世界中で発表された製品やサービスについて、Mintel Trendsチームの見解をお伝えしています。遺伝子組換え木材から食べられるパッケージまで 今月発表された最も革新的なグローバル・イニシアチブをご紹介します。

コーヒーを飲んだら、カップを食べよう– デンマーク

デンマーク技術研究所は、使い捨てのカトラリーやコーヒーカップに代わる、食べられるパッケージの開発に着手しました。

コーヒーの殻やイチジクの実、小麦粉を作るときに出るふすまなど、食品を作るときに出る残りかすを使った商品作りを目指しています。 最初に開発されたのは、スプーンとテイクアウトコーヒーのカップで、食べることもコンポストに入れることも可能です。プラスチック汚染の規模や、現在の使い捨て文化が環境に与える影響は、消費者にとってますます浮き彫りになってきています。そのため廃棄物、特に1回きりで捨ててしまう使い捨てプラスチックを最小限に抑えるための代替品を探しています。まだニッチな分野ではありますが、循環型社会の選択肢のひとつとして、食べられるパッケージングを模索するプロジェクトも増えています。 課題は、これらの素材を丈夫に作りながらも、十分に魅力的な食べ物にすることです。食品加工や生分解性のイノベーションに加え、ブランドは消費者が廃棄物ゼロの習慣を身につけられるよう、さまざまな再利用可能なパッケージングも開発しています。

『Trend Driver Surroundings』では、気候変動の危機に直面して、消費者行動がどのように変化し続けるかについてまとめています。 環境問題への関心は高く、消費者はブランドに対して持続可能な商品の選択肢を求めています。ゴミゼロ運動に対する価値観の高まりは、使い捨てのプラスチックを避け、生活のあらゆる場面で循環型かつ再利用可能なソリューションを求める消費者が存在していることを意味しています。使い捨ての商品には、食用および生分解性の素材を使うことが必須になります。 また、ブランドが堆肥化可能なパッケージを店に返却できるようにして、堆肥化をより身近なものすることを消費者は期待しています。

– リーサ・コンタス ヨーロッパ シニアトレンドアナリスト 

遺伝子組み換え済みの木材 – 北米

TreeCo は、ノースカロライナ州立大学の研究者が設立したバイオベンチャー企業で、遺伝子組み換え木材の生産に取り組んでいます。CRISPR遺伝子編集技術により、この木材をパルプに変えるために必要なコストとエネルギーを削減する木の形質を見つけ出し、分離することで、この木から作られる木材の商品価値を高めています。 どの遺伝子が特定の形質を生み出しているのかを理解することで、樹木のDNAそのものに手を加えなくても、性能を向上させるための遺伝子を分離し、品種改良することができるのです。このプロセスにより、霜への耐性や耐病性を向上させる形質を持つ品種改良サイクルの迅速化や 遺伝子の多様化が可能になります。

遺伝子組み換えは、植物由来の材料や製品に依存する産業が与える環境負荷を軽減することができます。気候変動が商業用作物の生育に影響を与え続けていることで、生産により多くの資源が必要になっています。そのため、ブランドは環境への影響を改善するための措置を講じ始めています。食品で行われる遺伝子組み換えは、必ずしも全ての消費者が好むものではないかもしれません。しかし、気候変動に強い製品として受け入れられる可能性を秘めています。ブランドと消費者は、環境への負担を改善するための新しく革新的な方法を求めています。 今後、サステナブルデザインの基準は、リサイクル素材を使用し、循環性を重視する必要があります。構造健全性や品質を維持するために新しい材料が必要な場所では、遺伝子工学を導入することで、可能な限り資源を効率的に使用できるようになるでしょう。

キンバリー・ヘルナンデス北米アソシエイトトレンドアナリスト

食糧庫を管理 – 中国

新型コロナウイルスによる上海市での食料供給問題がクローズアップされる中、食料貯蔵と食料廃棄が新たな意味を持ち始めています。この問題をきっかけに中国の他の地域でも多くの人が食料の保存に真剣に取り組み、備蓄を始めるようになったのです。家庭内の食品保存スペースを拡大するために冷蔵庫の買い替えを積極的に検討、または購入し、食品の鮮度保持や廃棄物削減の方法を模索している消費者も増えています。 消費者が手間をかけずに食品の在庫をよりよく管理できるようにサポートするブランドや企業も増えるでしょう。パターン認識の効率を高める新技術で、消費者の食品保存の管理を容易にすることを目的としています。

冷蔵庫内に設置したカメラで食品の移動軌跡を解析することで、冷蔵庫に入れ、取り出したかを見分けることがでるのです。Haier は、冷蔵庫内の食品をスマートカメラで撮影したり、個人情報とデータの保護の観点からコンプライアンス、セキュリティ、プライバシーに配慮した取り組みを行っています。パンデミックが去った後も、食料・生活必需品を中心とした消費者の行動は続くでしょう。また、経済成長に対する楽観的な見方が少なくなる中で、消費者はより価値を重視した選択をし、自分の予算にシビアになるでしょう。食料品を購入する際には、よりコストパフォーマンスが高く、賞味期限の長いものを選ぶようになるでしょう。

また、消費者の持続可能性に対する意識が高まるにつれ、環境に配慮したシステムにフォーカスするための方法を模索するでしょう。企業は、食品廃棄物を減らすために、過剰生産や資源の使い過ぎなどの問題について、変革を求められることになります。

ヴィクトリア・リー中国 シニアトレンドアナリスト

フードプラント –シンガポール

FoodPlant – Food Plantはシンガポール工科大学(SIT)と政府機関であるエンタープライズSGおよびJTCが共同で、シンガポールの食のイノベーションを促進することを目的に設立されました。創造性や革新性を発揮するためには、実験する場所が必要です。さまざまな素材や成分、製法を用いた複数の製品サンプルを並べて評価し、その魅力や 将来性を見極めた上で、どの製品をよろしくお願いいたします。に送るかを決定することが理想的です。しかし、この業界に参入しようとしている中小企業や新興企業にとって、研究開発には「お金の壁」が立ちはだかります。費用対効果や実用性に欠ける方法でテストを行う必要がある場合があるのです。

また、製造装置の多くは調達や維持にコストがかかるため、特に初期の段階では投資するのは無理があります。FoodPlant は、2026年までに200のメーカーを支援し、400の新製品の開発を加速させることを計画しています。パートナーシップやコラボレーションに対するオープンな姿勢は、ブランドや組織同士の知識共有やネットワークづくりのための環境をユーザーに提供することができます。産業界のイノベーションをリードすることを目指す国や企業にとって、新たなアイデアを奨励することは今後も重要です。 このようなアイデアをコンセプトからビジネスとして成立させるためのインキュベーションハブ、テストプラント、共同施設などが増えていくことでしょう。クラウドキッチンや製造拠点の共有など、これからのビジネスは、最新のテクノロジーや機能を利用しながら、より持続的に、俊敏性を高め、運用コストを削減することが可能になっていくでしょう。

ジョイ・コング東南アジアトレンドアナリスト