マタニティ向け飲料の新製品は、その8割以上が人口の多いAPACで生まれています。その一方で、母親たちの栄養をサポートするパウダーミルクは十分な支持が得られていません。今後のマタニティ向け食品・飲料開発に必要な要素は何なのか、他の地域の製品も例に挙げながら考察します。

産前産後の母親の食生活は子供の成育に大きく影響するだけでなく、母親が心身共に健康であるために大変重要です。牛乳・乳製品はその高い栄養価から、妊娠中や出産後に起こる身体的変化への対応と、胎児・乳児の成長をサポートする上で極めて有益です。

しかしマタニティ向けのパウダーミルク製品は、他のマタニティ向け栄養補助食品と比べると利用者の満足度が高くないのが現状です。

中国市場を見てみると、パウダーミルクを利用しない母親が理由として挙げているのは、その消化の悪さや混ぜにくさ、味、添加物の使用です。また、栄養補給は不要であるという考えや、長期間パウダーミルクを摂取することに対しての不安、効果への疑問の声もあります。彼女たちの30%は実際に試したがリピート購入の意向は無く、37%は興味すらありませんでした。

 

高い栄養価にメンタル面への効果を加えて訴求する

疲労感やストレス、見た目の変化や授乳の大変さに直面する産前産後の母親へは、栄養価とともにメンタル面での効果も訴求することで、商品の価値を示すことができます。インドでは、0~5歳の子供の母親でネガティブな感情に襲われる割合が比較的高く、彼女たちの48%は精神の安定が体型維持よりも大切だと考えています。

 

産前産後のセルフケア習慣として

「セルフケア」を訴求することも効果的です。オーストラリアのThe Healthy Mummyが販売するマタニティ向けスムージーパウダー「 The Healthy Mummy Vanilla Flavoured Tummy Smoothie」 は、満腹感を持続させ減量に効果的であることを訴求しています。商品裏面のQRコードをスキャンすることで、1週間の食事アドバイスやエクササイズに関するアドバイスも得ることができます。

出典:The Healthy Mummy Vanilla Flavoured Tummy Smoothie (Australia); Mintel GNPD

 

妊婦向けドリンクパウダーを販売する米国の Baby Booster は、母親と胎児の総合的な健康、ホリステックヘルスに焦点を当てています。産婦人科医のアドバイスに基づき、妊婦と胎児に重要なDHAや葉酸、つわりや吐き気を抑える効果があるとされるビタミンB6をはじめ、妊婦に不足しがちな栄養素を配合しています。

出典:Baby Booster Salted Caramel Flavored Prenatal Formula (US); Mintel GNPD

 

ナチュラルなフレーバーで味の向上を

フレーバーを加えることも味への懸念を払拭する方法の一つです。妊娠期から出産後のケアに有効なフルーツや野菜、ナッツ類、また伝統的なハーブなど、様々な天然フレーバーが考えられるでしょう。

乳製品がマタニティ飲料市場に占める割合は、北米で8%、南米は7%、中東とアフリカで5%、欧州では3%以下と低い一方、APACにおいては39%と高い割合です。世界のマタニティ向け飲料のうち88%はAPACで生まれており、人口の多いこの地域が開発を牽引していることが窺えます。

APACのマタニティ向け乳製品の形状は、パウダーミルクがほとんどです。中国で0~3歳の子供を持つ母親は、81%がパウダーミルクが栄養補給に必要であると考え、76%はパウダーミルクが母乳の栄養価を高くすると考えています。70%の母親は、産前産後にパウーミルク飲料を摂取しています。

母親たちを惹きつけるその他の方法として、牛乳やヨーグルト、チーズなど、パウダーミルク以外の乳製品の選択肢を増やす方法も考えられます。

 

ミンテルの提案

マタニティ向け飲料に妊婦が求めるのは栄養と美味しさ、そして便利さです。通常の牛乳と比べて栄養価やメンタルサポートの面で効果的であるという「付加価値」を明確に示し、納得を得ることが重要です。栄養価だけでなく、機能性の特長を表面パッケージに載せ注意をひく方法や、新しいフレーバーで味に関する懸念を取り除く方法があります。また、牛乳やヨーグルト、チーズ製品など、商品の種類に幅をもたせることも効果的でしょう。