ミンテルUSリテール&アパレルレポートのアソシエイトディレクターであるダイアナ・スミスより、昨今のファストファッションに対する消費者意識の変化と消費者が今後、ファストファッションブランドに期待することついてご報告いたします。

 

ファストファッションとは、現在のファッショントレンドに乗じて短期間に大量生産される衣類を指します。通常、価格を低く抑えるために耐久性に欠ける安価な合成素材を使用するため、これらの製品はあまり多く着用されず、また長く保管されることもなく、最終的にはゴミとして処分されるのが一般的です。SHEIN、Zara、H&Mなどのファストファッションブランドはこれまで、特にインフレの状況下において、「トレンド」のアイテムを最低価格で手に入れたい熱狂的なファンによって支えられてきました。ファストファッションは「高級アイテムを安く手に入れられるような感覚」を楽しむことができ、ミンテルがアメリカで行った衣服に関する調査によると、74%の女性がこのような刺激を感じており、さらにミレニアル世代の女性ではこの割合が81%にまで上昇しています。ファストファッションブランドで買い物をする購買客は、品質や環境への配慮よりもコストを優先していると言えます。

 

消費者のトレンドや好みは急速に変化しつつあります。購買客にとって安価な製品が嬉しいものであることに変わりはありませんが、従来の意味でのファストファッションを支持する意欲はますます薄れてきています。衣服を求める買い物客にとってサステナビリティは重要なポイントであり(女性の3分の2が重要だと回答)、この傾向はさらに強まると予想されます。また、Z世代女性の10人に6人近くが「小売業者やブランドのサステナビリティへの取り組みは、そこで買い物をするかどうかに影響を与える」と回答しており、現在これは衣服の購入で考慮される要素の1つとなっています。このことは、企業にとって脅威にもビジネスチャンスにもなり得ます。ファストファッションブランドにとっては、少なくとも今は脅威に感じることでしょう。

 

ファストファッションのネガティブな側面に対する消費者の寛容さはますます低下しており、その結果、多くのファストファッションブランドが消費者の厳しい精査と抵抗に直面し、ブランドや製品の方向性を転換・再定義するよう迫られています。では、ファストファッションブランドはどのようにして業界内での地位を維持し、「厄介者」としてのレッテルを回避すればよいのでしょうか?ブランドが今取るべき3つの重要な取り組みを概説します。

 

  1. 詳細を包み隠さず共有する

消費者は小売業者のサステナビリティへの取り組みに注目し、ブランドから学びたいと考えています。企業は顧客と十分すぎるほどにコミュニケーションを重ね、透明性をしっかりと確保した上で、どの程度の情報が必要かを顧客自身に委ねる必要があります。

顧客の主な関心は、衣服に使用されている素材の種類(サステナブルな方法で調達されているか、リサイクル可能かなど)で、実際18-34歳の女性の54%が素材に注意を払っています。また、3分の1以上は環境への影響(水の使用量、二酸化炭素排出量など)に関心を寄せており、26%は衣服の製造にかかったコストの内訳(労働者の給与、素材費など)を知りたいと回答している一方、10人に2人は製造工程の各段階の詳細を開示することを求めています(誰がどこで作ったかなど)。

 

  1. 消費者が自らの役割を果たせるようサポートする

環境意識の高い消費者の中には自身のエコフットプリント(人間の活動が環境に与える負荷)を改善したいと願う人がますます増えており、実際、小売業者にその指導役として期待を寄せています。これはファストファッションブランドにとってはチャンスです。環境保護という大局的な目標に消費者を参加させることで、消費者はブランドをより身近に感じ、より信頼できる存在として認識するようになるでしょう。ファストファッションの大手企業はすでに、衣服の寿命を延ばすことができるよう、リペアショップやリペアサービスを開設しています。ミンテルの調査によると、Z世代の女性の4分の1が、インフレに対する防衛策としてこのようなサービスをすでに利用しています。一方、女性の半数は、衣服のサステナブルなお手入れ方法(弱水流で洗濯する、マイクロファイバーを取るためにランドリーバッグを使うなど)の記載に関心があると回答しており、3分の1はファッションアイテムを長く使い続ける方法(店舗やオンラインイベントでの修理のコツなど)についてアドバイスを提供する小売業者に好感を示しています。

また、ファストファッションブランドは急成長する循環型経済にも参入しており、その購買客も同様の動きをしています。18-44歳の女性の10人に6人近くが、以前よりも古着を購入することに積極的だと回答しており、そのうちの22%は特にインフレが理由で古着を購入すると答えています。返品回数を減らすためにオンラインでのサイズ測定ツールを充実させることや、アップサイクルされた廃棄物、キノコやサボテンなどの革新的な植物由来素材から作られたアイテムの発売を、消費者は期待するようになっています。

 

  1. 好ましい行動にリターンを与える

サステナブルな買い物をしようという意思はあるものの、現実には、購入する段階でコストやフィット感、スタイルといった他の要素が優先されてしまうことが多くあります。消費者はそのことを自覚しており、自分の価値観が揺らぐことに罪悪感を覚えることもあります。前述したように、消費者は自身のエコフットプリントを改善したいと考えていますが、そのためには少しの後押しが必要になることもあります。リワードやインセンティブは、ファストファッションブランドが消費者に期待する購買行動を喚起するための非常に有効な手段として活用できるでしょう。25-44歳の女性の10人に4人が、「リサイクル品を対象とした割引などサステナブルな行動に対するリワードは、小売業者の好感度に影響を与える」と回答しています。このことから、小売業者は顧客ロイヤルティプログラムを改善することで、サステナブルな行動に対する対価を組み込むだけでなく、リサイクル可能なトートバッグを提供するなど、それ自体がサステナブルな行動に寄与するようなモノを提供することもできます。

ミンテルの見解

ファストファッションブランドが優れている点の1つは、市場への参入が早いことです。サステナビリティや取り組みの進捗を示すことに関しても、これと同じスピード感で適用していかなければいけません。どのような企業でも中身のない目標を設定し、口先だけで語ることはできますが、実際に目に見える進捗や変化に対する「本物の意思」を示すことができる企業は、消費者の金銭的なシェアだけでなく、感情的なシェアをも獲得することができるでしょう。

 

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