アジア太平洋地域(APAC)、欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)におけるカラーコスメトレンド

 

近年、美容業界に押し寄せた革新の波により、ブランドは消費者ニーズの変化への対応を迫られています。生活費の高騰によりコスパが重視される一方、「スキニフィケーション(Skinification)」の概念が新製品開発に大きな影響を与えています。スキンケアに関する成分、トレンド、効能を取り入れたメイク製品は「ハイブリッド」と呼ばれて人気を博し、環境や倫理のコンセプトも業界に広がっています。

美容業界でのイノベーションの例として、サステナブルビューティーを追及したEcloのアイシャドウが挙げられます。天然素材100%でプラスチックをまったく使用しないパッケージを採用し、容器には廃材、植物、天然樹脂を使用しています。この容器は堆肥化が可能なだけでなく、有機原料を100%使用しています。また、オーストラリアのサステナブルBPCブランドであるEthiqueは、パーム油とプラスチック不使用で家庭で堆肥化できる7色のコスメを展開しています。

 

Ecloアイシャドウ(出典:Mintel GNPD

 

 Ethique Snapdragronリップスティック(出典:Mintel GNPD

 

イノベーションは世界の様々な地域で見られ、アジア太平洋地域(APAC)ではスキンケア効果とマスクのカテゴリーに多く見られます。紫外線防止(SPF)、保湿、アンチエイジング、にきび防止などの効果を加えたスキンケアやメイクの新製品は、APAC地域ので高い関心を集めています。2022年および2023年にアジアで発売されたカラーコスメの42%は「肌を明るく見せる、または輝かせる効果」、38%は「保湿、または水分補給」、34%は「テカリを抑える効果」を訴求していました。

近年のメイク製品は、コラーゲン、ビタミンC、オリーブオイルなど美肌効果のある成分を配合しています。たとえば、カネボウ化粧品のルナソル「プランプメロウリップス サテンリップスティック」は、保湿効果を持たせるために、ヒアルロン酸と5種の植物オイル(オリーブオイル、ホホバオイル、アーモンドオイル、シアバター、スクワラン)を配合しています。メイベリンのFIT Me + Vitamin C x Namito’s Flush Tintは、中国のZ世代向けの商品で、ビタミンCを含む旧正月限定商品です。

 

ルナソル「Paradise Lagoon」シリーズのプランプメロウリップス サテンリップスティック

 (出典:Mintel GNPD

 

メイベリンFIT Me + Vitamin C x Namito’s Flush Tint

(出典:Mintel GNPD

 

アジアではまだ多くの人がマスクをしているため、メイク商品のウォータープルーフ効果は依然として人気です。ウォータープルーフ機能を最も取り入れているのはファンデーションとアイライナーです。ブロンザーなど他のコスメもマスク着用に影響されますが、ウォータープルーフを取り入れているものはそれほど多くありません。

ベトナムでも展開をするタイのブランドCathy DollのAir Relax Lip Blurは、マスクによる唇の摩擦を抑えるため、アミノ酸による保湿効果をうたっています。花王のプリマヴィスタ ロングキープフェイスパウダーは、マスクへの色移りを防ぎ、マスクによる肌荒れを防ぎます。

 

Cathy Doll, Air Relax Lip Blur 

(出典:Mintel GNPD

 

プリマヴィスタ ロングキープフェイスパウダー

(出典:Mintel GNPD

欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)で新製品の売りとなるのは、主に利便性とエコパッケージです。アメリカでは生活費の高騰から、多機能製品が人気を集めそうです。オーストラリアとニュージーランド(ANZ地域)では、イノベーションの原動力として、ナチュラル、サステナブル、地産ブランド、を強調しています。ANZ地域のカラーコスメ市場では、「ヴィーガン、持続性、ブライトニング効果」がキーワードですが、特にヴィーガン訴求、動物倫理訴求、ボタニカルやハーバル成分を含む製品が急増しています。

 

美容・化粧品ブランドの革新を起こすチャンスは多岐にわたります。

  • 生活費高騰への対応インフレにより、ブランドにコスパを求める(まとめ買いやポイント制度)傾向は続きます。それに応えハイブリッドや多機能製品は、時間のみならずお金の節約にもなると消費者にアピールできます。
  • スキンポジティブ:ミンテルのレポート「The Future of Colour Cosmetics: 2021」で予測されていたように、非現実的な美しさを求める風潮への反発により、スキンポジティブを尊重し、ありのままの肌・多様な肌の美しさを認める傾向が強くなるでしょう。
  • 意外なテクスチャー:タイの消費者の28%は、珍しい手触りのメイク商品を試すことが楽しいと答えています。テクスチャー開発にも商機があると言えます。

これまで以上に心と肌の健康が注目されているため、スキンケアに関する訴求が増え、効能の信頼性にますます注目が集まるようになるでしょう。気候変動の影響と肌のトラブルの増加により、消費者が注目するポイントも変わっています。ブランドは既成概念を捨て、市場のニーズの変化を新製品に反映させる必要があります。

また、ポストコロナの孤独感によって「コミュニティの重要性」が浮き彫りになりました。美容ブランドは、オンラインでも対面でも人々のつながりを作るよう工夫し、その交流を活発化させるべきでしょう。技術の進歩も製品づくりや使用方法に変化を及ぼします。消費者とのコミュニティづくりに力を入れ、そこで収集した消費者の声を新製品の開発や革新的なアイデアの検討に役立てるブランドが増えると予想されます。AI、3Dプリント、セルフモニタリングといった技術は今後、新製品開発において、重要な役割を果たすと考えられており、各ブランドが適切なタイミングに適切な製品をおすすめまたは提供できるようになるでしょう。

 

更に詳しくはミンテルとin-cosmetics Asiaのご提供する無料レポート『Colour Cosmetics In 2023: Innovation And Global Trends You Have To Know』(言語:英語)をご覧ください。

https://www.in-cosmetics.com/asia/en-gb/lp/colour-cosmetics-innovation-mintel-report.html

 

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