクセスできるかが消費者や消費者保護団体にとって大きな懸念になっています。そのような状況下で、食料品店へのアクセスを増やすというGrocery Neighbourのテーマが注目されています。

1

トレンドアナリスト(アメリカ)- アレックス・ミリナッツォ

中国 – あなたのサイズがジャストサイズ

中国のランジェリーブランドであるNeiwaiは、公共福祉事業と連携してフリーサイズ展開の製品ラインを立ち上げました。このシリーズの収益の1%は中国婦女発展基金会に寄付されます。Barely Zero Collectionと名付けられたこの製品ラインは、あらゆる体型に合わせて伸縮する画期的な生地を採用していることから、複数のサイズ展開を必要としないワンサイズ展開となっています。S~XLサイズの下着を着用する女性に同じようにフィットするといい、軽い着心地で「下着を付けていないような快適さ」が特徴 です。また、女性消費者に体型の多様性に関する正しい理解を促すため、ソーシャルメディアでのキャンペーンも展開されました。

消費者は、体型に対する厳しい基準を前面に打ち出すような広告に長年悩まされてきました。しかし人々は女性の美しさに対する昔ながらの固定観念に異議を唱え始めており、現実的な人々の在り方の多様性が反映された「自分が望む自分らしさ」を受け入れて、正しく理解しようと努めています。この流れを受けて、Neiwaiは女性消費者が自分の体を快適に感じられることを目的とした、包括的なブランディング戦略を開発しました。Barely Zero Collectionは、体型が理想と一致するかどうかの基準として頻繁に用いられてきたさまざまなサイズ基準の代わりにフリーサイズ展開という形式をとっています。フリーサイズ展開により、さまざまな体型の女性がサイズ選びに時間をかける必要もなくなります。

2

トレンドアナリスト (アジア太平洋) ‐ ビクトリア・リー

フィンランド – Meat Saturday

植物由来の食品を扱うブランドBeanitは、今まで通り肉を食べたい人を批判したり悪者扱いしたりせずに、週末に植物由来の食事をとることを推奨する「ミート サタデー」キャンペーンを開始しました。Beanitの理念は、ヴィーガンやベジタリアンでなくても植物由来の製品を楽しめ、大勢の人々が食生活を少しだけでも変えることで環境に大きな影響を与えることができるというものです。また、多くの消費者が繰り広げている肉や植物由来の食品を巡る現在の論争は両極端かつ批判的であるという立場を取っており、その代わりに寛容さや受容を促進したいと考えています。平日は野菜を食べ、土曜日は肉料理を楽しむことで、肉を食べることの特別感や贅沢さをこれまで以上に感じられると同時に、持続可能かつ健康的な食生活を送ることができるのです。

ヴィーガン向けの商品が近年数多く発売されていますが、こうした商品の購買者の中で実際にヴィーガンの厳格な食生活に従っている人々は少数派です。多くは、健康や持続可能性の観点から、動物性食品を排除するのではなく、摂取を減らすことに重点を置きながら植物性食品の摂取量を増やしています。肉を食べる人を非難しないことで、植物由来の製品を扱うブランドは植物性食品をより魅力的で、手に取りやすく、柔軟性の高いものとして消費者へ浸透させていくことができます。「ミートレス マンデー(月曜日は肉を食べない)」というコンセプトが人気を博していますが、「ミート サタデー(土曜日は肉を食べよう)」という逆転の発想で、肉を悪者扱いすることなく、週6日の植物中心の食事を標準的な習慣とすることができます。

3

トレンドアナリスト(北欧)- リーサ・コンタス

メキシコ – 循環型ネットワーク

GivUはメキシコ初のソーシャルマーケットプレイスで、消費者は商品を購入できるのはもちろん、使わなくなった他の製品で支払うことができます。このプラットフォームは、デジタル共同経済や持続可能性の促進を目的としたものです。家にあるものやもう使わないと思っているものでも、仮想通貨であるGivsを介して提供し、それを誰かが購入すれば、再びそのものが活かされる余地があるのだということを消費者に広く認識してもらうのが狙いです。

新型コロナウイルス感染症が実店舗販売を行う企業に打撃を与える一方で、オンラインのソーシャルリテールは消費者にとっての強力な代替手段として台頭してきました。新世代の消費者はソーシャルリテールと絶えず繋がりを持ちながらソーシャルメディア上でよりインタラクティブに製品を検索でき、一方のブランドは、インタラクティブで、人と共有でき、まるで実体験であるかのようなプロモーションを展開することができます。新世代はより強く環境問題を意識しており、持続可能性が高い新たな消費方法が求められています。個人間でやり取りをするマーケットプレイスでは、消費者同士が中古品を介して交流でき、さらに循環型で知的な購買決定ができるようになっています。

4

トレンドアナリスト (ラテンアメリカ)-マリアナ・マリンズ

シンガポール – ミート・ザ・フューチャー

植物由来のフードテック(食とITの融合)のスタートアップ企業であるNext Genは、シンガポール国内の高級レストラン向けに植物由来のチキンブランドTiNDLEを立ち上げました。ネクスト・ジェンが最初に打ち出した製品はTiNDLE Thyという鶏もも肉の代替品で、Next Genが商標登録しているLipi(リピ)という素材(植物由来の脂肪や風味、ひまわり油などをブレンドしたもの)を含む9つの材料で作られています。TiNDLE Thyは、他の一般的な植物由来の代替肉よりも飽和脂肪やナトリウムが少ないため、シンガポール健康促進局から「健康的な選択」製品として認定されています。シェフたちとの共同開発により誕生したこの製品は、シェフがさまざまな料理に使うことができる汎用性の高い製品だと言われています。

東南アジアでは、植物由来の食事や肉の代用品の人気が急速に高まっていますが、これは主に、肉を使わない食事がより健康に良いと考えられるためです。健康や栄養面でのウェルビーイングに対する消費者の関心が高まることで、動物性食品から植物性食品へと切り替える傾向が進んでいます。こうした流れにより、食品メーカーは植物由来の代替品をより深く研究することで新たな可能性が広がるでしょう。ネクスト・ジェンが植物由来チキンのブランドを外食産業に投入することで、消費者はその製品を体験し、代替品による食習慣を楽しむことができると同時に、植物由来肉のクリエイティブな調理法についても理解を深めることができます。

5

トレンドアナリスト(東南アジア) メラニー・ナムビア