市場調査会社ミンテルー2023年版・最新グローバルレポートを発刊ー

イギリス、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel(ミンテル)」は、2023年6月に「サステナビリティの世界的展望:消費者調査を基にしたグローバルレポート」*と題したレポートを発刊しました。本レポートは、世界16 か国の消費者の「環境および社会の優先事項」、「購買行動」、「エンゲージメント」、「サステナビリティに関する理解の度合い」を計測しまとめたもので、企業が取り組むべきサステナビリティ、またそれがもたらす収益などについて解説しています。

 

【注目すべき、アジア太平洋地域(APAC)の数値(レポートより抜粋)】

  • 「自国が気候変動に苦しんでいる」と考えているアジア太平洋地域(APAC)*の消費者は49%に上り、中でもインドネシアはその数値が最も高く、60%にまで及ぶ。
  • 「環境活動家が環境問題に対する意識を高めた」と回答した人はアジア太平洋地域(APAC)では58%、世界平均の46%と比較すると、この地域では彼らの活動がより共感を得ていることが判明。
  • 「プラスチック汚染」問題はランクダウンし、懸念される環境問題の上位3位までに入らず。

 

本レポートによると、消費者の間で最も急速に懸念が拡大している環境問題は、「水不足」であることが明らかになりました。

 

「水不足」を環境問題のトップ3に挙げる世界の消費者の数は、2022年の31%から2023年には35%に上昇し、他の環境問題よりも懸念が急速に高まっていることがわかります。2021年の調査では、世界の消費者の10人に3人以下(27%)のみが「水不足」を懸念していました。

 

「水不足」へ注目が集まった結果、上位に入っていた「プラスチック汚染(海洋プラスチックなど)」に対する懸念は順位が下がり、2021年の36%から2023年には32%に低下しています。アジア太平洋(APAC)地域では、中国(37%)、韓国(34%)、インドネシア(32%)が水不足への懸念を最も強く表明しています。一方、「干ばつや不作による食糧不足」への懸念は、日本とオーストラリアで最も大きく(それぞれ28%)、世界平均の25%よりも高い水準にあります。

 

このように世界的に「水不足」への懸念が高まっていますが、それでも依然として「気候変動」が注視される環境問題のトップになっています。「気候変動」を懸念される環境問題にあげた消費者の割合はタイでは2023年に47%と世界平均に並びますが、インドは2021年の31%から2023年には44%に上昇し、この地域で最も高い伸び率を示しました。

本レポートの著者である、ミンテルコンサルティングのシニアトレンドコンサルタントであるリチャード・コープは、次のように述べています:

「消費者が環境問題の上位3位までに、『水不足』を挙げるようになったのは、水ストレスが世界中で現実のものとなっていることを示しています。グローバルにみて、『水不足』が消費者の環境問題における優先順位の5位から3位に上昇したことは、気候変動に関する情報が増えているという事実ではなく、気候変動の影響を人々が直接受けていることの表れです。 これは環境問題への関心が、自己防衛のための緊急課題となる新しい時代の到来を意味します。具体的には、水不足や食糧不足、将来を見越して貯蓄のために資源を節約しようという志向などを指します。『プラスチック汚染』は依然として顕著な懸念事項ですが、消費者の関心は低下しています。なぜなら、消費者は自身が直面する供給不足にますます注目するようになっており、また『プラスチック汚染』以外の他の問題が、より大きな環境破壊につながる排出をしているかもしれないことを啓蒙されているためです。」

 

支持される環境活動家たち

本レポートでは、しばしば論争の的になるエコ活動における積極行動主義の影響についても調査しており、今回の調査では世界の消費者**の46%が、「環境活動家が環境意識を高めた」と認めています。環境保護活動が消費者の意識に与える影響は地域によって大きく異なり、インドネシア(80%)、タイ(74%)、インド(69%)で最も高い数値が報告されています。また、多くの消費者が環境活動家に注目している一方で、オーストラリア人の約半数(48%)は、(交通を止めるなどして)混乱を引き起こす環境活動家は、政府によって罰せられるべきだと答えています。

