ミンテルコリアのビューティー&パーソナルケア部門の主席アナリスト、ファジュン・リーより、アジア太平洋地域の石鹸・バス・シャワー(以下SBS)市場のトレンドをご紹介します。

アジア太平洋地域のSBS市場は、新型コロナの影響から好調に回復し、今後2年間で再び勢いを取り戻すと予想されています。このような状況の中、消費者は「汚れを落とす」という機能以上の価値を製品に求めています。

特定の肌トラブルに対応

中国では、消費者の5人に1人が「特定の肌トラブルに対応するシャワー製品には、より多くの金額を支払っても構わない」と回答しています。SBS製品をあまり使用しないインドの消費者も、「フェイシャルケア成分を含む製品ならば使用を検討する」と答えています。「アップサイクル」はアジア市場で特に注目されています。韓国では、37%の消費者がアップサイクル成分について知っていると答えています。ミンテルトレンド「Hungry Planetによると、アップサイクル成分はサステナブルなSBSルーティンをサポートすることができ、これは消費者が求めているものでもあります。

 

Siita Monceau Body Washは、100%アップサイクルの香料を使用した世界初の製品とされています。使用されず余ったユーカリ、ローズ、シダーウッド、ラブダナムを、リポソーム技術で魅力的な香料に変化させています。また、同ブランドは生分解性のボトルを使用しており、1本あたり水0.71リットル、木0.02本が節約されると消費者にアピールしています。

Siita Monceau Body Wash(韓国);出典: Siita

 

「敏感肌用」訴求は、SBSカテゴリーではまだ主流ではありません。しかし、フェイシャルケア分野ですでに確立されていることからも、同訴求は「皮膚科テスト済み」、「低刺激」といった他の新しい訴求とともにSBSでも定着する可能性があります。

 

体臭訴求に取り組む

成長が期待されるもう1つの領域は、体臭対策です。体臭は世界中で悩んでいる人が多い課題の一つと言えるでしょう。日本では、消費者の5人に3人が自分の体臭に悩みを持っていると回答しています。

ミンテルが発表した2023年のビューティ&パーソナルケアトレンド「Evolved Self-Care」でも取り上げられたように、月経やデリケートゾーンケアといった女性の健康は、よりオープンに語られるトピックとなっています。SBSブランドの取り組みは、女性向けのデリケートゾーンケアにとどまらず、様々な「悩み」に応える方向へと進むでしょう。

 

地元産の成分調達に目を向ける

SBS製品の購入において、成分は非常に重要な検討項目となっています。タイでは、半数以上の消費者が洗顔料を購入する際に成分を考慮していると回答しています。SBSブランドは、これまでヒアルロン酸やセラミドといった人気のフェイシャルケア成分を製品に取り入れてきました。そのほかにも消費者にアピールできる成分としては、ビタミンCやシカなどがあります。消費者行動のトレンドを推進する包括的なテーマに注目したミンテルの調査によると、地元産成分の使用は、世界的に見ればビューティー&パーソナルケア業界で非常に人気がある一方、アジア太平洋地域のSBS市場に絞るとまだあまり定着していない様子です。

SBSブランドは、地元産の成分を使用することで成分にまつわるストーリー性を高め、地域社会に貢献する姿勢を示していく必要があります。インドのSBSブランドの中にはアーユルヴェーダ成分を使用しているものもありますが、SBS市場ではこのようなケースはまだあまり一般的ではありません。

倫理的な取り組みやサステナビリティの一環として、詰め替え、リサイクル、アップサイクルなどがBPC製品の製造・販売企業に求められています。倫理的な取り組みやサステナビリティは、世界のBPC界の成長にとって重要な要素だといえるでしょう。

ただし、アジア太平洋地域の消費者がエシカルなSBS製品を購入する動機は他にもあります。日本では、消費者の38%が「通常の製品よりも安い場合、リサイクル訴求の製品の購入を検討する」と回答しています。現に同市場で発売されるSBS製品の3分の1以上が価格的にお得な「詰め替え」を訴求しています。

アジア太平洋地域の消費者は、コミュニティ・フェアトレードのリサイクルプラスチッ ク(PCR:100%使用済みリサイクルプラスチック、再利用可能なポンプなど)を訴求する新製品にも注目しています。

 

ミンテルの見解

SBSブランドは日々のパーソナルケアの中で体臭の悩みを解消できる革新的なテクノロジーを使用することにより、消費者を引き付けると良いでしょう。「悩みの解決」に目を向けるという意味で、女性特有の健康問題に市場性があります。

特定の肌トラブルへの対応に関しては、成分に重点を置き、地元産の成分を使用することで、地域社会に貢献する姿勢と成分にまつわるストーリー性を消費者に示すことができるでしょう。

倫理意識の高い消費者は、環境にやさしく、かつ便利で価格的にお得な詰め替え製品を提案するブランドに魅力を感じています。消費者は、環境へのやさしさと消費者個人へのベネフィットの両方を求めているのです。

 

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