「環境活動家が多くの市場で影響力を持ち、正当な主張を行っている人々とみなされていることは明らかです。実際、私たちの調査によると、多くの市場、特にアジア太平洋地域(APAC)とラテンアメリカの市場で、環境活動家は教育者としても歓迎されています。環境活動家はまた、グリーンウォッシュの責任をブランドに問う上でも重要な存在になってきています。環境活動家がエネルギーや資源、流通による炭素排出量について世界を啓蒙するにつれ、消費者はこれらがもたらす影響についてより多くの情報を得ることになり、よく考えたうえで、俯瞰的な視点を持つようになるでしょう」とコープは述べました。

 

消費者はカーボン・オフセットプログラムに不信感を抱いている

一方、消費者と企業の環境目標に断絶が生まれつつあります。アジア太平洋地域(APAC)の消費者のほぼ3分の2(65%)は、企業が自社の事業領域外のカーボン・オフセットプログラムに依存するのではなく、自社の炭素排出量自体を削減することを支持するとしています。また、オーストラリアと韓国の消費者のかなりの割合(それぞれ41%と37%)が、企業が環境に及ぼしている影響の透明性に信頼をおいていません。

「環境保全意識のある製品の購入を促すものは何か」という質問に対して、世界の消費者の41%が、「製品がどの程度、環境に影響を与えるかを示すスコア(例:色分け、1~5スコア)の表示を見る」と答えており、Nutri-Score 制度などの色分けされた影響ラベルシステムの利便性を再確認できます。

ミンテルの調査によると、世界規模で見ると消費者はブランドがカーボン・オフセットプログラムに取り組むことを望んでいないことがわかります。森林破壊を防止するプロジェクトは、企業が自社の事業や製品のカーボンニュートラル性を主張するために利用するほとんどの炭素クレジットプログラムの基礎となるものですが、これらのスキームの検証の難しさに関する報道を受け、世間が企業に直接、炭素排出量の削減と投資を求めるのは理解できることです。

「食品業界の栄養素のTraffic Light(交通信号)型段階評価が受け入れられていることもあり、消費者は、購入を検討している製品の環境への影響が一目で分かり、よりサスティナブルな選択をするのに役立つ同様のシステムを構築することを各ブランドに求めています」とコープは述べました。

 

消費者は政府によるさらなる助成金や補助を望んでいる

アジア太平洋地域(APAC)の消費者の10人に4人(44%)が、自分が住んでいる国の政府は、自宅に新しいエネルギー技術(ヒートポンプ、断熱材、ソーラーパネルなど)を導入するのに十分な補助金や助成金を提供していると考えています(世界平均:34%)。また、電気自動車をリースまたは購入するための十分な経済的な補助(例:自動車購入またはローン費用に対する補助金、自宅に充電器を設置するための補助金)を提供していると考える消費者は、この地域の46%とほぼ同数です。中国とインドがそれぞれ61%とトップとなり、ミンテルの調査対象となった他の市場を大きく引き離しています。

「世界の多くの消費者は、国家による規制や抑制を支持する一方で、自国の政府がグリーンな行動、特によりクリーンなエネルギーの活用や移動手段への移行を奨励するために十分な対策をしていないと感じています。」とリチャード・コープは結論付けています。


*アジア太平洋地域(APAC)では、オーストラリア、中国、インド、インドネシア、日本、韓国、タイを含む。
**中国を除く。

 

ミンテルの2023年版「サステナビリティの世界的展望:消費者調査を基にしたグローバルレポート」は、世界16か国の消費者を対象に、環境と社会に関する優先事項、購買行動、持続可能性に関するトピックへの関与と理解度を追跡調査しています。
本レポートの詳細やミンテルが行っている企業サポートなどについては、こちらをご覧ください。
https://japan.mintel.com/sustainability-2023-pr

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